日本の腕時計世帯支出の動向と今後の展望｜都市部で高額支出が増加

日本の世帯における腕時計の平均支出は2.372万円で、都市部が支出を押し上げています。大都市や関東では前年同月比で大幅増が見られる一方、地方では支出減と購買世帯の減少が進んでいます。全体的に購入世帯は少なく、支出は高額購入者に偏る傾向が強いです。今後は高級時計需要の継続と、一般消費の縮小が並行して進むと予測されます。

腕時計はかつて「時間を知る道具」として生活必需品でしたが、スマートフォンの普及によりその実用性は後退しました。1方で、腕時計は今やファッションアイテムや高級嗜好品としての側面が強まり、購入傾向は2極化しています。この傾向は、日本の世帯支出データにも明確に表れています。

腕時計支出の全体的な傾向

2025年4月時点での腕時計の全国平均支出は2.372万円。大都市（7.059万円）や関東（5.013万円）といった都市部が高額支出をけん引する1方、小都市B（1.442万円）や中都市（1.744万円）は低水準にとどまっています。前年同月比では全国平均で+3.941%の微増ですが、都市部を中心に大幅増加、地方では減少という対照的な構図が見られます。

特筆すべきは北陸の+225.4%や大都市の+148.9%、関東の+130.8%という急伸です。特定の高額品の購入やイベント的需要の影響が強く、腕時計支出がごく1部の世帯に集中している可能性が高いです。

支出世帯の割合とその変動

腕時計を購入した世帯の割合は全国平均で0.566%、非常に少数です。北海道（0.63%）が最も高く、4国（0.3%）が最も低い結果となっています。これらは、腕時計を購入する層が限定されていることを意味し、また高価格帯の商品が支出額を押し上げている現状が浮き彫りになります。

前年同月比では支出世帯割合が平均で-16.98%減と、全体としては縮小傾向です。特に東海（-51.22%）、9州・沖縄（-45.57%）などの落ち込みが目立ちます。これは「高額商品を買った層」は増えていても、「購入者の裾野」は広がっていないことを示しています。

課題と構造的問題

腕時計市場の課題は、高額支出と低購買率の乖離にあります。1部の消費者が高級腕時計を購入する1方、多くの人にとっては腕時計が不要なアイテムとなっている点が問題です。このため、月間平均支出額は年によって大きく上下する傾向があります。

また、スマートウォッチなどのデジタル製品が主流となりつつあり、従来型の腕時計への関心が薄れつつあることも、購入率の低下に拍車をかけています。

今後の推移と期待

今後、腕時計の世帯支出は以下の2つの方向に分岐していくと予想されます。

1. 高級時計市場の堅調な成長 海外ブランドや資産価値のある高級腕時計は、都市部を中心に1定の需要を維持・拡大していくと見られます。特に関東や大都市圏では、資産運用や自己表現としての購入が増える可能性があります。

2. 1般消費者による購入機会の減少 実用目的としての腕時計はさらに必要性が薄れ、購入世帯は減少傾向が続くでしょう。スマートウォッチが必要とされる1方で、従来型腕時計は「持たない選択」が増えていくと考えられます。

ただし、プレゼント需要や記念品としての購買、リユース市場の活性化など、新たな消費の形にも期待がかかります。