金融・保険業の平均給与は42.92万円と高水準だが、上昇率は鈍化している。男女間で26万円以上の差があり、非正規雇用の給与も減少傾向にある。今後はDX化や女性登用の促進、専門人材の需要増により、賃金構造が再編される可能性がある。
男女別の給料の推移
最近の給料データ
合計 | 男性計 | 一般労働者 | 女性計 | パートタイム労働者 | |
---|---|---|---|---|---|
最新 | 2025年1月 | 2025年1月 | 2025年1月 | 2025年1月 | 2025年1月 |
最大期 | 2024年12月 | 2024年12月 | 2024年12月 | 2024年12月 | 2023年12月 |
最新値[万円] | 42.92 | 58.17 | 46.16 | 31.54 | 15.38 |
最大値[万円] | 100.6 | 140.9 | 109.7 | 69.76 | 19.88 |
前年同月比[%] | 1.846 | 1.686 | 2.049 | 3.125 | -3.723 |
金融・保険業の給料の推移


詳細なデータとグラフ
日本の全産業の労働者数の特徴
金融・保険業は、日本経済において安定性と専門性を兼ね備えた業種として知られています。高い給与水準や整った福利厚生が特徴とされてきましたが、近年はデジタル化や非対面サービスの拡大、人材の流動化など、構造的な変化が進んでいます。本稿では、最新の統計データに基づき、金融・保険業の給与の実態とその背景、今後の課題と展望を考察します。
給与水準の全体傾向と特徴
-
最新平均給与(全体):42.92万円(前年比 +1.846%)
他産業と比較して依然として高水準を維持しており、給与水準の高さはこの業種の魅力の一つです。しかし前年比の上昇率は2%未満と鈍化傾向であり、近年のデジタル化やリストラによる固定費削減の動きが、給与上昇を抑制していると考えられます。
雇用形態別の給与と変動傾向
一般労働者(正規雇用)
-
平均給与:46.16万円(前年比 +2.049%)
一般労働者の給与は高水準を維持しており、安定したキャリアパスが特徴です。資格やスキルに応じた昇給が見込まれる業界であり、待遇面でも比較的恵まれています。ただし近年は成果主義が強まりつつあり、年功序列のメリットは薄れつつあります。
パートタイム労働者
-
平均給与:15.38万円(前年比 -3.723%)
パートタイム労働者の給与は前年よりマイナス成長となっており、全体の中で唯一減少しています。対面業務の縮小により窓口職や補助業務の需要が減り、非正規雇用者に対するコスト圧縮が進んでいる可能性があります。正規・非正規間での待遇格差がさらに広がる懸念があります。
男女別の給与差と課題
男性労働者
-
平均給与:58.17万円(前年比 +1.686%)
男性の給与は業種平均を大きく上回っており、管理職や営業職など収入の高いポジションに多く就いていることが背景にあります。ただし上昇幅は小さく、構造的な伸び悩みが見られます。
女性労働者
-
平均給与:31.54万円(前年比 +3.125%)
女性の給与は依然として男性より26万円以上の差があり、大きな格差が存在します。近年は総合職や管理職への登用が進みつつあるものの、非正規・一般職として採用されている女性の割合が多く、昇進機会の不均衡が根本的な原因と考えられます。前年比での伸びは男性を上回っており、改善傾向は見られますが、格差是正には時間を要する状況です。
業界構造と現在の課題
DX(デジタル・トランスフォーメーション)の進展
金融・保険業界ではオンラインバンキングやAIによる保険審査など、非対面化・自動化が進んでおり、従来型の事務職や対人業務の職種が縮小傾向にあります。これにより、特に補助的業務に従事していた人々の役割が減少し、雇用構造が再編されています。
賃金上昇の鈍化と成果主義の台頭
安定的な昇給を特徴としていたこの業界も、利益率の低下と人件費抑制により、年功序列型の賃上げから成果主義への移行が進んでいます。これにより、若手や中途入社者にはチャンスが広がる一方、長年勤続してきた従業員にとっては待遇が伸び悩むリスクもあります。
今後の展望と期待される変化
女性管理職登用の強化
政府による「女性活躍推進法」の強化などを受け、金融・保険業界でも女性の登用が加速しています。管理職や専門職へのシフトが進めば、女性の平均給与はさらに改善する可能性があります。
非正規雇用者の待遇見直し
補助的業務の再編が進む中で、パートタイム労働者の役割を再定義する動きもあります。専門的なサポート人材への転換や、待遇改善による定着率の向上が検討されており、将来的には賃金低下傾向が反転する可能性もあります。
新たなスキルニーズへの対応
フィンテックやサイバーセキュリティ、ESG(環境・社会・ガバナンス)対応など、新しい分野へのスキル需要が高まっており、それに応じた人材が高待遇で採用されるケースが増加しています。今後の給与水準は「専門性」によって大きく二極化する可能性があります。
まとめ
金融・保険業は高給与業種の代表であり続けていますが、構造的な変化によって安定した賃上げが困難な局面に差し掛かっています。男女格差や非正規との待遇差といった課題を乗り越えるには、業界全体での制度改革と柔軟な人材戦略が求められています。
コメント