2020年11月から2025年3月までの家計調査によると、無職世帯の経常消費支出の全国平均は20.95万円。最も高いのは大都市(21.21万円)で、最も低いのは小都市A(20.59万円)だったが、増加率では小都市B(+20.03%)や小都市A(+10.28%)の伸びが顕著。一方、大都市はわずか+0.203%にとどまり、消費の停滞が見られる。無職世帯における物価変動、都市構造の違い、世代間の消費性向などを踏まえ、今後の経常消費支出の動向について解説する。
経常消費支出の家計調査結果
経常消費支出の多い都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | |
---|---|---|---|---|---|
名称 | 全国 | 大都市 | 小都市B | 中都市 | 小都市A |
最新値[万円] | 20.95 | 21.21 | 21.18 | 20.89 | 20.59 |
前年月同比[%] | +6.432 | +0.203 | +20.03 | +3.711 | +10.28 |
経常消費支出の少ない都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | |
---|---|---|---|---|---|
名称 | 全国 | 小都市A | 中都市 | 小都市B | 大都市 |
最新値[万円] | 20.95 | 20.59 | 20.89 | 21.18 | 21.21 |
前年月同比[%] | +6.432 | +10.28 | +3.711 | +20.03 | +0.203 |
これまでの経常消費支出の推移


詳細なデータとグラフ
経常消費支出の現状と今後
経常消費支出とは、食費・住居費・光熱費・保健医療費など日常生活を維持するための定常的な支出を指します。収入が年金や貯蓄に依存する無職世帯にとっては、この支出が家計の維持における中心的な指標となります。
無職世帯の経常消費支出の全国的動向(2020年11月〜2025年3月)
最新の全国平均は20.95万円とされ、生活必需品を中心とした消費の安定性がうかがえます。しかし、その安定の背後にはインフレや公共料金の上昇、医療費負担の増加といった構造的な問題も存在します。
都市間の支出の差と背景要因
-
大都市(21.21万円/+0.203%)支出は最も高いが、前年からの増加率はわずか。物価や家賃水準は高いが、年金や医療福祉の整備が進んでおり、節約志向が強まっていることが影響。
-
小都市B(21.18万円/+20.03%)大幅な増加が特徴。インフレやエネルギー価格の上昇が支出に直結。地方でも公共料金や医療費の負担増が重くのしかかっていると考えられる。
-
中都市(20.89万円/+3.711%)平均的な支出だが、増加率は緩やか。都市機能と生活コストのバランスが取れており、持続可能な生活水準が維持されている。
-
小都市A(20.59万円/+10.28%)支出額は最も低いが、前年からの増加率は2桁。高齢化の進展により、医療・介護関連支出が増加している可能性がある。
世代間の特徴と消費行動
無職世帯の大半は高齢者層であり、特に75歳以上の「後期高齢者」は医療・介護支出が突出しています。また、いわゆる「団塊世代」が年金生活に入り消費が安定期から減退期に向かっており、「生活防衛意識」が強まっているとされます。食費や交際費などの可処分的支出は抑えられる傾向にあります。
増加率の背景にある社会的・経済的要因
特に小都市での支出増は、以下のような複合的要因が絡んでいます。
-
地方の公共料金・医療費の上昇
-
物価の全国的上昇(特に食品とエネルギー)
-
生活支援制度の地域格差
-
公共交通・インフラの不足による代替手段への支出
大都市では支出が高止まりする一方、これ以上の消費拡大余地が少ないことも見逃せません。
今後の推移と政策的課題
今後の支出傾向の予測
-
物価の上昇が続く限り、小都市を中心に経常消費支出は増加基調が続くと予測されます。
-
一方で、大都市では支出が横ばいかやや減少し、格差が縮まる可能性があります。
政策上の留意点
-
医療・介護支援の均質化
-
エネルギー負担軽減策(地方ほど恩恵が必要)
-
年金支給水準と物価上昇率の乖離問題の是正
-
デジタル化による支出抑制(オンライン診療、家計管理アプリ等の活用)
結語
無職世帯の経常消費支出は、生活維持の核心的な指標であり、都市別の違いや変化の背景を丁寧に読み解くことで、高齢社会における政策設計や生活支援の方向性が見えてきます。今後も、都市構造や医療制度、物価変動などの外部要因に左右されながらも、無職世帯の消費行動は堅実性を保ちながら漸進的に変化していくと予想されます。
コメント