訪問介護費の全国動向と地域差:2025年最新データで読み解く課題

医療



訪問介護費は2012年以降、抑制傾向が続き、2025年3月時点で全国平均は252.5円となっています。都市部では278円(東京都区部)が最高値だが、前年から2%以上の減少が続出。地方は一律244円と低価格で、収益性や人材確保に課題が顕著。報酬制度の見直しが喫緊の課題といえます。

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訪問介護費の高い都市

2025年3月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 平均 東京都区部 横浜 大阪 名古屋 千葉 さいたま 神戸 福岡 水戸 広島
最新値[円] 252.5 278 271 271 269 269 269 264 261 261 261
平均比[%] 100 110.1 107.3 107.3 106.5 106.5 106.5 104.6 103.4 103.4 103.4
前年月同比[%] -2.378 -2.456 -2.518 -2.518 -2.536 -2.536 -2.536 -2.583 -2.247 -2.247 -2.247

訪問介護費の低い都市

2025年3月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 平均 佐賀 大分 宮崎 山口 山形 松山 松江 熊本 盛岡 福島
最新値[円] 252.5 244 244 244 244 244 244 244 244 244 244
平均比[%] 100 96.65 96.65 96.65 96.65 96.65 96.65 96.65 96.65 96.65 96.65
前年月同比[%] -2.378 -2.4 -2.4 -2.4 -2.4 -2.4 -2.4 -2.4 -2.4 -2.4 -2.4

 

これまでの訪問介護費の推移

訪問介護費
最新のデータ

 

詳細なデータとグラフ

 

訪問介護費の現状と今後

訪問介護費は、在宅高齢者の生活を支える重要なサービスとして、介護保険制度の中で位置づけられています。2012年から2025年3月までの推移をみると、最新の全国平均は252.5円と、きわめて低水準にとどまっています。

この金額は「1回の訪問につき支払われる費用(自己負担分含まず)」を指し、介護報酬改定により数年ごとに見直されてきたものの、実質的な減額傾向が近年顕著です。背景には、財政圧力と介護報酬の抑制政策、そして介護職の待遇改善が進まない現状があります。

訪問介護費が高い都市の傾向と課題

訪問介護費が比較的高い都市には、東京都区部(278円)横浜・大阪(271円)、名古屋・千葉・さいたま(269円)などが並びます。これらの都市の特徴には以下の点が挙げられます:

  • 物価・人件費の高さ

  • サービス提供体制の整備

  • 大都市圏での需要過多による稼働効率の悪化

しかし、これらの都市でも前年同期比で軒並み2.4〜2.5%の減少が見られ、特に神戸(-2.583%)では下落幅が大きいことから、介護事業者の収益性悪化やサービス維持への懸念が浮上しています。

訪問介護費が低い地域の特徴と現実

一方で、訪問介護費が最も低い地域は佐賀・大分・宮崎・山口・山形など10地域すべてが244円にとどまっています。これらは、地方都市であることに加え、以下のような傾向が考えられます:

  • 賃金水準や物価が相対的に低い

  • 訪問距離が長く、効率が悪化しやすい

  • 介護職員の確保が難しく、サービスが限定的になりがち

これらの地域でも一律に-2.4%の下落が確認されており、介護職の離職率の上昇や、サービス提供事業者の撤退リスクが懸念されます。

価格下落の要因と今後の課題

訪問介護費が全国的に減少している主な要因は以下の通りです:

  • 介護報酬改定による基本単価の見直し

  • 財政的持続性を重視した制度改革(自己負担の引き上げなど)

  • 介護人材不足によるサービス提供回数の減少

一方、利用者数は高齢化の進展により増加しており、介護サービスの質と量の両立が求められる時代において、報酬体系の見直しが不可欠です。

介護現場では、人手不足による過重労働、低賃金、キャリア形成の困難さといった構造的課題が山積しており、介護職員の処遇改善とともに、報酬水準の見直しが求められています。

地域格差と今後の展望

都市部では需要が高まり続ける一方、地方では介護人材の確保が深刻な課題です。価格水準が一律である現状では、地域ごとのコスト差を反映した報酬設計が困難であり、サービスの維持に限界が生じています。

今後は、訪問介護費の地域別加算制度の再構築、ICT活用による業務効率化、そして介護人材の育成・定着支援策が必要です。持続可能な介護制度に向け、報酬の再評価が迫られています。

 

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