家計調査によれば、無職世帯のクレジット返済額は地域によって大きく異なり、小都市Aでは前年比+24%と急増。一方で大都市はやや減少傾向。世代間の意識の違いもあり、今後は中小都市でのクレジット返済の増加と、高齢層への過剰与信リスクが課題となる。
クレジット返済の家計調査結果
クレジット返済の多い都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | |
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名称 | 全国 | 中都市 | 大都市 | 小都市A | 小都市B |
最新値[万円] | 4.446 | 4.834 | 4.565 | 4.386 | 3.599 |
前年月同比[%] | +7.824 | +6.48 | -2.663 | +24.21 | +13.56 |
クレジット返済の少ない都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | |
---|---|---|---|---|---|
名称 | 全国 | 小都市B | 小都市A | 大都市 | 中都市 |
最新値[万円] | 4.446 | 3.599 | 4.386 | 4.565 | 4.834 |
前年月同比[%] | +7.824 | +13.56 | +24.21 | -2.663 | +6.48 |
これまでのクレジット返済の推移


詳細なデータとグラフ
クレジット返済の現状と今後
無職世帯における「クレジット返済」は、単なる消費の指標にとどまらず、家計管理力や資金繰りの健全性を映す重要な指標です。今回の家計調査(2020年1月〜2025年3月)によると、全国平均のクレジット返済額は4.446万円。これは、無職世帯がクレジットカードや割賦契約による支払いに対して、毎月どれほどの金額を返済しているかを示しています。
都市別に見ると、クレジット返済の1世帯あたり平均額は以下の通りです:
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中都市:4.834万円(前年比+6.48%)
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大都市:4.565万円(前年比-2.663%)
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小都市A:4.386万円(前年比+24.21%)
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小都市B:3.599万円(前年比+13.56%)
このデータから、地域ごとの返済能力や支出習慣、金融への関わり方の違いがうかがえます。
クレジット返済の過去から現在までの変遷
かつて、特に無職世帯の中でクレジットカードを利用し、その後に返済負担を抱えるケースは限られていました。主な理由として:
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高齢層には「借金=悪」の価値観が根強かった
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所得のない生活では「返済を前提とする消費」自体が避けられていた
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分割払いやリボ払いに対する不信感
しかし、近年では生活インフラの一部としてのカード利用が進み、たとえば電気・ガス・ネット料金などをクレジットで支払うケースが一般化しました。それに伴い、「利用額が多い=返済額も一定の水準を保つ」構図が見られています。
さらに、スマートフォンの普及やECサイト利用増加も影響し、返済額が安定的に上昇する傾向が一部地域・世代で進行しています。
都市別のクレジット返済傾向の考察
今回のデータで最も注目すべきは小都市Aの前年比+24.21%という急増です。これは以下のような背景が考えられます:
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キャッシュレス対応の遅れていた地域でも一気にカード決済が普及
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地方住民の「後払い」への抵抗感が薄れた
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地元商業施設の販促活動により割賦販売が増えた
同様に、小都市Bでも+13.56%の増加。これは中小都市における生活スタイルの都市型化を示す一例です。
一方、大都市では金額は高いが、前年比では減少しています。これは以下の要因が考えられます:
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高齢者層が支出を抑制し、カード利用を見直している
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医療費や介護負担に資金を割き、自由消費が減少
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借入残高を減らすため、分割購入より現金・デビット志向へ移行
中都市は比較的バランスが取れており、返済額が最も高く、前年比でも+6.48%。これは「カード活用に慣れた層」が多い都市の特性を反映している可能性があります。
世代間の返済行動の違い
無職世帯といっても年齢層は幅広く、返済に対する考え方や行動は大きく異なります。
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70代後半〜80代:極力借入を避ける傾向。返済額は少ないが固定費はカード払いが主。
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60代前半〜70代前半:元会社員などでクレジット文化に慣れており、返済も計画的。
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50代後半の早期退職者など:消費活動が活発で、一定額のクレジット返済を受け入れている。
重要なのは、クレジット返済を「投資的消費」として捉える層が徐々に増えている点です。たとえば、健康維持のためのサブスクジム、教育講座への支出、孫へのプレゼント購入などです。これらは「老後の充実のための支出」であり、消極的な借金とは異なる文脈にあります。
今後の動向と懸念点
今後の返済動向予測
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小都市での返済額は今後も増加の可能性 生活様式の変化により、都市との格差が縮小する。
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大都市では横ばいか減少傾向が続く可能性 高齢化が進み、消費抑制と慎重な支出が継続。
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中都市がクレジット活用の「中核層」へ 都市型と地方型の中間として、返済額の安定性が今後も続く。
懸念される課題
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高齢者のリボ払い・過剰与信問題 理解不足による返済遅延やトラブルのリスクがある。
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相談体制の脆弱さ 自治体の消費生活センターの活用が重要だが、利用が進んでいない地域もある。
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「見えない家計苦」 表面的な返済額では見えにくいが、年金だけでは賄えないケースが潜在している。
まとめ
無職世帯におけるクレジット返済の動向は、単なる「支払い行動」ではなく、社会構造・都市化・世代交代といった複合的な要因と密接に関係しています。特に中小都市での返済額増加は、今後の高齢者消費のヒントとなりうる重要な変化です。今後もこの分野の動向を追い、「借りすぎず、賢く使う」クレジット文化の形成が求められる時代が訪れています。
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