無職世帯の肉類支出の推移と都市別特徴｜家計調査データから考察

家計調査によると、2025年3月時点で無職世帯の肉類支出は平均7,060円。大都市では7,736円と最も高く、小都市では6,700円台と差がある。全体的に前年同期比で減少傾向がみられるが、小都市Bでは5.4%増と異なる動きも。本稿では、無職世帯の肉類消費の歴史的推移、都市ごとの消費差、背景にある経済的・社会的要因を分析し、今後の展望も詳述する。

家計調査の2025年3月時点の最新データによれば、無職世帯の1か月あたりの肉類支出は全国平均で7,060円。大都市では7,736円と高く、小都市Bでは6,709円と最も低い水準にある。全体の構造を見ると、都市の規模が大きいほど肉類支出が高く、小規模都市では支出額が控えめであることが分かる。

この格差は一見、地域の物価や所得差とも一致するが、詳細にはそれ以上の要因が存在していると考えられる。

支出の減少傾向とその要因

前年同期比で見ると、全国平均は-2.434%、中都市は-7.613%、大都市も-0.642%と、全体的に無職世帯における肉類支出は減少傾向にある。特に中都市での減少率が顕著であり、無職世帯にとって肉類が相対的に負担になってきている可能性がある。

背景には以下の要因が考えられる：

• 高齢化と食生活の変化：高齢の無職世帯では、健康志向の高まりから脂質の多い肉類の摂取を控える傾向がある。

• 年金生活による可処分所得の制約：物価上昇が続く中、肉類の価格も上昇しており、支出が抑えられる。

• 社会的孤立や調理機会の減少：一人暮らしの高齢者世帯では、肉を調理する機会自体が減っている。

都市別比較に見る構造的特徴

都市別に見ると、大都市では比較的肉類支出が高い。これは以下のような構造が背景にある：

• 外食依存度の違い：大都市では中食・外食が多く、加工済みの肉料理に支出することが多い。

• 食品価格の高止まり：スーパーや食材の価格が高く、同じ量の肉でも支出額がかさむ。

• 都市部特有の高齢者のライフスタイル：都市では活動的な高齢者が多く、栄養価の高い肉類を重視する傾向も見られる。

一方で、小都市Bでは前年同期比で+5.454%と肉類支出が増加しており、これは例外的な動きである。考えられる背景は、

• 地元産肉の価格安定による購買意欲の継続

• 地元スーパーのキャンペーンやセールなどによる需要喚起

• 高齢者世帯への地域的な支援策や配食サービスの充実

などが挙げられる。

世代間での肉類需要の違いと影響

同じ無職世帯でも、「若年リタイア世帯」（60代前半）と「後期高齢者世帯」（75歳以上）では、肉類に対する支出姿勢は異なる。

• 若年リタイア層は、まだ活動的で健康への意識も高く、筋肉維持などの観点からたんぱく源としての肉類消費を重視。

• 後期高齢者層では、歯の健康や咀嚼力の問題、胃腸の負担などから肉類を避ける傾向が顕著。

これにより、高齢化が進む地域ほど肉類消費は減少する傾向が強くなると予測される。

今後の推移予測と政策的な示唆

今後の無職世帯における肉類支出は以下の2つのシナリオで分岐すると考えられる。

• シナリオA（減少継続）：高齢化と可処分所得の減少、健康志向の高まりから、さらに肉類支出は減少へ。

• シナリオB（緩やかな回復）：高齢者向けのたんぱく質摂取推進政策や、新たな「やわらか肉製品」などの商品開発により支出が回復する可能性。

特に、医療費抑制や健康寿命延伸の観点から、国や自治体が高齢者向けのたんぱく質摂取支援を行うことで、肉類への支出が一定程度下支えされる可能性がある。

まとめ：地域性と世代性を踏まえた食生活支援が必要

無職世帯における肉類消費は、都市の規模、地域の物価水準、そして世代ごとの食生活習慣や健康状態に大きく左右されている。全体としては減少傾向にあるが、一部地域での増加も見られ、均一な動きではない。

今後は、都市の特性に応じた高齢者食生活支援や、肉類の摂取を促す健康教育、さらには家計負担を軽減する価格対策など、多角的な施策が求められるだろう。