2018年以降の家計調査から、無職世帯の保健医療支出は全体で減少傾向にあり、特に大都市での減少が顕著です。背景には高齢者の受診行動変化、医療制度改革、物価変動が影響しています。小都市では比較的安定しているものの、将来的には高齢化の進行により再び医療支出の増加が見込まれます。地域・世代間での格差や制度対応の重要性も浮き彫りになっています。
保健医療(無職)の家計調査結果
保健医療(無職)の多い都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | |
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名称 | 平均 | 大都市 | 中都市 | 全国 | 小都市A | 小都市B |
最新値[万円] | 1.554 | 1.672 | 1.597 | 1.569 | 1.532 | 1.399 |
前年月同比[%] | -17.09 | -35.37 | -13.78 | -18.81 | -7.698 | +4.497 |
保健医療(無職)の少ない都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | |
---|---|---|---|---|---|---|
名称 | 平均 | 小都市B | 小都市A | 全国 | 中都市 | 大都市 |
最新値[万円] | 1.554 | 1.399 | 1.532 | 1.569 | 1.597 | 1.672 |
前年月同比[%] | -17.09 | +4.497 | -7.698 | -18.81 | -13.78 | -35.37 |
これまでの保健医療(無職)の推移


詳細なデータとグラフ
保健医療(無職)の保健医療現状と今後
保健医療費は、医療機関への受診、薬局での購入、保険診療外の治療など、世帯が医療に関連して支出する費用全般を指します。無職世帯における保健医療費は、多くが年金生活を送る高齢者世帯であり、医療ニーズが高い点が特徴です。
直近の数値概要と都市別傾向
2025年3月時点での全国平均の無職世帯における保健医療費は1.554万円であり、前年同期から18.81%の減少が見られました。都市別に見ると以下の通りです:
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大都市:1.672万円(前年比 -35.37%)
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中都市:1.597万円(前年比 -13.78%)
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全国平均:1.569万円(前年比 -18.81%)
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小都市A:1.532万円(前年比 -7.698%)
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小都市B:1.399万円(前年比 +4.497%)
大都市の大幅な下落が目立ち、他地域に比べて急激な変動があることが分かります。
これまでの動向と背景
高齢者の医療需要と生活行動の変化
無職世帯の大多数を占める高齢者は、定期的な通院・服薬が多く、医療支出が高い傾向にあります。しかし、新型コロナ以降、感染リスクを避けるための受診控えや、オンライン診療の普及により医療機関へのアクセス方法が変わり、支出も抑制傾向に転じました。
医療制度改革と負担割合の見直し
後期高齢者医療制度の見直しにより、1定所得以上の高齢者の医療費負担割合が1割から2割へ引き上げられました。これにより、高齢者自身が医療支出を抑える傾向が強まったと考えられます。
大都市圏の変動要因
大都市での大幅減少は、医療施設へのアクセスが良いことによる集中受診の1巡や、再編による通院制限、また物価高騰に伴う家計の全体的な節約意識も影響しています。
都市間・世代間の特徴
都市間の特徴
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大都市:医療機関は多いが、急速な高齢化や住民の健康意識変化により受診が控えめに。
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中都市・小都市:医療機関が限られるため、必要性の高い場合に集中して医療を利用する傾向。
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小都市Bでの増加:地元密着型医療機関の利用促進や、自治体による無料健診の充実が影響した可能性。
世代間の特徴
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前期高齢者(65〜74歳):活動的で予防医療意識が高い1方、出費には慎重。
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後期高齢者(75歳以上):慢性疾患の管理により安定的な支出傾向。
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無職中年層(50〜64歳):失業や早期退職などにより保険外医療への支出が抑えられることも。
今後の推移予測
短期的には横ばいか微減傾向
2025年時点の下落傾向は、医療需要の1時的な抑制や生活防衛意識により今後も継続する可能性が高いと見られます。特に高齢者自身の「通院節約」が影響します。
中長期的には再び増加へ
団塊世代が80代に突入し、医療ニーズがさらに高まること、加えて認知症や複数疾患への対応などが必要となるため、2040年頃までに再び増加基調へ転じることが予想されます。
自治体間の格差拡大の懸念
地方によっては医療資源の偏在、交通アクセスの悪化、高齢単身世帯の増加が支出をさらに複雑にします。今後は自治体レベルでの医療・福祉政策が医療費に強く影響する時代になるでしょう。
課題と政策的対応の必要性
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受診控えによる健康リスク 短期的な医療費減少が健康悪化を招き、結果として将来の医療費を押し上げる懸念。
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医療と介護の連携強化 高齢者世帯では、医療・介護の連動性が重要。これを支える「地域包括ケアシステム」の充実が不可欠。
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医療アクセスの公平性確保 都市部と地方、富裕層と貧困層の間で受診格差が広がらないよう、オンライン診療の制度化やモバイルクリニックの普及がカギ。
まとめ
無職世帯の保健医療費は、1見減少傾向に見えるものの、その背景には高齢者の慎重な受診行動や制度変更があり、実質的な健康状態や医療への需要は依然として高い状況です。これからの政策設計には、都市ごとの実態把握と、年齢層ごとのニーズの的確な把握が不可欠です。中長期的な視野に立った医療費抑制と健康維持の両立が求められる時代に突入しています。
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