2018年から2025年3月までの家計調査によると、無職世帯の設備修繕・維持費に大きな都市間格差が見られる。最新データでは全国平均8569円に対し、小都市Aが11070円で最多、一方で大都市は5668円と大幅に減少。地域や世代による持ち家率や老朽化の度合いが影響している。高齢化の進展や持ち家のメンテナンス需要により、今後さらに地域ごとの格差が広がる可能性がある。
設備修繕・維持の家計調査結果
設備修繕・維持の多い都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | |
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名称 | 全国 | 小都市A | 中都市 | 小都市B | 大都市 |
最新値[円] | 8569 | 11070 | 9349 | 8122 | 5668 |
前年月同比[%] | -14.63 | +71.65 | +18.36 | -24.22 | -62.86 |
設備修繕・維持の少ない都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | |
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名称 | 全国 | 大都市 | 小都市B | 中都市 | 小都市A |
最新値[円] | 8569 | 5668 | 8122 | 9349 | 11070 |
前年月同比[%] | -14.63 | -62.86 | -24.22 | +18.36 | +71.65 |
これまでの設備修繕・維持の推移


詳細なデータとグラフ
設備修繕・維持の現状と今後
無職世帯、特に高齢者を中心とした家庭では、住まいにかかる支出の中でも「設備修繕・維持費」は長期的な生活の安定に直結する重要項目です。収入が年金などに限られる中で、修繕や維持にどれだけ資金を投じられるかは、居住環境の質や健康リスクにも影響します。
全国平均と都市規模別の現状
2025年3月時点での全国平均は8569円ですが、都市別に見ると小都市Aが11070円と最も高く、次いで中都市(9349円)、小都市B(8122円)、大都市(5668円)と続きます。特筆すべきは、大都市の急減(-62.86%)と小都市Aの急増(+71.65%)です。この数値の変動は、単なる景気や価格の変化ではなく、都市構造や住民の世代的な属性が反映されたものと考えられます。
都市間の構造的な違いと背景
大都市(5668円、-62.86%)
大都市ではマンションなど集合住宅の比率が高く、共用部分の修繕が管理費に含まれているため、個人での修繕支出が相対的に少ない傾向にあります。また、賃貸率も高いため、修繕義務は大家側にあることが多く、世帯としての支出は減少します。特に近年では、高齢者の賃貸志向が進み、修繕を行わない選択をする例も増えています。
小都市A(11070円、+71.65%)
逆に小都市Aでは持ち家比率が非常に高く、しかも築年数の古い住宅が多いことから、設備の更新や修繕が避けられません。近年は団塊世代の住宅が築40年を超え、トイレや水回りなどのリフォーム需要が一気に噴き出した可能性があります。また、行政の助成金やリフォーム支援制度が一部で導入された結果、修繕が進んだという側面も考えられます。
小都市B(8122円、-24.22%)
小都市Bでは前年より支出が減っており、これは経済的な余裕の欠如や、修繕の先延ばしが影響している可能性があります。地方の中でも人口減少が著しい地域では、住居の老朽化が進んでも「どうせ住み手がいない」という意識から、修繕を諦める傾向も見られます。
中都市(9349円、+18.36%)
中都市では比較的バランスの取れた支出となっており、支援制度の活用や住民の高齢化に応じたリフォーム需要の増加が背景と考えられます。高齢者住宅改修補助制度なども着実に浸透しつつあり、計画的な修繕が行われている地域もあります。
世代間・住宅形態の違い
無職世帯=主に高齢者世帯では、「持ち家か賃貸か」「一戸建てか集合住宅か」によって修繕維持費の傾向が大きく分かれます。若い世代が都市部に流出し、高齢者だけが残る地方では、空き家化や老朽化が深刻化し、定期的な修繕なしに生活を続けることもあります。一方で、資産としての住宅を保全しようという意識の高い世帯では、逆に大きな修繕投資を行うケースもあります。
今後の予測と政策的課題
今後、日本全体で高齢者単身世帯の増加が見込まれる中、住宅の設備修繕・維持に関する支出は二極化する可能性が高いと考えられます。以下のような傾向が予想されます:
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修繕をあきらめる世帯が増え、居住環境の悪化による健康リスクが深刻化。
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一方で、計画的な修繕やバリアフリー化に取り組む世帯では支出がさらに増大。
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空き家対策としての強制的な修繕命令や補助制度の強化が国や自治体レベルで求められる。
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住宅のライフサイクル管理のためのデジタル化や予算制度の導入が期待される。
結語
設備修繕・維持費は、単なる支出項目ではなく、生活の質そのものを左右する要素です。無職世帯にとっては、「修繕する余力があるかどうか」がそのまま「安心して暮らせるかどうか」に直結します。今後、地域・世代・住宅形態に応じた柔軟な支援策と、生活者の意識変容が同時に求められる局面に入ってきたといえるでしょう。
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