無職世帯の住宅ローン有・平均畳数の都市別傾向と今後の課題分析

世帯・住宅



2020年~2025年の家計調査では、無職世帯の住宅ローン有の平均畳数は40.6畳。大都市と小都市Aでは広めの住宅が増加し、中都市と小都市Bでは縮小傾向が見られた。広い家に住む退職世代の存在が平均を押し上げており、今後は住宅ローンの返済困難リスクや都市間格差の拡大が課題となる。

平均畳数(住宅ローン有)の家計調査結果

平均畳数(住宅ローン有)の多い都市

2025年3月 1 2 3 4
名称 全国 小都市A 大都市 中都市 小都市B
最新値[畳] 40.6 43.1 41.9 37.3 37
前年月同比[%] +7.124 +12.83 +19.03 -6.281 -5.128

平均畳数(住宅ローン有)の少ない都市

2025年3月 1 2 3 4
名称 全国 小都市B 中都市 大都市 小都市A
最新値[畳] 40.6 37 37.3 41.9 43.1
前年月同比[%] +7.124 -5.128 -6.281 +19.03 +12.83

 

これまでの平均畳数(住宅ローン有)の推移

平均畳数(住宅ローン有)の推移
最新のデータ

 

詳細なデータとグラフ

 

平均畳数(住宅ローン有)の現状と今後

2020年11月から2025年3月までの家計調査によると、無職世帯(住宅ローン有)の平均畳数全国平均40.6畳。これは、就労世帯と比較しても意外に広い印象を与えますが、背景にはさまざまな経済的・地域的事情があります。

都市別の最新データ:

都市区分 平均畳数 前年同期比
小都市A 43.1畳 +12.83%
大都市 41.9畳 +19.03%
中都市 37.3畳 -6.281%
小都市B 37.0畳 -5.128%

都市によって大きなばらつきがあり、特に中都市と小都市Bでのマイナス成長が目立つ一方で、大都市と小都市Aでは急激な畳数の増加が見られます。


住宅ローンと無職状態の関係性

一見して矛盾を感じるかもしれませんが、無職世帯であっても住宅ローンを抱えている世帯は一定数存在します。その大半は「定年退職後もローン返済が続いている」ケースや、「早期退職・病気退職後の返済継続」といった背景を持ちます。

特に2000年代に長期ローン(35年ローンなど)を組んだ世代が、今まさにローン返済期に無職になっている構図です。この層が広めの住宅を購入していたことが、全国平均40.6畳という結果に直結しています。


都市間の構造的な違いと増減要因

小都市A(43.1畳/+12.83%)

地価が安く、広い土地を確保しやすい地域では、無職となっても広めの住宅を手放さずに維持する傾向が強いです。前年からの増加は、若年世帯からの持家相続や親族からの名義移転(名目上の無職化)なども影響している可能性があります。

大都市(41.9畳/+19.03%)

驚くべき増加率である+19.03%は、リタイア後に郊外型大型マンションなどへ転居し、なおかつ住宅ローンを抱える世帯が含まれていることを示唆しています。都市部で「広めの住居を持つ無職世帯」の増加は、資産所得層の存在や、持家比率の上昇とも関係していそうです。

中都市・小都市B(それぞれ-6.281%、-5.128%)

この2地域では持家面積が減少しています。老朽住宅の解体・建て替えの見送り、子世代の転出による住環境の縮小、また住宅ローン返済困難による売却やリースバック(持家扱いだが面積縮小)の影響が考えられます。


世代間の住宅戦略の違い

団塊世代・高度成長期型

この層は、定年までの収入をベースに広めの家を購入し、ローンを長期にわたり抱え続けている傾向があります。退職後も生活スタイルを変えず、広めの住宅に住み続けていることが多いため、無職でありながら「広い持家・ローン有」という世帯を形成します。

ポスト団塊・団塊ジュニア世代

この世代では、生活費の効率化志向が強く、住宅面積はやや抑え気味。さらに都市部志向も高く、広さより利便性を重視するため、畳数が相対的に低めです。


今後の推移とリスク予測

今後の展望としては、以下のようなトレンドが予測されます:

  • 都市部(特に大都市)では、広め住宅に住む無職層が一時的に増加:資産を活用した転居や二拠点生活志向の高まりが背景。

  • 中小都市では縮小傾向が継続:人口減、相続放棄、空き家の売却等が進行。

  • 住宅ローン問題の顕在化:無職状態でのローン支払い困難化により、賃貸転換や物件売却が増加するリスク。

これらの流れのなかで、特に「ローン付きの広い持家を維持し続ける世帯の生活困窮化」が今後の大きな社会課題となるでしょう。


政策提言と今後の注目点

行政にとっては、以下のような政策対応が今後必要になると考えられます。

  • 高齢者向け住宅ローン返済支援制度の強化

  • 空き家活用政策のさらなる推進(特に中小都市)

  • 持家であっても、住み替えやリバースモーゲージ利用の促進

また、調査に基づく地域ごとの住宅政策立案が、住宅の質や広さの適正化につながると期待されます。

 

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