2008年から2025年までの家計調査によると、二人以上世帯の男性用シャツ・セーターの支出は平均688.5円と低水準で推移しているが、都市ごとの差や前年比の増減率には顕著な開きがある。特に松山市や福井市では急激な増加が見られる一方、青森市や堺市では大幅な減少が起きており、世代間の衣料品への価値観や購買行動の変化、気候や流通網の差も背景にある。今後も都市やライフスタイルの違いにより二極化が進行する可能性がある。
男性用シャツ・セーターの家計調査結果
男性用シャツ・セーターの多い都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
名称 | 平均 | 松山市 | 川崎市 | さいたま市 | 京都市 | 広島市 | 富山市 | 大阪市 | 仙台市 | 福井市 | 相模原市 |
最新値[円] | 688.5 | 1377 | 1104 | 1094 | 1050 | 1031 | 1027 | 993 | 976 | 948 | 936 |
前年月同比[%] | +28.48 | +503.9 | +62.35 | -4.287 | +248.8 | +121.7 | +37.67 | +98.2 | +136.9 | +919.4 | +30.18 |
男性用シャツ・セーターの少ない都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
名称 | 平均 | 青森市 | 神戸市 | 和歌山市 | 堺市 | 北九州市 | 宮崎市 | 名古屋市 | 佐賀市 | 鹿児島市 | 前橋市 |
最新値[円] | 688.5 | 151 | 178 | 192 | 256 | 262 | 305 | 337 | 406 | 430 | 445 |
前年月同比[%] | +28.48 | -67.46 | -20.89 | -51.15 | -62.57 | -47.39 | -41.68 | -56.96 | -59.92 | -50.52 | -63.7 |
これまでの男性用シャツ・セーターの推移


詳細なデータとグラフ
男性用シャツ・セーターのシャツ・セーター現状と今後
家計調査における「男性用シャツ・セーター」の支出は、生活の質やファッションに対する価値観、さらには流通や価格変動といった多面的な社会変化を映す1種の鏡です。特に、2025年3月時点の最新データで全国平均688.5円という支出の少なさは、実用品としての衣料の消費傾向が強くなっていることを示唆しています。
これまでの支出動向とコスト意識の変化
2008年以降、男性用シャツ・セーターの支出は全体的に緩やかに減少傾向を示してきました。これは以下の要因が複合的に影響しています:
-
ファストファッションの台頭:ユニクロ、GU、無印良品などの台頭により、安価で品質の良い衣料が手に入るようになり、1枚あたりの単価が低下。
-
服の買い替えサイクルの長期化:特にミドル・シニア世代では「使える限り使う」意識が強く、消費が抑制されやすい。
-
リモートワークの影響:コロナ禍以降、シャツやセーターの「外着」としての必要性が減り、支出にも影響を及ぼした。
都市ごとの特徴と支出の2極化
最新データでは、支出額に地域差が非常に顕著に表れています。
高支出都市の特徴
-
松山市(1377円)・福井市(948円)など:急激な増加率(松山+503.9%、福井+919.4%)から、地場百貨店や衣料品専門店のセール、あるいは地域限定の需要喚起策(地域クーポンなど)が1時的な押し上げ要因と考えられる。
-
川崎市・京都市・広島市:都市部に近いが住宅地も多く、出勤・通学などに伴う「きちんとした服」へのニーズが維持されている。
低支出都市の特徴
-
青森市(151円)、神戸市(178円)など:もともと支出が低い上に、前年比で大幅な減少が起きている。オンライン通販中心になった結果、安価でのまとめ買いによって家計支出統計に表れにくくなっている可能性も。
世代間で異なるファッション消費の価値観
若年層(20〜40代)
-
ファッションに対するコスト意識は高く、価格重視で買い控え傾向あり。
-
メルカリなどの中古市場やリース型サービス(airCloset等)も利用が進む。
中高年層(50代以上)
-
必要最低限の購入にとどまり、「壊れたら買う」「セール品中心」の意識が顕著。
-
地方ほどこの傾向が強く、低支出都市と重なっている。
気候・気温差による消費行動の違い
-
寒冷地では支出が少ない傾向:青森、秋田、札幌などでは、すでに保有している衣類が多く、新たな買い足しが少ない。
-
温暖地の方が意外に支出が多い傾向:広島や松山では「春秋物」のシャツ・セーターの消費機会が多く、更新頻度も高くなる。
今後の推移と課題
今後も都市間格差と世代差は広がる見込みです。以下のような傾向が予測されます:
-
低支出層の固定化:安価なファストファッションやネット通販利用が常態化し、支出が底ばいに。
-
中高年を中心とした「買わない層」の増加:人口高齢化が進むことで、衣類支出そのものが縮小。
-
1部都市の高騰リスク:地域限定での地場衣料店の閉店・撤退により、選択肢が減少→単価の上昇。
まとめ:衣料支出の裏にある地域と社会の姿
男性用シャツ・セーターという身近な衣料品の支出データから見えるのは、価格や商品選択の自由度だけでなく、都市間の経済活動、世代間の価値観、さらにはライフスタイルの変化といった社会構造そのものです。衣類支出は単なる「買い物」ではなく、生活の価値観や地域資源の分布までを映し出す鏡であることを改めて認識する必要があります。
コメント