家計調査によると、2025年3月時点の生鮮魚介の全国平均支出は3,231円。富山市や長崎市では支出増が続く一方、那覇市や相模原市では大幅な減少傾向が見られます。世代間では高齢者の魚食維持に対し、若年層の魚離れが顕著で、今後の持続には調理支援や食育強化が不可欠です。
生鮮魚介の家計調査結果
生鮮魚介の多い都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 富山市 | 長崎市 | 奈良市 | 東京都区部 | 千葉市 | 岡山市 | 広島市 | 津市 | 横浜市 | 神戸市 |
最新値[円] | 3231 | 5215 | 4359 | 4083 | 4017 | 3839 | 3832 | 3735 | 3723 | 3690 | 3683 |
前年月同比[%] | -4.791 | +9.352 | +39.8 | +15.83 | +4.229 | +7.898 | +30.03 | +54.72 | +12.65 | -9.492 | -10.3 |
生鮮魚介の少ない都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 那覇市 | 甲府市 | 松山市 | 宇都宮市 | 宮崎市 | 鹿児島市 | 相模原市 | 佐賀市 | 高知市 | 徳島市 |
最新値[円] | 3231 | 2192 | 2383 | 2423 | 2472 | 2481 | 2528 | 2680 | 2697 | 2701 | 2709 |
前年月同比[%] | -4.791 | -23.78 | -15.85 | -15.07 | -17.13 | -14.33 | -21.52 | -27.17 | +9.146 | -22.87 | +5.903 |
これまでの生鮮魚介の推移


詳細なデータとグラフ
生鮮魚介の魚介類現状と今後
日本は世界でも有数の魚食文化を持つ国であり、生鮮魚介類はその中心に位置しています。中でも二人以上世帯における家計支出は、魚介の消費傾向や食習慣の変化を如実に示すバロメーターとなります。2008年から2025年までの家計調査のデータによると、2025年3月時点の生鮮魚介の全国平均支出は月額3,231円。これは魚介類全体(5,926円)の約54%を占めており、依然として食卓の中心的存在であることが分かります。
地域別の消費額から見る傾向と背景
高消費都市:地元漁業と食文化の強さ
1位の富山市(5,215円)を筆頭に、長崎市(4,359円)、奈良市(4,083円)、東京都区部(4,017円)などが上位に名を連ねています。これらの都市には共通点があります。
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地域水産業の強さと市場流通の活発さ(富山・長崎など)
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伝統的な魚食文化の継続(奈良・東京都区部)
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年齢層の高い住民による家庭調理の定着
特に広島市の前年比+54.72%、長崎市+39.8%、岡山市+30.03%という急伸は、地元産魚介への信頼や支持が強く、近年の健康志向ブームも拍車をかけていると見られます。
低消費都市:魚離れと都市構造の変化
一方、那覇市(2,192円)、甲府市(2,383円)、松山市(2,423円)などは下位に位置し、前年比でも大幅な減少を示しています(那覇市-23.78%、相模原市-27.17%など)。
その背景には、
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流通コストが高く、新鮮魚介が割高
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若年層比率の高さと調理離れ
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加工食品や肉類へのシフト
などが考えられます。特に都市部郊外の新興住宅地(相模原市など)では、スーパーマーケットでの買い物中心で、選ばれるのは処理済み・冷凍商品が主流となっています。
世代別消費傾向:若年層と高齢層の乖離
世代間の差異は生鮮魚介の消費において非常に顕著です。
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高齢層(60代以上)生鮮魚介の扱いに慣れており、旬や魚種にも、健康維持の観点からも積極的に購入する傾向にあります。
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若年層(20〜40代)調理の手間や骨取りの煩わしさを敬遠し、刺身や焼き魚など調理済み商品の利用にシフト。また、肉料理や外食の比率が高く、生鮮魚の購入頻度は減少傾向にあります。
このギャップが、今後の魚食文化の継承にとって大きな課題となるでしょう。
生鮮魚介消費をめぐる社会的・経済的課題
① 漁獲量と価格の問題
地球温暖化や資源管理の影響で国内の漁獲量は年々減少しており、供給不足から価格が上昇傾向にあります。生鮮魚介は価格変動の影響を直接受けるため、家計への圧力も高まっています。
② 流通と物流の限界
生鮮品は輸送コストが高く、特に地方都市では都市圏との価格差が拡大。また、流通業者の高齢化や市場の統合も進んでおり、地方における品揃えの低下も一因とされています。
③ 魚離れの文化的側面
メディアや教育の場で魚の扱い方や魅力を知る機会が減り、特に都市部の若年層は魚を「難しい」「面倒」と感じて避けがちです。この傾向を変えるには、家庭・学校・企業の連携した食育が不可欠です。
今後の推移と持続可能な対策の方向性
今後の生鮮魚介の消費は、地域と世代によって二極化がさらに進むと予測されます。
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地方の漁業都市では高齢者主導で安定消費が継続
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都市圏や若年層中心地域では減少に歯止めがかからない可能性
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価格高騰と物流難により、「冷凍魚介」や「加工品」への移行が進行
このような未来に備え、以下の対策が重要です:
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魚の調理教育の強化(学校・YouTube・地域講座など)
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手軽な調理済み生鮮商品の開発
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「サブスク型魚介便」や地元産魚の直送販路の強化
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魚食文化を再評価するPR活動(例:地元の魚料理コンテスト)
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