日本の都市ガス代は地域差が大きく、2025年4月の平均は7216円。岡山など地方都市は高く、東京圏は一律で安価。背景には調達構造や供給体制の違いがある。今後もエネルギー価格や為替の影響で料金は上昇傾向にあり、再エネ政策や自治体支援が地域格差是正のカギとなる。
小売物価統計
都市ガス代の高い都市
2025年4月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
名称 | 平均 | 岡山 | 福岡 | 北九州 | 広島 | 静岡 | 浜松 | 札幌 | 名古屋 | 仙台 | 新潟 |
最新値[円] | 7216 | 8806 | 8713 | 8713 | 8598 | 8305 | 8288 | 7548 | 7236 | 6929 | 6840 |
前年同月比[%] | +4.64 | +3.32 | +3.284 | +3.284 | +3.317 | +3.438 | +3.458 | +3.753 | +3.936 | +4.18 | +20.23 |
都市ガス代の安い都市
2025年4月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
名称 | 平均 | さいたま | 千葉 | 川崎 | 東京都区部 | 横浜 | 相模原 | 京都 | 堺 | 大阪 | 神戸 |
最新値[円] | 7216 | 6208 | 6208 | 6208 | 6208 | 6208 | 6208 | 6776 | 6776 | 6776 | 6776 |
前年同月比[%] | +4.64 | +4.635 | +4.635 | +4.635 | +4.635 | +4.635 | +4.635 | +4.262 | +4.262 | +4.262 | +4.262 |
ランキングの推移


詳細なデータとグラフ
ランキングの都市ガス代現状と今後
日本における都市ガス料金は、家計における光熱費の中でも比較的変動が大きく、特にエネルギー価格や国際情勢の影響を受けやすい要素です。2025年4月時点での都市ガスの1か月平均料金は7216円であり、地域差が顕著です。今回は、そのランキングデータから、これまでの推移、要因、課題、そして今後の見通しについて詳述します。
地域別都市ガス料金ランキングの実態
まず、最新のデータをもとに都市ごとの都市ガス料金をランキングで見てみると、以下のように上位と下位で2000円以上の差が生じています。
-
上位(高額)都市 岡山(8806円)、福岡・北9州(8713円)、広島(8598円)など9州・中国地方を中心とする都市。
-
下位(低額)都市 さいたま、千葉、川崎、東京都区部、横浜など関東の都市で1律6208円。
これらの都市間の料金差は、単にガスの単価の違いだけでなく、調達ルート、事業者の料金体系、自治体の都市ガス事業の体制、需要構造などが複雑に絡み合って決定されます。
過去からの推移と価格変動の背景
2016年以降の推移を見ると、都市ガス料金は全体として緩やかな上昇傾向にあり、特に以下の要因が影響しています:
-
国際エネルギー価格の高騰(LNG=液化天然ガスが主原料) ウクライナ情勢などの影響でLNG価格が1時的に急騰。
-
円安の進行 エネルギーの輸入コストが高まり、ガス料金に転嫁。
-
脱炭素・再エネ政策による構造的転換 LNGへの依存から脱却を図る過程で、短期的にはコスト上昇が避けられない構図に。
このような流れのなかで、地方都市では比較的コストが転嫁されやすく、料金の上昇幅が顕著になる傾向があります。
料金差が生まれる構造的要因
なぜ同じ国内でもここまで料金に差が出るのでしょうか。主な理由は以下の通りです:
-
ガス会社の違いと地域独占 東京ガス、大阪ガスなどの大手が供給する関東・近畿エリアではスケールメリットが働きやすく、料金が低く抑えられています。1方で、地方では供給体制が分散し、料金が割高になりやすい。
-
パイプライン整備と調達コスト LNGの受け入れ基地からの距離やパイプラインの整備状況が、地域ごとの調達コストに大きな差を生んでいます。
-
自治体・公営事業者の料金政策 地方都市ではガス事業を自治体が運営している場合もあり、コスト管理や価格設定に差が出る場合があります。
2025年の料金増加率から読み解く問題点
今回注目すべきは、新潟市の+20.23%という大幅な上昇です。他の都市では3〜4%程度に収まっているなか、突出して高いことから、次のような要因が考えられます:
-
調達構造の急激な変化
-
大規模インフラ投資による料金転嫁
-
天然ガス契約の更新による調達単価上昇
これにより、生活者の負担感が1層強まり、地方格差がさらに顕在化する可能性があります。
今後の料金動向と期待される対策
都市ガス料金は今後も国際的な情勢や脱炭素政策の動向に左右されるため、以下のような展望と課題が想定されます。
-
短期的には横ばい~やや上昇傾向が継続 LNG市場の不安定さや為替リスクが残っており、料金の抑制は難しい局面が続きそうです。
-
中長期的には競争原理の導入と電化との競合がカギ 電気・オール電化住宅とのコスト競争が進めば、都市ガス会社側も料金の透明性向上や効率化を迫られるでしょう。
-
自治体と国による補助制度や再エネ転換支援の拡充 特に低所得層や高齢者世帯への支援、都市ガス事業の構造改革支援が期待されます。
まとめ――都市ガス料金をめぐる地域間格差の是正に向けて
都市ガス料金は、今後も家庭の生活コストに直接的な影響を与える重要なファクターです。地域ごとの料金格差は単なる数字の違いにとどまらず、都市間の生活基盤の差やエネルギー政策の偏りを映し出しています。今後は、料金の透明化、公平性の確保、そして持続可能な供給体制の整備が重要な政策課題となっていくでしょう。
コメント