2025年3月時点で勤労世帯のエンゲル係数は平均25.69%となり、都市間で大きな差が見られる。秋田市や浜松市では30%を超える一方、富山市や名古屋市では15〜17%と低水準。背景には食料費だけでなく、可処分所得の違いや地域経済の構造が影響している。都市間の経済格差や世代別の支出傾向が今後の家計構造に大きく影響を与えると予測される。
エンゲル係数(勤労)の家計調査結果
エンゲル係数(勤労)の多い都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 佐賀市 | 浜松市 | 秋田市 | 和歌山市 | 長野市 | 神戸市 | 熊本市 | 京都市 | さいたま市 | 福島市 |
最新値[%] | 25.69 | 32.5 | 32.2 | 31.8 | 30.5 | 30.3 | 30.3 | 30.2 | 29.6 | 29.6 | 29.5 |
前年月同比[%] | +4.091 | +22.18 | +54.81 | +74.73 | +17.76 | +53.81 | -6.481 | +45.89 | +3.86 | +27.04 | +18 |
エンゲル係数(勤労)の少ない都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 富山市 | 名古屋市 | 鳥取市 | 堺市 | 甲府市 | 津市 | 北九州市 | 千葉市 | 岡山市 | 高松市 |
最新値[%] | 25.69 | 14.8 | 16.8 | 17.7 | 19.4 | 19.7 | 19.8 | 20.6 | 21.9 | 22.4 | 22.5 |
前年月同比[%] | +4.091 | -44.78 | -32.8 | -33.21 | -19.5 | -29.89 | +1.02 | -31.33 | -4.367 | -16.42 | +15.98 |
これまでのエンゲル係数(勤労)の推移


詳細なデータとグラフ
エンゲル係数(勤労)の食料費現状と今後
エンゲル係数とは、消費支出のうち食料費が占める割合を示す指標であり、所得水準や生活の余裕度を測るバロメーターとされる。一般に、所得が低いほどエンゲル係数は高くなり、経済的に豊かな層では食費の比率は相対的に低くなる傾向がある。
全体的な推移と現在の水準
2000年代前半には20%前後で安定していたエンゲル係数(勤労)は、2010年代後半から上昇傾向を強め、2025年3月時点で平均25.69%に達している。背景には以下の要素がある:
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食料価格の上昇(特に輸入品や加工食品)
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実質賃金の伸び悩み
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可処分所得の低迷
これらが複合的に作用し、「食費の比率が高くなる=生活に余裕がない」状況が強まっている。
エンゲル係数の高い都市の特徴
佐賀市(32.5%)、浜松市(32.2%)、秋田市(31.8%)など、30%超の都市に共通する特徴は以下の通り:
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所得水準が相対的に低い(地方都市に多い)
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高齢化率が高く、勤労層の実人数が少ない
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持ち家比率が高い一方、他の生活費は圧縮傾向にあり、食費が相対的に目立つ
特に秋田市では、前年から+74.73%と急上昇しており、これは単なる物価上昇以上に、可処分所得の減少やエネルギー費の増大に伴う生活費全体の構造変化が原因と考えられる。
エンゲル係数の低い都市の特徴
富山市(14.8%)、名古屋市(16.8%)、鳥取市(17.7%)など、エンゲル係数が低い地域では、
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高所得層の比率が高い
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住宅ローン完済世帯や共働き家庭が多い
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教育費や交通費など、非食費分野に支出を振り向けている傾向
名古屋市などでは前年同期比で-32.8%と大幅に低下しており、これは全体的な生活水準が向上したというよりも、物価高の中で相対的に「他の支出が増えたため、食費の比率が下がった」という構造的要因も含んでいる可能性がある。
世代間の支出構造とエンゲル係数の関係
世代間で見ると、若年層では可処分所得が限られるため、エンゲル係数が高くなりやすい。また、単身世帯の比率が高く、まとめ買いや自炊による節約効果が薄れる点も影響する。一方、40〜60代の世帯では食費は相対的に抑えられ、教育費や住宅費が主要支出となるケースが多い。
また、近年では高齢層でも「買い物難民化」によるコンビニ・中食依存が増え、食費の単価が上昇している点も見逃せない。
今後のエンゲル係数の推移予測
今後数年間、エンゲル係数は次のような要因で左右されると見られる:
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物価の更なる上昇:輸入物価の高止まり、円安継続時の影響
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実質賃金の回復状況:最低賃金上昇の波及効果次第
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食習慣の変化:中食やデリバリー中心の食生活の広がり
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共働き世帯の増加:外食・中食需要増とともに支出比率上昇の可能性
特に、地方都市では高齢化と共に「必要な食費支出を削ることが困難」という状況が続き、相対的にエンゲル係数は高止まりする傾向が続くと予想される。
政策的対応と家計支援の必要性
地方格差を是正し、食料支出に偏った生活を緩和するためには、以下のような政策的アプローチが必要とされる:
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地方の所得向上(産業誘致・雇用支援)
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食料費への支援(低所得層向け給付や食品券の活用)
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生活インフラの整備(買い物支援・宅配制度の拡充)
エンゲル係数は単なる「食費の割合」ではなく、その背後にある地域経済の健全性や生活の質を映し出す重要な指標である。今後もこの数値の動きを丁寧に追いながら、社会的な課題解決につなげていく必要がある。
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