近畿の果物価格は、都市部で高値安定、産地側で低価格ながら変動が大きい傾向。2025年4月は姫路や三重で急騰が見られた。気候変動や流通事情が影響する中、今後は販路多様化やスマート農業により価格の安定と価値向上が期待される。
果実計の卸売り市場価格
果実計の高い順
京都市 | 神戸市 | 大阪市 | 姫路市 | 大阪府 | 奈良県 | 和歌山市 | 北勢 | 三重県 | 大津市 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
最新 | 2025年4月 | 2025年4月 | 2025年4月 | 2023年12月 | 2021年12月 | 2023年12月 | 2023年12月 | 2016年12月 | 2021年12月 | 2021年12月 |
最大期 | 2024年8月 | 2025年1月 | 2024年8月 | 2023年8月 | 2020年9月 | 2020年8月 | 2020年9月 | 2016年3月 | 2016年3月 | 2020年8月 |
最新値[円/kg] | 584.7 | 540 | 524.3 | 474 | 442 | 354 | 353 | 350 | 303 | 300 |
最大値[円/kg] | 644 | 642 | 637.3 | 657 | 538 | 474 | 535 | 504 | 455 | 420 |
前月比[%] | -3.36 | -10.99 | -4.724 | +40.65 | +23.81 | +15.69 | +6.325 | +34.62 | +22.18 | +3.093 |
前年同月比[%] | +2.453 | -4.481 | +2.143 | +12.32 | +15.4 | +34.09 | +20.48 | +0.2865 | +23.17 | +26.05 |
果実計の推移

最新の価格データ

その他のデータとグラフ
果実計の価格についての推移と展望
近畿地方は、京都・大阪・神戸といった大都市圏を中心に、果物の大消費地としての性格が強く、一方で和歌山・奈良・三重といった地域は重要な果物生産地でもあります。このような「消費地と産地の混在」という構造が、果物の価格に多様な変動要因をもたらしています。
また、和歌山の柿・みかん、奈良のイチゴや柿、三重の梨や温州みかんなど、地域に根差した品種が市場を支え、季節や気候の影響を大きく受ける傾向があります。
2025年4月時点の都市別果物価格の実態
最新データでは、最も高いのが京都市(584.7円/kg)、次いで神戸市(540円/kg)、大阪市(524.3円/kg)となっており、大都市圏が高価格帯を形成しています。これは贈答需要や高級果物志向が反映されている結果と考えられます。
一方で、和歌山市(353円/kg)、奈良県(354円/kg)、三重県(303円/kg)、大津市(300円/kg)といった産地寄りの地域では価格が安価で、地元流通や直売所販売の影響が現れています。
また、姫路市(474円/kg)や大阪府(442円/kg)といった中間エリアでは、供給面と消費面が交錯しており、価格が中程度に落ち着いています。
最近の価格変動の背景と注目点
2025年4月の変動率を見ると、都市部で価格が下落傾向(京都:-3.36%、神戸:-10.99%、大阪:-4.724%)にある一方で、地方部では急騰(姫路:+40.65%、北勢:+34.62%、大阪府:+23.81%、三重県:+22.18%)が顕著です。
この傾向には以下のような背景が考えられます。
-
都市部:仕入れの調整、贈答需要の落ち着き、在庫調整による価格下落
-
地方部:春の気温上昇による早期収穫開始、流通業者の買い付け集中
-
姫路や北勢など:一時的な品薄感や地元特産品への需要集中が価格を押し上げた可能性
とくに姫路市の+40%超という急騰は、地元市場への供給減や外部需要の流入といった一時的要因が絡んだと見られます。
地域ごとの価格傾向と特色
-
京都市・神戸市・大阪市:贈答用・ブランド果物が中心で、一般果実よりも高値が定着。価格は比較的安定だが季節変動に敏感。
-
和歌山・奈良・三重:生産地型で市場直結。流通コストが低く、地元出荷が価格を押し下げやすい。果物の品質は高いが価格は割安。
-
大阪府・姫路市・北勢:都市と産地の中間点で、価格変動の幅が広く、需要変化や市場環境に影響されやすい。
このように、「消費地価格は高値で安定」「産地は価格低めだが変動しやすい」という2極構造が見て取れます。
今後の見通しと政策的課題
今後、近畿地方の果物価格は以下のような傾向が予想されます。
-
消費地では価格の平準化が進む可能性があり、高級果実の価格帯は維持される一方で、廉価帯商品の競争が激化する
-
産地側では気候変動の影響による収穫時期の変化が、年内の価格の不安定要因となる見込み
-
販路の多様化(ネット直販、ふるさと納税経由など)が地域価格に波及し、都市部価格と接近する場面も増えるだろう
-
若手生産者支援やブランド戦略が成功すれば、奈良・和歌山などが価格上昇傾向に転じる可能性もある
加えて、スマート農業や流通の効率化を進めることにより、価格の安定化と消費者負担のバランスを取る政策的アプローチが求められるでしょう。
コメント