日本の豆腐1kgの小売価格は近年上昇傾向にあり、2025年3月の平均価格は277.5円。特に鳥取や福井などでは高値を記録し、地方では製造・流通コストや地場ブランドの影響が大きい。一方で、価格が低い都市でも前年比で大幅な上昇が見られ、全国的に価格高騰が進行中。背景には原材料やエネルギー、物流、人件費の上昇があり、今後は安定供給と価格抑制の両立が課題となる。
食品・外食の都市別小売価格
豆腐の高い都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 鳥取 | 福井 | 浜松 | 大津 | 富山 | 那覇 | 松阪 | 札幌 | 金沢 | 相模原 |
最新値[円] | 277.5 | 546 | 494 | 464 | 418 | 371 | 368 | 365 | 360 | 359 | 353 |
平均比[%] | 100 | 196.8 | 178 | 167.2 | 150.6 | 133.7 | 132.6 | 131.5 | 129.7 | 129.4 | 127.2 |
前年月同比[%] | 0.92 | 10.53 | 6.009 | 13.73 | 0 | -2.368 | 6.052 | -3.947 | 6.509 | 0 | 14.61 |
豆腐の低い都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 柏 | 岐阜 | 富士 | 豊橋 | 長岡 | 熊本 | 静岡 | 小山 | 郡山 | 新潟 |
最新値[円] | 277.5 | 171 | 184 | 190 | 190 | 197 | 199 | 199 | 200 | 200 | 205 |
平均比[%] | 100 | 61.62 | 66.31 | 68.47 | 68.47 | 70.99 | 71.71 | 71.71 | 72.07 | 72.07 | 73.88 |
前年月同比[%] | 0.92 | 0 | 10.18 | -5.473 | 0 | 4.787 | 5.291 | -2.451 | -7.407 | 4.167 | -11.64 |
これまでの 加工食品の推移


詳細なデータとグラフ
豆腐の現状と今後
豆腐は日本人の食卓に欠かせない基本的な食材の一つであり、手ごろな価格で栄養価の高い食品として長年親しまれてきました。しかし、2020年代に入ってから、豆腐を含む加工食品全般で価格の上昇が続いており、その影響は地域によっても異なります。特に、2025年3月時点での1kgあたりの全国平均価格は277.5円となり、過去の水準と比較して明確な上昇傾向を示しています。
全国平均とその推移
2014年から2025年までのデータを見ると、豆腐の小売価格は緩やかに上昇してきたものの、特に2022年以降、急激な価格上昇が目立つようになりました。この背景には、原材料となる大豆価格の高騰や、円安による輸入コストの増大、さらには人件費・エネルギーコストの増加が影響しています。安価な食品という豆腐のイメージとは裏腹に、製造・物流のコスト構造は年々厳しさを増しています。
価格が高い都市の特徴
豆腐の価格が全国で最も高かったのは鳥取市で、1kgあたり546円という価格を記録しました。以下、福井(494円)、浜松(464円)、大津(418円)と続き、いずれも全国平均を大きく上回っています。これらの都市の共通点として、以下の点が挙げられます:
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地方都市であり、スーパーチェーンの集中度が比較的低い
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地場企業や小規模製造業者が供給を担っており、大量生産によるコスト削減が難しい
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一部地域では地元産大豆使用のプレミアム豆腐が主流であり、価格が高め
特に浜松市の前年比13.73%、相模原市の14.61%などは、急激な価格上昇として注目されます。
価格が低い都市の特徴
一方、価格が最も安かった都市は柏市(171円)であり、他に岐阜市(184円)、富士市や豊橋市(190円)などが続きます。これらの都市の特徴は以下の通りです:
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大都市圏に近く、競争が激しいため価格抑制が働きやすい
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流通コストが比較的低く、大手食品メーカーの影響力が強い
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PB商品(プライベートブランド)の普及によって価格が下支えされている
しかし興味深いのは、これらの「安い地域」での価格上昇率が極めて高い点です。柏市では前年比61.62%、新潟市ではなんと73.88%の上昇が見られ、これは大手流通でもコスト上昇を価格に転嫁せざるを得なくなっている現状を示しています。
価格高騰の要因分析
価格上昇の背景には、複数の要因が複雑に絡み合っています:
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原材料価格の上昇:大豆は国産よりも輸入に依存しており、円安や国際価格の変動に大きく影響されます。
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エネルギーコストの上昇:製造工程には多くの電力・ガスを要し、光熱費高騰が企業の負担に。
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物流費の増加:トラック運転手不足や燃料費の上昇により、配送コストも上昇。
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人手不足と人件費増:中小企業では賃上げが難しい一方、最低賃金の上昇圧力がかかっています。
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地方と都市部の価格差:競争環境の違いや購買力の差が、価格に反映されやすくなっています。
今後の展望と課題
豆腐は安価で栄養バランスの良い食品として、多くの国民に必要とされ続ける食材です。しかし、このまま価格上昇が続くと、低所得層の家計を圧迫する懸念があります。今後の課題としては、次のような対応が求められます:
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効率的な製造・物流体制の構築
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地域ブランド豆腐の高付加価値化と価格の説得力強化
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政府による原材料支援やエネルギー補助制度の活用
まとめ
豆腐の価格動向は、ただの数字以上に、日本の食品産業が直面する構造的な課題を反映しています。今後、価格安定と品質維持を両立するためには、消費者・生産者・行政が一体となって工夫と努力を重ねることが求められます。豆腐のような身近な食品こそ、その変動が社会の変化を敏感に映し出しているのです。
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