家計調査に基づく二人以上世帯の「被服及び履物」支出は、地域差が顕著であり、川崎市や富山市など都市部で高く、那覇市や甲府市などで低い傾向が見られる。高支出地域では所得水準やファッション志向、商業施設の充実が影響。一方、低支出地域では節約志向や購買機会の少なさが要因。全体では節約意識や中古市場の拡大が背景にあり、今後は若年層の消費縮小や高齢層の購買力低下により横ばいまたは緩やかな減少が見込まれる。
被服及び履物の家計調査結果
被服及び履物の多い都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 川崎市 | 富山市 | 広島市 | さいたま市 | 高知市 | 山形市 | 大阪市 | 東京都区部 | 水戸市 | 福岡市 |
最新値[万円] | 1.082 | 1.919 | 1.805 | 1.671 | 1.592 | 1.586 | 1.584 | 1.396 | 1.347 | 1.345 | 1.323 |
前年月同比[%] | -1.052 | +42.7 | +57.98 | +18.63 | -16.41 | +80.72 | +15.74 | +31.73 | +0.892 | +41.33 | +42.26 |
被服及び履物の少ない都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 那覇市 | 甲府市 | 和歌山市 | 佐賀市 | 秋田市 | 堺市 | 福島市 | 長崎市 | 北九州市 | 青森市 |
最新値[万円] | 1.082 | 0.606 | 0.621 | 0.662 | 0.675 | 0.689 | 0.71 | 0.781 | 0.785 | 0.807 | 0.81 |
前年月同比[%] | -1.052 | -13.49 | -32.74 | -23.74 | -58.88 | +3.408 | -41.45 | -33.48 | -5.114 | -47.62 | +3.701 |
これまでの被服及び履物の推移


詳細なデータとグラフ
被服及び履物の被服費現状と今後
被服及び履物は家計における「衣」支出の中心であり、生活水準や価値観、地域性を色濃く反映する項目です。本稿では、2008年から2025年3月までの家計調査のデータをもとに、2人以上世帯における「被服及び履物」の支出傾向を分析し、背景にある要因や将来の見通しを考察します。
長期的な動向とその背景
被服費・履物費は、かつては4季のある日本において1定の支出が保たれてきました。しかし、近年では以下のような要因で長期的に減少傾向にあります。
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ファストファッションの普及:ユニクロやGUなどの影響で、衣料を安価に入手できるようになり、単価が下がった。
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中古市場の拡大:メルカリなどのフリマアプリにより新品購入の頻度が減少。
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節約志向の定着:リーマンショック以降、消費者の財布の紐が固くなり、衣料は真っ先に削られる支出項目となった。
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コロナ禍の影響:外出機会の減少により、衣料の購買意欲が著しく低下。
地域間の支出格差の特徴
高支出都市の特徴(川崎市、富山市、広島市など)
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高所得層の多さ:川崎市や東京都区部は高収入世帯が多く、ファッションへの関心も高い。
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都市型ライフスタイル:通勤着、外出着の需要が多く、被服購入頻度が高まる。
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商業施設の集中:百貨店や大型モールが多く、購買意欲を刺激しやすい。
低支出都市の特徴(那覇市、甲府市、佐賀市など)
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購買機会の少なさ:人口規模が小さい地域では衣料専門店の選択肢が限られ、購入機会自体が少ない。
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節約志向の強さ:所得水準が低い地域では、生活費を圧縮するために衣料費が削られる傾向。
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気候の影響:沖縄のような温暖地では、季節による衣替えの頻度が少なく、被服支出が低い。
世代間の購買傾向
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若年層(20~40代):SNSを通じてトレンドに敏感だが、ファストファッション・中古志向が強く、単価は低め。
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中高年層(50代以降):機能性や品質を重視し、購入頻度は少ないが1品あたりの単価は比較的高め。
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高齢者層(70代以上):衣料への関心が低下し、支出そのものが縮小傾向。
物価上昇と支出増の地域的要因
物価上昇に伴い、多くの都市で前年から支出が増加していますが、これには以下のような要因があります:
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原材料費・輸送費の上昇:輸入衣料が中心の日本では、世界的なインフレが価格に反映。
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インバウンド回復による販売促進:大都市圏では観光客向け需要も刺激材料に。
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生活回帰による買い替え需要:コロナ後の外出機会増加に伴う衣料品の更新需要。
今後の見通し
横ばい〜緩やかな減少傾向
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全体として被服支出は頭打ちで、今後は高齢化による生活簡素化とともにさらに減少する可能性。
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消費の中心となる若年世帯の購買行動が節約・低価格志向に傾いているため、被服市場の単価成長も見込みにくい。
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サブスクリプションやレンタルサービスの利用増も支出抑制要因となる。
まとめ
被服及び履物の支出は、地域・世代・経済状況により大きく変動し、日本の「衣」に対する価値観の変容を映し出しています。支出の格差や低下傾向は、ファッション業界や小売業にも長期的な影響を及ぼすものであり、今後も衣料費をめぐる家計行動は注視すべき対象です。
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