家計調査(2018年~2025年)によると、無職世帯における65歳以上の平均人員数は全国で1.7人と高水準にあり、日本の急速な高齢化と退職後の生活実態を浮き彫りにしています。地方では2人以上の高齢者が同居する世帯も多く、三世代同居や老老世帯が目立つ一方、大都市では単身または夫婦のみの高齢世帯が増加しています。今後は独居高齢者の増加が見込まれ、介護や見守り体制の整備が急務です。地域差への対応と高齢者福祉の再構築が重要な課題です。
65歳以上人員数の家計調査結果
65歳以上人員数の多い都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | |
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名称 | 全国 | 小都市B | 小都市A | 大都市 | 中都市 |
最新値[人] | 1.7 | 1.76 | 1.75 | 1.69 | 1.65 |
前年月同比[%] | -2.299 | -2.222 | +0.575 | -1.17 | -5.172 |
65歳以上人員数の少ない都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | |
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名称 | 全国 | 中都市 | 大都市 | 小都市A | 小都市B |
最新値[人] | 1.7 | 1.65 | 1.69 | 1.75 | 1.76 |
前年月同比[%] | -2.299 | -5.172 | -1.17 | +0.575 | -2.222 |
これまでの65歳以上人員数の推移


詳細なデータとグラフ
65歳以上人員数の現状と今後
日本は世界でも類を見ないスピードで高齢化が進んでおり、特に「無職世帯」における65歳以上の人員数の変化は、老後の生活の実態や社会的課題を把握する上で非常に重要な指標です。家計調査から得られるデータは、単なる年齢構成にとどまらず、介護、年金、医療、住宅政策まで幅広く影響を与えるものです。
2018年~2025年の推移と現状
調査期間中、無職世帯における65歳以上人員数は一貫して高い水準で推移し、最新の全国平均は1.7人に達しています。この数値は、無職世帯の多数が高齢者世帯であることを意味し、かつ夫婦や親族による同居形態が依然多いことを示しています。
また、2020年代に入って以降、後期高齢者(75歳以上)の割合が急増しており、老老介護や医療依存度の高い世帯が増えている点も注目すべき変化です。
都市間の違いと背景
都市別に見ると、東北・九州・中国地方などでは、1世帯あたり2人前後の65歳以上人員が見られる地域が多く、三世代同居や農村的な家族形態が根強く残っている傾向があります。
一方、東京・神奈川・大阪といった都市部では、1.3~1.5人程度と低めであり、単身高齢者や夫婦のみの核家族化が進行しています。これは都市部での住宅事情や高齢者の自立志向、あるいは子との別居傾向によるものと考えられます。
世代構成と生活の実態
「無職」とされる世帯は、その多くが65歳以上の年金生活者を含みます。中には夫婦ともに高齢かつ無職の「老老世帯」、あるいは単身で生活する「独居高齢者」も増えています。
老老世帯では、どちらか一方の介護が必要になるケースが多く、介護サービスや在宅医療の需要が年々高まっています。独居高齢者については、孤立や生活困窮、孤独死といった社会問題も深刻です。
今後の見通しと政策的課題
人口動態上、団塊世代が後期高齢者に突入し、2040年頃まで高齢者人口の増加傾向は続くとされています。無職世帯における65歳以上人員数も今後さらに上昇し、2人を超える世帯が一般的になる地域も出てくるでしょう。
同時に、都市部では単身世帯の割合が増え、介護・見守り体制の強化が不可欠となります。政府・自治体による地域包括ケアの強化や、近隣コミュニティによる高齢者支援体制の構築が求められます。
地域差に対する政策的アプローチ
高齢者が2人以上同居する地方では、家族介護への依存が強く、介護離職や女性の就業制限といった副次的な問題も発生しています。こうした地域には、介護サービスの拡充だけでなく、家族介護者への支援も重要です。
都市部においては、ICT(情報通信技術)を活用した見守りサービスや、高齢者の居住支援の強化が有効です。また、地域ごとのニーズに応じた柔軟な制度設計が求められています。
まとめ ― 高齢者と共に生きる社会の設計へ
無職世帯における65歳以上人員数の上昇は、避けられない社会的現象であり、それに伴う課題も多岐にわたります。特に都市と地方、高齢者の生活スタイルによる違いが拡大しており、画一的な対策では限界があります。
今後は、介護、医療、住居、所得支援を含めた包括的かつ地域に根差した高齢者支援政策が求められる時代に突入しています。日本社会全体が「高齢者と共に生きる社会」をどう設計するかが問われています。
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