無職世帯における住宅ローン返済中の世帯は全国平均で3.1%と少数派ですが、大都市では4.4%と比較的高い水準にあります。これは、早期退職や定年後も住宅ローンが残っている世帯が都市部に集中しているためです。小都市では持家率が高くローン完済世帯が多い一方、ローン支払い中の割合は低下傾向にあります。今後、退職時点でローン完済できない層の増加が見込まれ、老後の生活不安が社会課題として顕在化していくと予測されます。
住宅ローンを支払う世帯の家計調査結果
住宅ローンを支払う世帯の多い都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | |
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名称 | 全国 | 大都市 | 小都市A | 中都市 | 小都市B |
最新値[%] | 3.1 | 4.4 | 3.3 | 2.9 | 0.8 |
前年月同比[%] | -3.125 | +37.5 | -29.79 | +3.571 | -60 |
住宅ローンを支払う世帯の少ない都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | |
---|---|---|---|---|---|
名称 | 全国 | 小都市B | 中都市 | 小都市A | 大都市 |
最新値[%] | 3.1 | 0.8 | 2.9 | 3.3 | 4.4 |
前年月同比[%] | -3.125 | -60 | +3.571 | -29.79 | +37.5 |
これまでの住宅ローンを支払う世帯の推移


詳細なデータとグラフ
住宅ローンを支払う世帯の現状と今後
日本では住宅ローンは現役世代が支払うものであり、無職世帯、特に年金生活者のローン支払い率は極めて低いのが一般的です。しかし、近年の家計調査データから、退職後も住宅ローンの返済が残っている世帯が一定数存在する実態が明らかになっています。2025年3月時点での全国平均は3.1%、大都市においては4.4%に達しており、これは無視できない生活リスクの指標でもあります。
地域別の特徴
大都市(4.4%)
最も高い割合を示しているのが大都市です。前年同期比でも+37.5%と急増しており、都市部における住宅価格の高さや、現役時代のローン返済開始が遅かった層の存在が背景にあります。また、都市部では定年後も再雇用やパートタイムなどで収入を得ながらローンを継続する世帯も多く、無職と分類されながらも何らかの収入源を持つケースが含まれている可能性があります。
小都市A(3.3%)・中都市(2.9%)
この2地域は持家率が高く、定年前にローンを完済する傾向が強いため、ローンを支払う無職世帯の割合はやや低めです。小都市Aでは前年から約30%の減少、中都市では微増となっており、全体としては安定的または減少傾向です。
小都市B(0.8%)
際立って低い数字を示しているのが小都市Bであり、前年から60%もの大幅減少が見られます。これは住宅取得費が低いため早期完済が可能な点や、無職になった段階で支払いが終了している世帯が多い点が背景にあります。
世代間の違い
無職世帯の多くは団塊の世代以降の高齢者で構成されており、住宅購入時期が昭和~平成初期であったため、比較的安価な土地・住宅を長期ローンで購入し、定年前に完済できた世帯が多数です。
しかし近年、住宅取得年齢の高齢化や住宅ローン期間の長期化(35年ローンなど)により、ローン完済年齢が定年以降にずれ込むケースが増えています。これにより、今後は無職世帯におけるローン支払い継続世帯の割合が増加する可能性があります。
問題点と社会的影響
退職後も住宅ローンが残ることは、年金収入だけでは返済が困難な状況を生み出し、生活保護の申請や金融機関とのトラブル、リバースモーゲージへの依存などの問題を引き起こします。さらに、持家を失うリスクが高まることで老後の住まいの不安が深刻化します。
また、都市部に集中するという傾向から、地域格差の拡大も問題です。都市部で住宅を購入する層は多額のローンを組まざるを得ない一方で、所得の伸び悩みや雇用の不安定化により、ローン完済が困難になるリスクも大きくなっています。
今後の推移と予測
以下のような要因により、今後も無職世帯におけるローン支払い率は注視すべき水準にとどまると予想されます:
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平均住宅取得年齢の上昇:ローン開始が遅くなれば退職時点での未返済残高が多くなる
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住宅価格の高止まり:特に都市部では物件価格が高く、完済までの期間が長期化
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収入減少への備えの不足:再雇用や副収入が途絶えた場合、返済不能に陥るリスク
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政策的対応の必要性:高齢者向けローン見直し、家計相談体制の強化など
まとめ
無職世帯の住宅ローン支払い世帯の存在は少数とはいえ、老後の住宅不安を象徴する現象です。特に都市部を中心にその割合は高く、今後の高齢化社会ではさらに増加する可能性もあります。住宅取得計画の見直し、ローン設計の工夫、そして行政支援の強化が急務といえるでしょう。住宅ローンが「現役世代だけの問題」ではないという現実に目を向ける時期に来ています。
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