男性用下着の支出動向：都市・世代差から見る今後の消費予測

男性用下着の世帯支出は全国平均226円と低水準で、都市間では約17倍の開きがあります。支出が多い都市では若年層や買い替え需要が影響し、少ない都市では高齢化や節約志向が影響。今後は価格上昇や生活様式の変化により、支出の二極化や新たなサービス形態の浸透が進むと予想されます。

男性用下着類は日用品の中でも更新頻度が低くなりがちな品目であり、支出動向には家計状況や生活スタイルが色濃く反映されます。家計調査の2025年3月時点のデータからは、地域や世代によって顕著な差があり、消費傾向の背景を探ることは今後のマーケティングや生活支援政策にもつながります。

全国平均と都市ごとの支出額の差

2025年3月の時点で、2人以上世帯の男性用下着の全国平均支出は226円でした。これは生活必需品としては非常に低く、また全体的に消極的な消費傾向が見られます。1方で、都市別に見ると最大で561円（宮崎市）、最小で33円（神戸市）と非常に大きな開きがあります。

支出が高い都市の特徴と背景

宮崎市（561円）、静岡市（447円）、さいたま市（434円）などの都市では男性用下着の支出が高く、特に山口市（+231.9%）や高知市（+117.5%）など前年から大幅な増加が見られる地域もあります。これらの増加傾向の背景には以下の要素が考えられます：

• 世帯に若年男性や子育て中の家庭が多い（家族分をまとめて購入）

• 地場の店舗・量販店による値引きセールやまとめ買い促進

• 物価上昇に伴う価格転嫁と買い替え需要の同時進行

特に山口市のように200%を超える急増は、前年の水準が極めて低かった可能性や、特定の月に集中的な購入があった可能性もあります。

支出が少ない都市とその理由

1方で、神戸市（33円）、奈良市（42円）、長崎市（60円）などでは男性用下着への支出が著しく低く、しかも前年からの減少率も極めて大きくなっています（奈良市：-88.1%、長崎市：-59.73%など）。これには以下の要因が考えられます：

• 高齢者世帯が多く、買い替え頻度が極端に低い

• 節約志向が強く、新規購入を控える傾向

• ネット購入やアウトレット商品が調査対象から漏れている可能性

また、神戸市のような都市部でも支出が低迷している点は、固定費を抑える生活意識や衣料品への無関心化など、都市特有のライフスタイルの反映とも考えられます。

世代間の特徴

若年〜中年男性を含む世帯では、下着類の定期的な買い替えが行われやすく、支出は1定程度維持されます。1方で、高齢者のみの世帯では、衣料品への支出全般が縮小しやすく、下着においても「まだ使えるものを使い続ける」傾向が強く出ます。

また、女性が家計を管理する家庭では、男性用下着の更新が女性の判断に任されることも多く、男性が自身で消費をコントロールしないため、購入の優先順位が下がる傾向も見られます。

コロナ以降の影響と買い控えの傾向

コロナ禍を契機として外出機会が減り、衣料品需要が全体的に低下した中、下着類もその影響を受けました。加えて、在宅勤務の増加やテレワークの定着により、「見えない衣服」への関心が下がり、支出も減少しました。男性下着は特に「誰にも見られない」ものとして後回しになりやすい傾向が強く、結果的に消費は長期的な低空飛行となっています。

今後の推移と見通し

今後の男性用下着の支出傾向については、以下のような予測が立てられます：

• 短期的には2極化が進行：若年層中心の世帯ではまとめ買いやブランド志向が継続し、1定の支出が維持される1方で、高齢化が進む地域では支出がさらに減少。

• 価格上昇による買い控え：物価の継続的な上昇により、買い替えが後回しにされ、実質消費が抑制される可能性。

• サブスクリプション型の台頭：オンラインで定期的に下着を届けるサービスが浸透すれば、特に若年層で支出の安定化が進む可能性。

• 世帯単位の消費から個人主導へ：家計単位の支出から、個人（特に単身男性）が自分で管理する支出形態に変わっていくことで、新たな支出パターンが生まれるかもしれません。