総務省家計調査において、2025年3月時点の理美容用品の全国平均支出額は5527円であり、都市によって大きな差がみられる。特に山形市では1万円を超え、前年比113%増という顕著な上昇がある一方、神戸市などでは大幅減少も見られる。本稿では、二人以上世帯における理美容用品支出の長期的な推移、地域差や世代間の特性、コロナ禍後の変化などを分析し、今後の動向を予測する。
理美容用品の家計調査結果
理美容用品の多い都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 山形市 | 広島市 | 高知市 | 山口市 | 金沢市 | 岡山市 | 奈良市 | 千葉市 | 浜松市 | 東京都区部 |
最新値[円] | 5527 | 10730 | 8376 | 7639 | 7219 | 6867 | 6838 | 6520 | 6485 | 6398 | 6362 |
前年月同比[%] | +7.768 | +113.4 | +42.33 | +83.63 | +24.55 | +78.74 | -0.0731 | +48.69 | +21.81 | +9.125 | -2.974 |
理美容用品の少ない都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 神戸市 | 松江市 | 和歌山市 | 秋田市 | 青森市 | 長崎市 | 宮崎市 | 佐賀市 | 京都市 | 那覇市 |
最新値[円] | 5527 | 3216 | 3783 | 3944 | 3960 | 3963 | 4098 | 4510 | 4513 | 4580 | 4639 |
前年月同比[%] | +7.768 | -40.01 | -14.68 | -7.872 | +8.672 | -21.35 | +12.21 | -5.252 | -14.38 | -37.88 | +5.145 |
これまでの理美容用品の推移


詳細なデータとグラフ
理美容用品の諸雑費現状と今後
理美容用品支出とは、家庭内で使用するシャンプーや整髪料、ヘアカラー剤、化粧水や乳液などのスキンケア製品、基礎的な化粧品などを含む「セルフケア向け」消耗品の購入にかかる費用である。理美容サービスと異なり、店舗での施術を伴わないため、個々の家庭の生活様式や価値観が色濃く反映される支出項目といえる。
長期的な動向と支出額の推移(2008年〜2025年)
2008年から2025年にかけて、理美容用品への支出はやや増加傾向にあるが、緩やかで断続的である。特に大きな変動がみられたのは以下のような社会的要因による。
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2011年の東日本大震災:衛生意識の向上で1時的に支出増加。
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2014年の消費増税:直後は駆け込み需要と反動減。
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2020年〜2021年のコロナ禍:外出自粛により外見管理への関心が増し、セルフケア用品の支出は増加。
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2023年以降の物価上昇:インフレによる価格上昇が支出額を押し上げているが、使用頻度そのものは伸び悩んでいる可能性もある。
都市間の支出格差とその要因
最新データでは、理美容用品支出が多い都市として山形市(10730円)、広島市(8376円)、高知市(7639円)などが挙げられる。これらの都市にはいくつかの共通要因がある。
高支出都市の特徴
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都市規模が中規模以下で、外出機会が少なく「家庭内セルフケア」の比重が高い
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女性高齢者の割合が多い地域では、店舗型サービスよりも用品購入が選ばれる傾向
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気候条件(乾燥・寒冷)によってスキンケア用品の需要が多い
特に山形市の前年比+113.4%という急増は、在宅需要の持続と地元チェーンの販促活動が関連していると考えられる。
低支出都市の特徴
神戸市(3216円)、松江市(3783円)、和歌山市(3944円)などでは支出が低く、特に神戸市は前年比-40.01%と大幅な減少となっている。
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都市圏の利便性により、理美容サービスに依存しやすく、用品を買う頻度が下がる。
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高齢化や人口減少が著しい地方都市では、そもそも消費母体が縮小。
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生活費節約傾向が強く、まとめ買い・低価格帯商品志向が進む。
世代間の特徴と変化
理美容用品の消費には、明確な世代間の違いがある。
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若年層(20〜30代):化粧品やスタイリング製品を中心に「美容志向」が強く、SNSによるトレンド影響も大きい。
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中年層(40〜60代):ヘアカラーやスカルプケアなど「エイジングケア」用品の支出が増加。
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高齢層(70代以上):必要最低限の消耗品に絞る傾向で、支出額は相対的に少なめ。ただし健康志向・自然派製品への投資は1定数存在。
また、共働き世帯やシングル世帯が増える中で、「時短」や「オールインワン型」の商品に人気が集まっている。
直近の変化と今後の予測
2025年3月のデータから読み取れる近年の特徴は以下の通り。
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インフレ影響による単価上昇が支出増の主因となっている。
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ネット通販とドラッグストアの競争が価格と選択肢を拡大。
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ジェンダーフリー化粧品や男性向け商品の台頭が需要の広がりに貢献。
今後の予測
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都市部では用品支出が減少傾向になる可能性(サービス志向への回帰)。
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地方中核都市では1定の高支出傾向が継続(生活習慣・環境要因)。
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中高年層のスキンケア需要拡大により、エイジングケア関連商品が伸びる。
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高齢者の簡便性志向に応じた商品開発も重要になる。
まとめ:理美容用品支出は“地域と世代の鏡”
理美容用品への支出は、単なる消耗品の購買ではなく、家庭の生活スタイルや価値観を映す鏡である。都市間の格差、世代間の目的意識、そして社会情勢によって大きく変動するこの分野は、今後も消費行動の重要な指標であり続けるだろう。地域密着型の商品戦略や、ライフスタイルに応じた提案がより1層求められる時代に突入している。
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