通所介護費の全国推移と地域差:2025年最新データで読み解く課題

医療



2025年3月時点での通所介護費の全国平均は835.4円。都市部では東京都区部が最も高く890円、地方は一律817円と差があるが、いずれも前年より0.4〜0.5%の増加を示す。物価や人件費上昇が背景にあり、地域間格差や職員不足が今後の大きな課題となる。

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通所介護費の高い都市

2025年3月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 平均 東京都区部 横浜 大阪 名古屋 千葉 さいたま 神戸 福岡 水戸 広島
最新値[円] 835.4 890 875 875 872 872 872 861 853 853 853
平均比[%] 100 106.5 104.7 104.7 104.4 104.4 104.4 103.1 102.1 102.1 102.1
前年月同比[%] 0.502 0.451 0.459 0.459 0.461 0.461 0.461 0.584 0.471 0.471 0.471

通所介護費の低い都市

2025年3月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 平均 佐賀 大分 宮崎 山口 山形 松山 松江 熊本 盛岡 福島
最新値[円] 835.4 817 817 817 817 817 817 817 817 817 817
平均比[%] 100 97.8 97.8 97.8 97.8 97.8 97.8 97.8 97.8 97.8 97.8
前年月同比[%] 0.502 0.492 0.492 0.492 0.492 0.492 0.492 0.492 0.492 0.492 0.492

 

これまでの通所介護費の推移

通所介護費
最新のデータ

 

詳細なデータとグラフ

 

通所介護費の現状と今後

通所介護(いわゆる「デイサービス」)は、高齢者が在宅での生活を継続するために、日中の生活支援やリハビリを受けられる重要な介護サービスです。2012年から2025年3月までの通所介護費の推移を見てみると、最新の全国平均は835.4円/1人・1回となっています。

この額には介護保険制度上の報酬が反映されており、物価や人件費の上昇にもかかわらず、大幅な引き上げは行われていないのが現状です。とはいえ、訪問介護費と比べると価格は安定的に推移し、2024年から2025年にかけては全国的にわずかながら上昇傾向にあります。

都市部の高水準とその背景

通所介護費が高い都市として、東京都区部(890円)を筆頭に、横浜・大阪(875円)名古屋・千葉・さいたま(872円)、神戸(861円)などが上位に並びます。これらの都市の共通点は以下の通りです:

  • 都市型デイサービスの充実と専門性の高さ

  • 人件費や物価の高さが反映された報酬体系

  • 利用者数の多さによる施設稼働率の上昇

これらの都市では前年同期比で約0.45%〜0.58%の微増が見られ、特に神戸(0.584%)がやや高めの増加率を記録しています。背景には、都市部の施設維持コスト上昇や、サービス多様化への対応が求められていることが挙げられます。

地方部の水準と均一性

一方で、通所介護費が最も低い地域は佐賀・大分・宮崎・山口・山形・松山・松江・熊本・盛岡・福島の各都市で、すべて817円という均一な水準となっています。

これらの地方都市では以下のような傾向が見られます:

  • 物価・人件費の抑制

  • 定額的な報酬設計による地域間の格差是正

  • 地域密着型の介護サービスが主流

注目すべきは、これらの地域でも前年同期比で0.492%の増加が一律で見られており、報酬改定による全国的な微調整が行われたことがうかがえます。これは地方部においても燃料費や運営コストの上昇を一定程度反映した結果と考えられます。

通所介護費上昇の背景要因

通所介護費が全国的に上昇している要因として、以下の点が挙げられます:

  • 物価・エネルギーコストの上昇(施設運営費への影響)

  • 介護職員の処遇改善加算の拡充

  • 利用者ニーズの多様化によるサービスの質的向上

また、高齢化が進行し、要介護認定者数が増加する中で、通所介護の役割はより重くなっており、利用者1人あたりのサービス内容も高度化しています。

一方で、人手不足による職員1人あたりの負担増や、短時間利用への報酬抑制策などが、事業所経営にとっては悩みの種となっています。

地域別報酬の評価と今後の展望

現行制度では、報酬単価は基本的に全国一律であり、地域ごとのコスト差は包括的加算などで調整されていますが、制度の複雑さや実態との乖離が指摘されています。

今後の課題としては:

  • 物価と人件費の地域差を反映した柔軟な報酬設計

  • ICTやデジタル技術を用いた業務効率化

  • 軽度者向け通所介護の制度見直しと、予防的支援とのバランス

などが挙げられます。通所介護の継続的な質の確保のためには、報酬水準の適正化と職員支援の両輪での改革が求められています。

 

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