2025年4月の緑茶100g平均価格は499.2円で、秋田など一部地域で高騰する一方、津や大津では低価格が維持されています。生産者の高齢化や需要の減少が影響し、今後は高級茶の価格上昇と安価茶のPB化による価格維持の二極化が進むと見られます。
小売物価統計
緑茶小売りの高い都市
2025年4月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 秋田 | 熊本 | 松江 | 鳥取 | 川口 | 前橋 | 藤沢 | 富士 | 所沢 | 宇都宮 |
最新値[円] | 499.2 | 858 | 799 | 749 | 691 | 674 | 669 | 657 | 652 | 641 | 641 |
前年同月比[%] | +0.278 | +3.748 | +1.011 | -2.347 | -0.443 | +2.137 | -1.511 | +14.67 | -4.042 |
緑茶小売りの安い都市
2025年4月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 津 | 大津 | 那覇 | 奈良 | 今治 | 松山 | 広島 | 堺 | 和歌山 | 山口 |
最新値[円] | 499.2 | 232 | 242 | 243 | 249 | 286 | 287 | 293 | 294 | 322 | 334 |
前年同月比[%] | +0.278 | -3.333 | -7.28 | +1.418 | +4.745 | -3.3 | -13.02 | +4.886 | +4.375 |
緑茶の推移


詳細なデータとグラフ
緑茶の現状と今後
緑茶は、日本人にとって極めて馴染みの深い飲み物であり、日常生活に欠かせない存在です。その1方で、価格帯は非常に広く、高級品から業務用まで多様な製品が流通しています。2025年4月時点での全国平均価格は100gあたり499.2円と、紅茶と比較すると圧倒的に高く、国内生産品であること、加工方法の差異、ブランド価値の影響が価格に反映されています。
地域別価格の差──秋田・熊本 vs 津・大津
高価格帯地域の特徴
最も高いのは秋田(858円)で、次いで熊本(799円)、松江(749円)と続きます。これらの地域に共通するのは、①地元産の高級茶の取り扱いが多い、②贈答文化や茶道など「本格志向」の需要が強い、③地方百貨店など高単価店舗が主要販路である、などの要因が考えられます。
特に秋田は前年比+3.748%とさらに上昇しており、伝統文化との結びつきが強く、価格の下落圧力がかかりにくい構造にあります。
低価格帯地域の特徴
対照的に、津(232円)、大津(242円)、那覇(243円)などは低価格で推移しています。これらの地域ではPB商品や業務用パッケージが多く流通しており、コスト重視の消費傾向が見て取れます。特に堺(294円)は前年比-13.02%と急落しており、安売りや棚替えによる1時的な価格低下の影響が考えられます。
価格推移の背景──緑茶市場の構造と課題
緑茶の価格は、以下の要因に大きく左右されます。
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生産量と農家の高齢化 静岡、鹿児島などの主産地では、生産農家の減少と高齢化が進んでおり、供給量は減少傾向です。その1方で高品質な茶葉への集中生産により、平均価格の底上げが進んでいます。
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国内需要の減少 若年層の「お茶離れ」が進み、家庭で急須を使う習慣が薄れています。これにより、100g単位のリーフ茶(茶葉)の需要は減少し、ペットボトル飲料や粉末茶に置き換わりつつあります。
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販路の変化とPB商品の台頭 スーパーマーケットやドラッグストアでのPB(プライベートブランド)商品の普及が、安価な緑茶の選択肢を増やし、価格の2極化を招いています。
地域差の理由──流通構造と消費文化
緑茶の価格には、単なる物流コストの差だけでなく、地域ごとの「緑茶文化」の違いも表れています。茶所としての歴史がある地域や、茶道・贈答文化が根付いている場所では高価格帯商品が好まれます。
逆に、温暖な地域や大都市近郊では、ペットボトルやティーバッグが主流となり、リーフ茶自体の需要が限定的になる傾向があります。こうした文化的・習慣的背景が価格差に反映されています。
今後の価格動向──持続的な上昇か多様化か
緑茶100gの小売価格は、2020年代初頭からやや停滞しつつも、500円前後で安定しています。今後の動向として、以下が予想されます:
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高級茶の価格は緩やかに上昇 国内生産量の減少や需要の集中によって、プレミアム茶葉の価格は上昇が見込まれます。
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低価格品はPB化・輸入茶混合で抑制傾向 1方で、スーパーマーケットの価格競争は続き、安価な製品は今後も流通し続けるでしょう。
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嗜好の細分化による「用途別緑茶」市場の成長 「機能性表示食品としての緑茶」「カフェインレス」「粉末・スティック型」など、生活スタイルに合わせた緑茶の多様化が進み、価格帯ごとの棲み分けが明確になると予測されます。
まとめ──緑茶価格は文化と産業の分岐点に
緑茶100gの価格は、単なる飲料の値段ではなく、日本の農業、流通、生活文化が交錯する指標です。価格の平均値は大きくは動いていないものの、その背後には産地の衰退、流通改革、消費者意識の変化といった深い構造問題が横たわっています。
今後の緑茶市場は、単価競争から「選ばれる理由」の創出が重要となり、安価で手軽な茶と高級志向のプレミアム茶の2極化が進行する可能性が高いと考えられます。
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