私立理工系の授業料(1か年)は2025年で平均110.5万円。都市別に大きな差があり、最高の金沢と最低の鹿児島では75万円超の開き。設備費や専門教員確保、地域差が影響しており、今後は所得連動型制度や地方支援策が鍵となる見込みです。
大学の教育費
私立理工系授業料の高い都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
名称 | 平均 | 金沢 | 和歌山 | 大津 | 津 | 大阪 | 京都 | 静岡 | 横浜 | 広島 | 札幌 |
最新値[万円] | 110.5 | 151.5 | 146.2 | 140.7 | 140 | 137.3 | 129.8 | 129.5 | 123.9 | 123.8 | 123.3 |
平均比[%] | 100 | 137.1 | 132.3 | 127.4 | 126.7 | 124.2 | 117.5 | 117.2 | 112.2 | 112 | 111.6 |
前年月同比[%] | 1.156 | 0 | 1.387 | 8.372 | 0 | 0.469 | 0.224 | 0.836 | 0.585 | 1.131 | 3.218 |
私立理工系授業料の低い都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
名称 | 平均 | 鹿児島 | 山口 | 長崎 | 岡山 | 甲府 | 大分 | 新潟 | 名古屋 | 高松 | 青森 |
最新値[万円] | 110.5 | 76 | 78 | 82 | 84.5 | 86 | 89 | 91.12 | 91.93 | 92 | 94.82 |
平均比[%] | 100 | 68.78 | 70.59 | 74.21 | 76.47 | 77.83 | 80.54 | 82.46 | 83.19 | 83.26 | 85.81 |
前年月同比[%] | 1.156 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0.789 | 0 | 0 |
これまでの私立理工系授業料の推移


詳細なデータとグラフ
私立理工系授業料の現状と今後
2025年3月時点で、私立理工系大学の授業料平均は110.5万円です。私立大学全体の中でも理工系は高額な分類に入り、専門設備や実験・実習環境の充実が必要なため、文系よりも高い傾向にあります。
-
授業料が最も高いのは金沢(151.5万円)で、全国平均を大きく上回ります。
-
次いで和歌山(146.2万円)、大津(140.7万円)、津(140万円)など、西日本の都市で高水準の授業料が並びます。
-
一方、最も安いのは鹿児島(76万円)で、最も高い都市との格差は75万円以上となっています。
2010年以降の推移と全体的な傾向
2010年から2025年までのデータを俯瞰すると、私立理工系の授業料は年平均で緩やかな上昇傾向にあります。以下の要因が背景に挙げられます:
-
物価・人件費の上昇
-
実験設備やIT環境の整備コスト増
-
留学生や研究機能強化のための教育投資
ただし、都市によっては授業料を抑える傾向も見られ、全体的には「二極化」の傾向が強まっています。
都市別授業料の特徴と背景分析
高額地域(西日本・中都市中心)
-
金沢(151.5万円):地方中核都市でありながら授業料は全国最高。設備更新や研究施設維持にかかる費用の影響が大きい。
-
和歌山(146.2万円)・大津(140.7万円)・津(140万円):いずれも地方大学でありながら、地元定着・研究強化型大学の方針が反映か。
-
大阪(137.3万円)、京都(129.8万円):都市部の高地価や施設維持費の高さが影響。前年同期比は大阪(+0.469%)、京都(+0.224%)と微増。
中位〜低額地域
-
横浜(123.9万円)、静岡(129.5万円):関東圏ながらやや低め。静岡は0.836%増、横浜は0.585%増で、ゆるやかな上昇傾向。
-
札幌(123.3万円):地方大都市ながら、物価の安さが授業料水準を抑えている。前年比+3.218%とやや急な上昇。
低額地域(九州・山陰)
-
鹿児島(76万円)、山口(78万円)、長崎(82万円):九州地方では、学生確保のため低価格戦略が取られている可能性が高い。
-
岡山・甲府・大分・新潟・名古屋も100万円未満の水準で、コスト抑制と競争環境の調整を図る地域といえる。
授業料上昇の要因と構造的課題
-
インフラ・設備維持費の増加 理工系特有の実験施設、化学薬品、安全管理体制などへの投資が欠かせず、都市部ではさらにそのコストが高くつきます。
-
教員人件費と専門性確保 専門技術を持つ教員の確保により、高額な報酬が必要であり、それが授業料に反映されがちです。
-
少子化による固定費分散の困難 学生数の減少により、1人当たりの経費が増える構造となっています。
-
地域政策・補助金の格差 一部自治体は授業料補助や研究投資支援を行っており、その有無が学費に影響します。
今後の展望と政策的課題
-
授業料無償化の議論と所得連動制への転換 家庭の所得水準による柔軟な学費設定が必要。
-
地方大学の競争戦略:質を落とさずにコストを抑え、魅力ある理工系教育を維持できるかが鍵。
-
奨学金制度の拡充:理工系は長期在学傾向もあるため、継続的な支援制度の整備が急務です。
コメント