2018年から2025年までの家計調査によると、無職世帯のエンゲル係数は全国平均で30.16%と高水準にあり、特に大都市では32.8%と最も高く上昇率も+13.49%と顕著です。これは物価高や可処分所得の圧迫を反映しており、都市間での生活格差も浮き彫りとなっています。本稿では都市別・世代別の特徴や今後の推移について解説します。
エンゲル係数(無職)の家計調査結果
エンゲル係数(無職)の多い都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | |
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名称 | 平均 | 大都市 | 全国 | 中都市 | 小都市A | 小都市B |
最新値[%] | 30.16 | 32.8 | 30.4 | 30.3 | 30 | 27.3 |
前年月同比[%] | +1.48 | +13.49 | +2.703 | +3.061 | -1.639 | -9.603 |
エンゲル係数(無職)の少ない都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | |
---|---|---|---|---|---|---|
名称 | 平均 | 小都市B | 小都市A | 中都市 | 全国 | 大都市 |
最新値[%] | 30.16 | 27.3 | 30 | 30.3 | 30.4 | 32.8 |
前年月同比[%] | +1.48 | -9.603 | -1.639 | +3.061 | +2.703 | +13.49 |
これまでのエンゲル係数(無職)の推移


詳細なデータとグラフ
エンゲル係数(無職)の食料費現状と今後
エンゲル係数は、可処分所得に占める食料費の割合を示す指標であり、生活水準を測る上で長年用いられてきました。特に収入が限られている無職世帯では、この指標が高いほど「生活に余裕がない」状態を意味します。2025年3月時点の平均値は30.16%と高水準で、収入に占める食費の比率が依然として大きいことが明らかです。
都市別に見るエンゲル係数の水準と推移
エンゲル係数の都市別の最新データは以下の通りです:
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大都市:32.8%(+13.49%)
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全国:30.4%(+2.703%)
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中都市:30.3%(+3.061%)
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小都市A:30.0%(-1.639%)
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小都市B:27.3%(-9.603%)
この数値からは、特に大都市での上昇が著しいことが分かります。これは、家賃や交通費など他の生活コストが高いため、可処分所得の圧縮によって相対的に食費の比重が増した可能性が高いと考えられます。
一方、小都市Bではエンゲル係数が低下していますが、これは一概に生活の余裕を意味するわけではなく、食費そのものの節約傾向、あるいは収入源の増加(例えば家族の支援)など、さまざまな要因が考えられます。
都市間の格差とその要因
大都市の高エンゲル係数の背景
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物価の高さ(特に生鮮品や外食)
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高齢単身世帯の増加による中食依存
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社会的孤立と健康志向の高まりによる質の高い食材志向
小都市での低下の可能性
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地産地消の利点による食材コストの低さ
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自家菜園や親族からの支援など非貨幣的資源の活用
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支出全体の縮小による食費比率の抑制
世代別特徴と生活スタイルの変化
無職世帯には、概ね65歳以上の高齢者が多く含まれますが、70代と80代以上では消費傾向に違いがあります。80代以上になると外出頻度が減り、自宅調理や宅食サービス利用が増える傾向が強くなります。結果として、支出の絶対額が減少しても、食費の比率が維持または上昇し、エンゲル係数が高止まりする可能性があります。
また、近年の高齢世帯では、健康維持のために高価な栄養食品やサプリメント、機能性食品に対する支出が増加し、「食費の質的上昇」が見られる点も注目に値します。
エンゲル係数の今後の推移予測
将来的に無職世帯のエンゲル係数がどのように推移するかを予測する際、以下の要因がカギを握ります:
上昇要因:
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食品価格の継続的な上昇(円安、燃料費、輸送コスト)
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公的年金の実質価値の目減り
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高齢単身世帯の増加と中食・宅配の需要拡大
低下要因:
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地方での自給自足的な生活の強化
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地方自治体による食料支援・配食サービスの普及
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支出そのものの抑制(質素志向の高齢者増)
特に大都市ではエンゲル係数がさらに上昇するリスクが高いとされ、一方で地方の小都市では今後も比較的低水準に抑えられる可能性があります。
政策的課題と支援のあり方
エンゲル係数が高止まりまたは上昇を続ける背景には、社会的セーフティネットの不十分さも影響しています。高齢の無職世帯に対しては、以下の支援策が急務です:
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所得に応じた食料品クーポン制度の導入
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高齢者向け宅配食サービスの公的補助
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地域包括ケアの一環としての栄養管理支援
また、統計上の「食費」の再定義(中食・宅配の内訳の明確化)も、実態をより正確に把握するためには必要とされます。
まとめ:数字に映る“生活の重み”をどう捉えるか
無職世帯にとってのエンゲル係数は、単なる経済指標ではなく、「生活の実感」を映す鏡です。特に大都市での急激な上昇は、生活の余裕を失いつつあることを如実に示しています。一方で、小都市では逆に抑制傾向が見られるなど、地域による“生活の耐え方”の差も浮かび上がります。今後は数字の背後にある生活実態に目を向けた施策が求められています。
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