家計調査で見る茶類消費の地域差と今後:世帯支出の傾向分析

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家計調査によると、二人以上世帯の茶類支出は地域によって大きな差があり、水戸市や宮崎市では1,600円前後と高く、和歌山市や北九州市では800円以下に留まります。茶文化の根付きや健康志向、家庭内飲料習慣の有無が背景にあります。都市部や高齢層を中心に緑茶や健康茶の消費が安定しており、今後も地域・世代別に多様な推移が予測されます。

茶類の家計調査結果

茶類の多い都市

2025年3月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 平均 水戸市 宮崎市 さいたま市 川崎市 仙台市 横浜市 千葉市 東京都区部 甲府市 宇都宮市
最新値[円] 1120 1642 1641 1574 1569 1555 1481 1478 1331 1286 1274
前年月同比[%] +8.99 +33.39 +72.56 +36.04 +38.97 +60.14 -2.694 +23.27 -9.394 +31.09 -10.41

茶類の少ない都市

2025年3月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 平均 和歌山市 高知市 松山市 北九州市 大分市 福岡市 徳島市 岐阜市 盛岡市 熊本市
最新値[円] 1120 759 784 849 853 853 853 864 879 880 886
前年月同比[%] +8.99 -27.23 +20.8 +5.074 -37.6 -17.18 -13.49 +5.882 -0.114 -24.85 -19.23

 

これまでの茶類の推移

茶類の推移
最新のデータ

 

詳細なデータとグラフ

 

茶類の飲料・菓子現状と今後

お茶は日本の伝統的な飲料であり、単なる水分補給を超えて「文化」や「生活習慣」として根づいています。家庭内で日常的に飲まれることが多く、特に緑茶や麦茶、ウーロン茶、健康茶など種類も多様です。しかしその一方で、ペットボトル飲料の普及や若年層の嗜好変化、生活スタイルの多様化により、茶類の支出傾向も大きく変化しています。


全国平均と支出推移の概要

2008年から2025年3月までのデータを見ると、茶類の全国平均支出は直近で1,120円。この数字は、長期的には横ばいもしくはやや減少傾向にあるといえます。特に急須で淹れる茶葉の利用が減り、ティーバッグやペットボトル商品への移行が進むなかで、「自宅で淹れる文化」が縮小していることが背景にあります。


都市別支出の顕著な違い

支出が高い都市の特徴

上位には水戸市(1,642円)、宮崎市(1,641円)、さいたま市(1,574円)などが挙げられます。これらの都市に共通するのは、

  • 高齢世帯の比率が比較的高く、

  • 健康志向が根強いこと、

  • 地元で茶葉や健康茶を買い求める文化が残っている点です。

特に宮崎市では前年同期比で+72.56%と急増しており、これは地域スーパーの販売戦略の変化や特定の健康茶(杜仲茶、緑茶粉末など)の人気が背景にある可能性もあります。

支出が低い都市の特徴

一方、和歌山市(759円)、高知市(784円)、北九州市(853円)などでは支出が少なく、特に北九州市では-37.6%と大幅な減少が見られます。これらの地域では、

  • 若年層・共働き世帯が多く、

  • 茶葉よりも水や他の清涼飲料水を選ぶ傾向が強い、

  • 家庭での「急須文化」の消失が顕著です。

また、気候や水質、地域文化による「水の飲み方」も関係しており、麦茶の自家製文化が根強い地域では支出が少なくなる傾向があります。


世代間・ライフスタイルによる違い

高齢者世帯では、「急須で淹れる」「お茶を日常的に飲む」という習慣が根づいており、煎茶や健康茶の購入が多くなる傾向があります。一方、若年世帯では「手軽さ」や「味の多様性」を重視し、コンビニでの購入やティーバッグタイプへの依存が高まっています。

また、在宅勤務の増加により、自宅での飲料消費が見直され、茶葉・粉末タイプの需要が一部で復活しつつあるのも近年の特徴です。


価格と健康意識の相関

茶類は、単価が比較的安価である一方、健康イメージが強い飲料として根強い人気があります。特に、

  • カフェインレスのルイボスティー

  • 血圧対策の杜仲茶

  • 機能性表示食品の緑茶

といった商品は、高齢者を中心に安定した需要があります。一方で、ペットボトルの緑茶やほうじ茶などは外出時の消費が中心であり、家庭内での「本格茶消費」とは異なる傾向を見せます。


今後の推移と予測

地域間格差の定着

今後も高齢化が進む地域やお茶文化の根づく地域では高水準を維持し、若年層が中心の都市では支出が抑制されると予想されます。水戸市や宮崎市のように、地場産業としてお茶に力を入れる自治体では支出増が継続する可能性があります。

新たな商品形態と市場拡大

  • 粉末茶・スティックタイプ:コーヒーのように手軽に溶かすタイプが注目。

  • サブスクリプション型の健康茶セット:定期購入による健康管理ニーズに対応。

  • デカフェ・ノンカフェイン系:妊婦や高齢者向けに需要拡大。

エコ・サステナビリティとの融合

脱ペットボトル運動やマイボトル持参文化が広がるなかで、「家庭で淹れる茶」の文化が見直される可能性があります。プラスチック削減と健康志向が合致すれば、家庭内消費型の茶類市場は再拡大し得ます。


まとめ:茶類支出は文化・健康・生活の交差点

茶類の支出は単なる飲料消費ではなく、その地域の生活文化や世代間の価値観を映し出す鏡です。高齢化社会の進展とともに茶類の役割は再評価されつつあり、地域ごとの取り組みや製品の進化次第で支出額も大きく変わっていくでしょう。飲料のなかでも「習慣性」と「文化性」が強いお茶だからこそ、支出の変化は社会の変化を最も繊細に映し出しています。

 

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