日本の玉ねぎ栽培は北海道が全国の58%以上を占める圧倒的な主力地域で、佐賀や兵庫なども成長中。全国的には栽培面積は増加傾向だが、労働力不足や気候変動への対応が課題。今後は機械化や新品種導入、貯蔵施設整備などを通じて、安定供給と収益確保を目指す必要がある。
野菜栽培のデータとグラフ
玉ねぎ収穫量の最大と最新
全国 | 北海道 | 佐賀 | 兵庫 | 長崎 | 愛知 | 静岡 | 熊本 | |
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最新 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 |
最大期 | 1985年 | 2023年 | 2011年 | 1985年 | 2019年 | 1985年 | 1973年 | 1973年 |
最新値[kha] | 25.5 | 14.9 | 2.13 | 1.65 | 0.762 | 0.468 | 0.324 | 0.305 |
最大値[kha] | 30.8 | 14.9 | 2.9 | 3.25 | 0.88 | 1.15 | 1.01 | 0.453 |
前年比[%] | 1.19 | 0.6757 | 5.97 | 3.125 | 1.33 | -1.474 | -0.6135 | -3.481 |
全体比[%] | 100 | 58.43 | 8.353 | 6.471 | 2.988 | 1.835 | 1.271 | 1.196 |
これまでの推移


詳細なデータとグラフ
玉ねぎについての推移と展望
玉ねぎ(たまねぎ)は、日本の食卓に欠かせない基本野菜の一つであり、加工品や業務用需要も高い重要作物です。本章では、日本の玉ねぎ栽培の歴史的推移、地域分布の特徴、現在抱える課題、そして今後の見通しについて、統計データに基づいて分析します。
長期的な栽培面積の推移(1973年~2023年)
1973年以降、日本における玉ねぎ栽培面積は増減を繰り返しながら推移してきました。近年では、機械化の進展や気候変動への対応が進む一方、高齢化や労働力不足といった構造的問題も顕在化しています。2023年時点での全国栽培面積は25.5千haで、前年から1.19%の増加を示しました。
主要産地の特徴と役割
北海道(14.9千ha、全国比58.43%)
日本の玉ねぎ生産の中核を担う北海道は、冷涼な気候と大規模農業経営が特徴です。機械化率が高く、収穫後の貯蔵・物流インフラも整っています。前年比0.6757%増と安定した伸びを見せており、今後も供給の主軸であり続けると見られます。
佐賀県(2.13千ha、全国比8.353%)
温暖な気候を活かし、春作型の玉ねぎ栽培で知られる佐賀県。前年比5.97%増という顕著な成長を見せており、需要増加に応じた拡大の意欲がうかがえます。
兵庫県(1.65千ha、全国比6.471%)
瀬戸内気候を活かし、良質な玉ねぎを安定的に生産している兵庫県も前年比3.125%増と堅調な伸びを示しています。都市近郊での供給力が高く、京阪神地域への供給源として重要です。
長崎県(0.762千ha、全国比2.988%)
温暖な環境を利用し、冬季栽培を中心とする長崎県は、1.33%増で緩やかな伸び。施設栽培など高付加価値型への転換も進行中です。
愛知県(0.468千ha、全国比1.835%)
前年比-1.474%と微減傾向。都市圏に近く、土地の制約や他作物との競合が背景と考えられます。今後は収益性と生産効率の両立が課題です。
静岡県(0.324千ha、全国比1.271%)
前年比-0.6135%と微減。地域的には茶やみかんなどとの作付け競合があり、玉ねぎ生産は限定的です。
熊本県(0.305千ha、全国比1.196%)
前年比-3.481%とやや大きな減少が見られます。自然災害や市場価格の不安定さが要因として考えられます。
課題と問題点
高齢化と後継者不足
主要産地でも高齢化が進んでおり、後継者不足が深刻化しています。特に中小規模経営体では労働力確保が困難で、耕作放棄地の増加も懸念されます。
天候不順と病害虫
近年は気候変動の影響により、収穫期の集中や病害虫の拡大が生じており、安定供給が難しくなっています。
市場価格の乱高下
需給バランスの微妙な変化が価格に大きく影響するため、生産者の経営安定性が低下しています。
今後の展望と政策提言
北海道型大規模経営の全国展開
北海道のような機械化・大規模経営モデルを他地域でも導入することで、労働力不足への対応と生産性向上が期待できます。
新品種の導入と環境対応
病害虫に強く、収穫時期のずらしが可能な品種開発の導入により、リスク分散と市場価格の安定が可能となります。
貯蔵・加工インフラの整備
貯蔵性を高め、通年出荷体制を整えることで、価格の安定化とフードロス削減に寄与します。
産地リレーと国内自給率向上
北海道の主力シーズンと、九州・西日本の早出し栽培との「産地リレー」により、国内自給率の安定維持が図られます。
まとめ
玉ねぎ栽培は、北海道の圧倒的シェアを筆頭に、各地で特色ある生産が行われています。今後は、気候変動と労働力不足への対応が鍵を握る一方、技術革新や品種改良、物流強化が課題解決の道筋となります。国・自治体・農業団体が連携し、持続可能な玉ねぎ栽培の確立が求められています。
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