日本の全産業における労働者数は2025年1月時点で5114万人と増加傾向にあるが、女性やパートタイム労働者の増加が目立つ一方、男性や一般労働者の伸びは鈍化している。少子高齢化や非正規雇用の拡大、地域や業種による人手不足など、構造的課題が山積している。今後は外国人労働者の受け入れや、多様な働き方への対応、技術革新による生産性向上などが必要不可欠となる。
男女別の労働者数の推移
最近の労働者数データ
合計 | 一般労働者 | 男性計 | 女性計 | パートタイム労働者 | |
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最新 | 2025年1月 | 2025年1月 | 2025年1月 | 2025年1月 | 2025年1月 |
最大期 | 2023年12月 | 2021年4月 | 2017年12月 | 2023年12月 | 2023年12月 |
最新値[万人] | 5114 | 3507 | 2651 | 2463 | 1607 |
最大値[万人] | 5291 | 3595 | 2762 | 2548 | 1736 |
前年同月比[%] | 1.72 | 0.9073 | 0.6777 | 2.866 | 3.539 |
全産業の労働者数の推移


詳細なデータとグラフ
日本の全産業の労働者数の特徴
厚生労働省の「毎月勤労統計調査」などに基づく全産業の労働者数データ(従業員5人以上事業所対象)は、2025年1月時点で5114万人となっています。この統計は、日本の雇用構造を俯瞰する上で重要な指標であり、企業活動の活発さや労働市場の構造変化を読み取るための貴重な資料です。
これまでの労働者数の推移と特徴(2012年~2025年)
緩やかな増加傾向
2012年以降、労働者数は高齢者の就労増加、女性の就業促進、外国人労働者の受け入れ拡大などを背景に、緩やかに増加傾向を示しています。
コロナ禍による一時的減少
2020年~2021年にかけては、新型コロナウイルスの影響で一時的に減少傾向を見せたものの、2022年以降は回復基調となり、現在はコロナ前の水準を上回るまでに至っています。
男女別の労働者数と課題
女性労働者の顕著な増加
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女性計:2463万人(前年比 +2.866%)女性の労働参加が顕著に進んでおり、前年比でも男性(+0.6777%)を大きく上回る伸びを記録しています。保育支援制度の整備やリモートワーク普及などが背景にあります。
男性労働者の伸び鈍化
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男性計:2651万人(前年比 +0.6777%)男性労働者数はほぼ横ばいに近く、若年男性の就業者数は減少傾向にあります。団塊世代の退職など高齢化の影響も反映されています。
残るジェンダーギャップの課題
女性の就業率は増加していますが、依然として管理職比率の低さや賃金格差などの課題が残っています。キャリア継続を阻む出産・育児の壁も深刻です。
雇用形態別の動向と課題
一般労働者の増加の鈍さ
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一般労働者:3507万人(前年比 +0.9073%)正社員・フルタイムなどを中心とする一般労働者の増加率は低く、企業が柔軟な雇用形態を選ぶ傾向が強まっています。
パートタイム労働者の急増
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パートタイム労働者:1607万人(前年比 +3.539%)特に女性や高齢者を中心に、時間制約のある働き方が選ばれる傾向が顕著です。パートの役割は単なる補助業務にとどまらず、企業運営の中核を担うケースも増えています。
非正規雇用の課題
非正規労働者には賃金水準の低さ、昇進機会の制限、社会保障の不十分さなどの課題があります。これらは長期的な貧困リスクや格差拡大を招きかねません。
地域・業種によるばらつき
全産業平均では増加傾向にあるものの、地域間格差や業種別の人手不足は深刻な課題です。
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地方では人口減少の影響で労働力が確保しにくく、特に建設業・介護・運輸業などで慢性的な人手不足が発生しています。
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都市部ではサービス業を中心に短期的な雇用は増加傾向ですが、雇用の質の担保が問題となっています。
今後の推移と期待される対応策
労働力人口の長期減少リスク
少子高齢化が進行する中で、日本全体の労働力人口は今後減少トレンドに入ると見られています。これは全産業の人手不足をさらに深刻化させる要因です。
技術革新と生産性の向上
AIやロボティクス、リモートワークの拡大により、労働者数に頼らない生産性向上の重要性が高まっています。特に人手不足分野における自動化は今後のカギです。
外国人労働者の受け入れ拡大
人材不足を補う策として、外国人労働者の制度的受け入れ整備が求められています。特定技能制度や留学生の就職支援の強化などが重要です。
多様な働き方と就業継続支援
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高齢者や育児中の人材が働き続けられる環境整備
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正規・非正規の処遇格差の是正
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ワークライフバランスの確保と福利厚生の充実
といった施策が、労働力の質と量の両面での維持につながります。
まとめ
日本の全産業における労働者数は増加傾向を示している一方で、その中身を見ると、女性・パートタイム層の急増、男性正規雇用の伸び悩み、非正規労働の拡大など、構造的な課題が多く存在します。今後の労働市場の持続性を確保するためには、包括的な政策対応と民間の努力の両立が求められます。
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