無職世帯の「他の借金純減」都市別動向と今後の傾向を丁寧に解説

2018年から2025年3月までの家計調査によると、無職世帯の「他の借金純減」は都市ごとに大きな差が見られる。2025年3月時点で全国平均は155円だが、中都市は237円と突出し、前年同期比で-231.7%と大幅な悪化。一方、小都市Aのみが+42.42%の増加で、他は軒並み減少傾向にある。都市間の生活コストや金融事情、高齢化などが背景にあり、今後も地域差の拡大と高齢世帯の負担増が懸念される。

家計調査は、全国の世帯における収支や負債の実態を明らかにする重要な統計である。本稿では、2018年1月から2025年3月までのデータをもとに、無職世帯における「他の借金純減」（すなわち、借金の返済額から新たな借入額を差し引いた純減額）に着目し、これまでの動向と課題、地域・世代による特徴、そして今後の展望について章立てで解説する。

「他の借金純減」とは何か

「他の借金純減」とは、住宅ローンや車ローンなどの主要な借入を除く、消費者金融やカードローン、親族間貸借などの“その他”に分類される借金の返済動向を示す指標である。無職世帯においてこの数値は、生活資金を補う手段としての借入利用や、その返済圧力の大きさを如実に反映するものである。

全国平均と都市別の現状

2025年3月時点の全国平均は155円であるが、都市によるばらつきは大きい。とくに目を引くのは以下の点である：

• 中都市：237円（前年比 -231.7%）

• 小都市B：189円（前年比 -123.9%）

• 小都市A：141円（前年比 +42.42%）

• 大都市：52円（前年比 -48%）

このように、小都市Aを除き、他の地域では前年よりも大幅に借金の純減額が減少（つまり、借金の返済が鈍化あるいは借入が増加）している。

中都市での急減少の背景

中都市での-231.7%という急落は、無職世帯の財政状況が悪化していることを示している。中都市は地方圏に属することが多く、公共交通や医療・生活インフラが都市ほど整備されていないため、生活費や突発的支出を補うために借金依存が強まりやすい。加えて、地域金融機関の貸付姿勢が軟化していれば、借入自体はしやすくなるが、結果として返済負担の蓄積を招きやすい。

小都市Aの例外的増加

唯一、純減が増加したのが小都市Aである。前年同期比で+42.42%というのは、他都市と明確に異なる動向である。この背景には、以下のような可能性が考えられる：

• 自治体による生活支援制度や借金整理サポートが進んだ

• 地元金融機関が返済計画の見直しを推進

• 高齢者世帯が多く、相続や家族支援によって借金返済が進んだ

いずれにしても、社会保障や地域ネットワークの有無が、こうした数値に強く影響する。

大都市の低水準と鈍化の原因

大都市の52円という水準は、借金返済が進んでいるようにも見えるが、前年からは-48%と減少している。大都市では金融商品が多様である一方、生活コストが高く、無職世帯の資金繰りは常に厳しい。賃貸住宅の家賃負担や医療費の先払いなどにより、借金返済に回す余力が年々減少していると見られる。

世代別の傾向と特徴

無職世帯の多くは年金受給世帯である高齢者であり、固定収入が限られている。その一方で、介護・医療・住宅関連費が増大する傾向があり、借金の“純減”はますます困難となっている。特に70代後半以降では、返済能力よりも生活維持が優先されやすく、「返すより借りる」方向に傾きやすい。

今後の推移予測

将来的に「他の借金純減」は以下のような方向で推移すると予測される：

• 都市間格差の拡大：地方都市では支援不足が影響し返済が困難に。

• 高齢化の影響拡大：返済ではなく免除・整理の方向へ。

• 社会保障の支えがカギ：制度的な支援が進めば、純減は改善可能。

また、今後は「借金の質（借入先・利率）」の変化も、純減額に影響を与える可能性がある。たとえばフィンテックによる小口ローンの拡大なども、注視すべき変化の一つである。

おわりに

「他の借金純減」は、無職世帯にとって単なる家計指標ではなく、生存戦略や社会の安全網の実態を映す重要な鏡である。地域や世代、制度の在り方によって、その推移は大きく変わる。今後の政策形成においても、この数値が示す現実をしっかり受け止める必要があるだろう。