家計調査から見ると、学校給食費の都市間格差が顕著で、浜松市や山形市では1世帯あたりの支出が2,000円前後に達する一方、東京都区部や和歌山市では数十円にとどまるなど、自治体ごとの制度や家計状況が影響している。少子化と自治体の財政状況の違いが給食費の公的補助に反映され、今後は所得格差や政治判断によって、地域間格差がさらに広がる可能性がある。教育政策としての給食のあり方が改めて問われている。
学校給食の家計調査結果
学校給食の多い都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 浜松市 | 山形市 | 金沢市 | さいたま市 | 大津市 | 秋田市 | 岡山市 | 岐阜市 | 札幌市 | 名古屋市 |
最新値[円] | 613.3 | 2038 | 1958 | 1870 | 1710 | 1446 | 1330 | 1022 | 1011 | 996 | 917 |
前年月同比[%] | +47.38 | +5.76 | +83.85 | +1631 | +293.1 | +69.32 | +18.43 | +16.67 | +64.66 | +109.7 | +5.281 |
学校給食の少ない都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 青森市 | 甲府市 | 和歌山市 | 東京都区部 | 京都市 | 静岡市 | 大阪市 | 神戸市 | 鳥取市 | 盛岡市 |
最新値[円] | 613.3 | 0 | 32 | 39 | 40 | 48 | 62 | 64 | 114 | 126 | 148 |
前年月同比[%] | +47.38 | -100 | -93.03 | -51.85 | -29.82 | -94.14 | -78.25 | -38.46 | +280 | -30.39 | -55.56 |
これまでの学校給食の推移


詳細なデータとグラフ
学校給食の教育現状と今後
家計調査において、「学校給食」は教育支出の中でも地域差が非常に大きい項目の1つです。今回の調査では、2008年から2025年3月までのデータを通じて、2人以上世帯の学校給食費における地域別の傾向が浮き彫りになっています。最新の全国平均は613.3円ですが、都市によっては数十円しか支出していないところもあれば、2,000円を超えるケースも見られます。本稿では、このような動向を立てて分析し、将来の予測についても述べていきます。
第1:学校給食費とは何か?
学校給食費は、基本的に家庭が実費負担する「食材費」が中心です。しかし、自治体によっては公費で全額または1部補助しており、保護者負担ゼロ(いわゆる“無償化”)を実現しているところもあれば、従来通りの有償制度を維持しているところもあります。そのため、「支出ゼロ」は必ずしも給食が行われていないことを意味せず、「保護者が支払っていない」という状況を示していることもあります。
第2:都市別支出額の実態
データによると、浜松市(2038円)や山形市(1958円)、金沢市(1870円)などでは、給食費の家庭負担が非常に高くなっています。とくに金沢市は前年同期比で+1631%という急増が見られ、政策変更や補助制度の終了が背景にあると考えられます。1方で、甲府市(32円)、和歌山市(39円)、東京都区部(40円)などでは家庭の支出がほぼゼロに近く、無償化が進んでいる可能性があります。
第3:支出増減の背景にある制度と政治判断
学校給食の支出にここまで地域差があるのは、主に各自治体の財政状況、首長の方針、議会の構成などに起因しています。たとえば、選挙公約で「給食無償化」を掲げた首長が当選した都市では、公費による全面補助が実現するケースが増えています。1方、財源に余裕がなく、国からの交付金頼みの自治体では、従来どおりの家庭負担が維持される傾向があります。
第4:世代間やライフスタイルの変化と給食観
若い親世代では、共働きが1般化し、子どもに対して「栄養バランスの取れた食事を学校で確保してほしい」というニーズが強まっています。1方、年配世代では「給食は家庭が負担するのが当然」という考えが根強い地域もあり、住民意識の差が政策決定に影響を及ぼしています。
第5:都市間格差が広がる将来予測
今後、自治体ごとの政治的判断によって、給食費の格差はさらに拡大する可能性があります。特に、地方自治体間での競争が激しくなる中、「子育て支援都市」としてのアピール手段として給食無償化を選ぶ自治体が増える1方、財政的に追いつけない自治体では逆に負担が増す可能性があります。結果として、同じ日本国内であっても「生まれ育つ場所によって教育環境が異なる」という事態が深刻化するおそれがあります。
第6:国の役割と政策提言
教育格差を是正するには、国としての包括的支援が不可欠です。現在、学校給食に関しては自治体任せの側面が強く、国による直接的な財政補助は限定的です。今後は、子育て支援の1環として学校給食費を国が1律に支援する体制を整えることが、地域間格差の是正につながると考えられます。
おわりに
学校給食は、単なる食事の提供ではなく、子どもの健康・発育を支える教育の1部です。自治体ごとの支出状況の違いは、家庭の家計のみならず、教育機会そのものの平等性にも直結します。都市別の動向から見えてくるのは、「地域により教育格差が生まれている」という現実です。今後は、自治体だけでなく、国全体での支援と制度設計が求められています。
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