都市別クレジット返済の実態と今後の動向:家計調査から読み解く

借入(勤労世帯)



2020年から2025年3月までの家計調査によると、全国平均のクレジット返済額は9.824万円で、名古屋市や富山市、新潟市などで特に高く、都市間で大きな差があることが判明した。世代や地域ごとの支出傾向、物価高や所得格差の影響が背景にあると考えられ、今後も地方都市での返済額増加が見込まれる一方、一部都市では負担減や節約志向が強まる可能性がある。クレジット依存への懸念と返済能力のバランスが今後の課題となる。

クレジット返済の家計調査結果

クレジット返済の多い都市

2025年3月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 全国 名古屋市 富山市 新潟市 札幌市 相模原市 東京都区部 川崎市 広島市 甲府市 佐賀市
最新値[万円] 9.824 20.05 17.93 17.55 16.44 14.91 13.49 13.18 12.63 12.34 12.25
前年月同比[%] +7.706 +13.65 +158.6 +62.22 +87.51 +32.42 +8.192 +38.06 +129.1 +28.32 +39.76

クレジット返済の少ない都市

2025年3月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 全国 松江市 大分市 横浜市 宮崎市 青森市 福井市 松山市 長野市 神戸市 和歌山市
最新値[万円] 9.824 3.261 5.11 5.738 5.799 5.912 6.266 6.277 6.281 6.304 6.341
前年月同比[%] +7.706 -52.32 -29.24 -52.54 -54.79 -23.76 +0.967 +28.26 -12.39 -21.66 -16.19

 

これまでのクレジット返済の推移

クレジット返済の推移
最新のデータ

 

詳細なデータとグラフ

 

クレジット返済の現状と今後

家計調査(勤労者世帯)における2025年3月時点での全国平均のクレジット返済額は9.824万円。これは2020年以降のコロナ禍や物価上昇、リベンジ消費、キャッシュレス化の影響を受けた家計行動の変化を反映している。

特に返済額が高い都市は以下の通り:

  • 名古屋市:20.05万円(前年比+13.65%)

  • 富山市:17.93万円(+158.6%)

  • 新潟市:17.55万円(+62.22%)

  • 札幌市:16.44万円(+87.51%)

これらの都市では、クレジット購入も併せて増えている傾向があることから、積極的な購買行動と、それに伴う返済額の増加が見て取れる。


クレジット返済が多い都市の背景分析

上位都市の特徴には以下のような共通点がある:

  • 地方中核都市の中流層の購買力拡大:富山市や新潟市のような地方都市では、大都市圏ほど住宅費や物価が高くないため、自由に使える可処分所得がやや多くなる傾向がある。これにより、大きな支出をクレジットに頼る割合が高まりやすい

  • 住宅・教育関連の支出:クレジット払いの大きな要因としては、家具・家電、学習塾、通信機器、家の修繕費用などが挙げられ、これらの都市では家族世帯が比較的多く、それがクレジット支出の増加につながっている。

  • キャッシュレス決済の浸透:都市部ではQR決済やクレジットカードの利用環境が整っており、現金以外の支出が増えている。


クレジット返済が少ない都市の特徴

一方、返済額が少ない都市には以下のような傾向が見られる:

  • 松江市(3.261万円、前年比-52.32%)

  • 大分市(5.11万円、-29.24%)

  • 横浜市(5.738万円、-52.54%)

  • 宮崎市(5.799万円、-54.79%)

これらの都市では以下の背景が考えられる:

  • 高齢化率が高い:宮崎市や大分市では高齢者の比率が全国平均を上回っており、クレジットより現金支払いを好む世帯構成が多い

  • 慎重な支出傾向:経済的に慎重な県民性や、低所得層の割合の多さにより、消費や借入そのものを抑制する傾向が強い。

  • クレジットからデビットやプリペイドへの移行:特に高齢者層はクレジットの利用に消極的で、デビットカードや現金チャージ型の決済手段へ移行している可能性がある。


都市間・世代間の差異と課題

都市間の差

  • 地方都市では急激な伸び(富山市+158.6%、広島市+129.1%)が目立ち、これはクレジット購入の積極化と家計の柔軟化を示す。

  • 一方、大都市圏での停滞または減少(東京都区部+8.19%、横浜市-52.54%)は、支出の最適化や節約志向の強まりを反映していると考えられる。

世代間の違い

  • 若年層・子育て世代は大型支出(家電、子ども関連、引っ越し等)にクレジットを活用する傾向が強い。

  • 中高年層は、過去の経験やローン履歴からクレジットを避ける、もしくは短期返済に集中する傾向がある。

  • 高齢世代ではそもそも利用そのものが少なく、支払いは年金の範囲で計画的に行う傾向がある。


クレジット返済の問題点とリスク

  • リボ払いの利用増加による多重債務のリスク クレジット返済額が急増している都市では、リボ払いや長期分割払いに依存している世帯も増加している可能性がある。これにより、見かけの月々の負担は軽いが、総支払額は膨らむ傾向にある。

  • 物価高騰と収入停滞のミスマッチ インフレが続く一方で、地方を中心に所得は横ばいまたは減少傾向にあり、返済能力を超えた支出が懸念される。

  • 若年層の金融リテラシーの不足 スマートフォンで簡単に決済できる現代、借金の感覚が希薄化しており、無計画なクレジット利用が将来的な生活困窮を招く恐れがある。


今後の動向と予測

  1. 地方都市のクレジット依存は一時的に継続 インフレや一時的な景気回復の影響により、地方中核都市での返済額はもうしばらく上昇傾向が続くと見込まれる。

  2. 都市圏では抑制的な支出が主流に 大都市部ではサブスク志向やシェアリングエコノミーの普及により、所有より利用重視の支出行動が定着し、クレジット返済額も安定または微減が予想される。

  3. 金融教育の拡充と法制度強化の必要性 無計画な利用やリボ払いのリスクから家庭を守るため、学校教育や公的機関による金融リテラシー向上施策の強化が不可欠となる。


まとめ

クレジット返済の地域別格差は、所得水準、支出の性質、世代構成などの多様な要因によって生まれている。今後は、都市ごとの支出傾向と金融リスクのバランスを見極める視点が重要になるだろう。可処分所得の構造変化や生活様式の変容に伴い、クレジットとの付き合い方も新たな局面を迎えている。

 

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