日本の温室メロンの収穫量は2023年に15.5ktで、前年比-5.488%と減少傾向にあります。静岡県が全国の34.5%を占め最大の産地であり、愛知、茨城が続きます。高品質かつ高価格帯を維持する一方で、生産者の高齢化、温室設備の老朽化、需要の変化などが課題です。今後は、省力化技術やブランド戦略を活用し、観光農業や輸出との連携による付加価値向上が鍵となります。
野菜収穫量のデータとグラフ
温室メロン収穫量の最大と最新
全国 | 静岡 | 愛知 | 茨城 | 高知 | 千葉 | 島根 | 福井 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
最新 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2022年 | 2023年 | 2022年 | 2023年 |
最大期 | 1987年 | 1990年 | 1981年 | 2005年 | 1987年 | 1980年 | 2007年 | 2005年 |
最新値[kt] | 15.5 | 5.35 | 3.59 | 3.21 | 1.66 | 0.481 | 0.348 | 0.342 |
最大値[kt] | 44.9 | 20.1 | 15.4 | 4.88 | 8.94 | 1.52 | 0.435 | 0.494 |
前年比[%] | -5.488 | -6.469 | -8.418 | 0.3125 | -29.96 | -3.8 | 20.42 | -2.286 |
全体比[%] | 100 | 34.52 | 23.16 | 20.71 | 10.71 | 3.103 | 2.245 | 2.206 |
これまでの推移


詳細なデータとグラフ
温室メロンについての推移と展望
温室メロンは、ガラスやビニールの温室内で栽培される高級品種のメロンで、主に贈答用や高級果物市場で流通しています。「1株1果」栽培を基本とし、糖度・外観ともに高い品質管理が行われます。栽培には高度な技術と環境制御が求められ、一般の露地栽培メロンより生産コストが高い点が特徴です。
1973年からの収穫量の推移
1970年代から1990年代にかけては、高度成長期における贈答文化や百貨店需要に支えられ、温室メロンの需要と生産は拡大しました。しかし2000年代以降は、需要の縮小や流通形態の変化、高齢化などを背景に、生産量は長期的に減少傾向にあります。2023年には15.5ktとなり、前年比で-5.488%の減少を記録しています。
主要県別の収穫量と傾向(2023年)
■ 静岡県(5.35kt/全国比34.52%/前年比-6.469%)
日本の温室メロンの中心地。特にクラウンメロン(袋井・磐田地域)ブランドが有名で、贈答用として圧倒的な地位を築いています。施設技術も高度ですが、生産者の高齢化や後継者不足が深刻。前年比では6.5%減少。
■ 愛知県(3.59kt/23.16%/-8.418%)
かつては「温室メロン王国」とも呼ばれ、施設栽培技術が進んでいましたが、近年は都市化や栽培農家の高齢化で生産量が減少傾向。前年比8.4%減と大幅な落ち込み。
■ 茨城県(3.21kt/20.71%/+0.3125%)
露地メロンの印象が強いが、温室メロンも一定量生産しており、2023年はわずかに前年比増。生産拡大というよりは品質維持に注力している印象です。
■ 高知県(1.66kt/10.71%/-29.96%)
温暖な気候を活かした施設栽培が盛んだが、天候不順や設備投資の負担などにより前年比で3割近い大幅減少。施設更新が急務となっています。
■ 千葉県(0.481kt/3.103%/-3.8%)
東京都心への供給地として一定のニーズを持つが、規模は小さい。地産地消や観光農園との連携に期待がかかるも、やや減少。
■ 島根県(0.348kt/2.245%/+20.42%)
規模は小さいながらも、前年比+20%と大幅増加。地場ブランドの形成や地域振興との連動がうかがえます。
■ 福井県(0.342kt/2.206%/-2.286%)
安定的に小規模生産を継続。前年比では微減となっていますが、地元需要に支えられた堅実な経営が目立ちます。
温室メロンの課題と市場環境の変化
-
贈答需要の減少と単価維持の難しさ 贈答文化の衰退により、高価格帯のメロンに対する需要が減少。流通量を維持しながら単価を維持する難しさがある。
-
設備の老朽化と高コスト構造 温室・空調設備の更新費用が高額で、特に個人農家には負担が大きい。
-
生産者の高齢化と担い手不足 温室栽培は技術と経験を要するため、新規就農者の参入が難しい。
-
気候変動の影響 温室内で管理していても、異常気象による外気温の変動は栽培計画に影響を与える。
今後の展望と戦略
■ ブランド価値の再構築
「クラウンメロン」のような高級ブランドを維持しつつ、手頃な価格帯の商品も開発することで、幅広い層へのアプローチが重要。
■ ICTやAIを活用したスマート農業
温度・湿度・CO₂濃度を自動で管理できる施設導入により、省力化・省人化が進めば、後継者問題の一助に。
■ 観光農業との連携
体験型農園や直売所での消費喚起、収穫体験・メロン食べ放題ツアーなど、消費者と生産者を直接つなぐ取り組みが効果的。
■ 海外市場・インバウンドの活用
日本の高品質メロンは東アジアを中心に評価が高く、輸出促進や訪日外国人向け販売で市場拡大が期待される。
まとめ
温室メロンは日本の高級果物文化の象徴として、現在も一定の地位を保っています。主力県である静岡・愛知・茨城は、ブランド戦略と技術力で支えているものの、生産量の減少や人材難という構造的課題を抱えています。今後は、付加価値向上、省力化、地域連携の3軸を中心に、持続可能な形での継続が求められます。
コメント