梅干し1kgの全国平均価格は2025年4月時点で2,455円。高価格地域では福島や和歌山が突出し、品質志向や収量不安が価格上昇の背景にある。低価格帯では輸入品や量販品が中心で、価格差が拡大。今後は農業構造の課題や高付加価値商品の普及により、梅干し価格は緩やかな上昇が続きつつ、二極化も進むと予想される。
小売物価統計
梅干し小売りの高い都市
2025年4月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
名称 | 平均 | 福島 | 青森 | 熊本 | 奈良 | 川口 | 和歌山 | 富山 | 大阪 | 鹿児島 | 横浜 |
最新値[円] | 2455 | 3842 | 3517 | 3374 | 3353 | 3309 | 3195 | 3147 | 3115 | 3097 | 3040 |
前年同月比[%] | +1.939 | +28.41 | -2.657 | +8.628 | +7.64 | +14.58 | +11.01 | +8.182 | +1.864 | +18.3 | +11.07 |
梅干し小売りの安い都市
2025年4月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
名称 | 平均 | 盛岡 | 小山 | 津 | 府中 | 松江 | 郡山 | 熊谷 | 徳島 | さいたま | 福山 |
最新値[円] | 2455 | 1665 | 1797 | 1800 | 1812 | 1816 | 1853 | 1878 | 1893 | 1928 | 1951 |
前年同月比[%] | +1.939 | +1.524 | -4.16 | -0.552 | -48.3 | -4.32 | +8.047 | +2.399 | -3.369 | -7.619 | -6.695 |
梅干しの推移


詳細なデータとグラフ
梅干しの現状と今後
2014年から2025年4月までのデータを俯瞰すると、日本における梅干し1kgあたりの小売価格は高止まり傾向にあり、2025年4月の全国平均は2,455円に達しています。この11年で梅干しは、他の漬物と比較しても価格の高い食品として定着しつつあります。物価上昇全体の流れの中にあっても、梅干しの価格変動は地域ごとに顕著な差を示しており、そこに日本の農業構造と消費嗜好の複雑さが表れています。
高価格帯地域の特徴と背景
主な高価格地域とその価格(2025年4月)
-
福島:3,842円(+28.41%)
-
青森:3,517円(-2.657%)
-
熊本:3,374円(+8.628%)
-
奈良:3,353円(+7.64%)
-
和歌山:3,195円(+11.01%)
これらの地域には、以下のような共通背景が存在しています。
-
伝統的な梅干し文化と高品質志向 特に和歌山や奈良は梅の名産地であり、「南高梅」や「しそ漬け」といった高級ブランド品が中心。品質や味わいにこだわるため、原価も高く、小売価格にも反映されやすい。
-
地元加工業者の高付加価値化戦略 熊本や福島では、地場産品を活用した加工品として「贈答用」や「無添加・減塩」などのプレミアム商品が展開されており、単価を押し上げています。
-
生産・収穫量の変動と気象リスク 近年の異常気象(春先の霜害や大雨)により梅の収量が不安定となり、原材料費が上昇。特に2024年は1部の梅産地で不作となったことが、価格高騰の要因です。
低価格地域の特徴とその背景
主な低価格地域とその価格(2025年4月)
-
盛岡:1,665円(+1.524%)
-
小山:1,797円(-4.16%)
-
津:1,800円(-0.552%)
-
府中:1,812円(-48.3%)
-
松江:1,816円(-4.32%)
これらの地域では、以下のような傾向が見られます。
-
量販店向け商品や業務用の比率が高い 特に都市部近郊では、スーパーやディスカウントストアで取り扱われる梅干しは「外国産梅使用」や「調味梅干し」など、コストを抑えた商品が多く、価格が低く抑えられています。
-
国産志向が弱い市場特性 地元で梅の生産がない地域では「価格重視」の購買傾向が強く、安価な中国産原料などが流通している可能性があります。
-
大幅下落の異例ケース(府中) 府中のように前年比-48.3%という急激な下落は、調査対象商品の入れ替えや特売品の影響など、統計上の特殊事例である可能性も否定できません。
梅干し価格の構造的課題と問題点
梅干しの価格に影響を与えている構造的課題には、次のような点が挙げられます。
-
国産梅の生産縮小 主産地である和歌山県では農家の高齢化が進み、収穫量が年々減少。後継者不足により供給が安定しない。
-
健康志向と需要の変化 減塩ブームにより伝統的な「しょっぱい梅干し」の需要が減少し、「甘口」「蜂蜜漬け」など新商品へのシフトが進む1方、それらの製造にはコストがかかる。
-
輸入原料への依存とリスク 安価な中国産梅の輸入も1部で行われているが、為替変動や輸入制限のリスクが常に存在し、安定供給に課題。
-
包装・物流費の上昇 特にギフト用や個包装の梅干しは、見た目の価値を高めるための資材費が価格に反映される傾向が強い。
今後の価格展望と期待
今後の梅干しの小売価格は、以下のようなトレンドに左右されると考えられます。
-
緩やかな上昇傾向 農産物のコスト構造が変わらない限り、梅干し価格は年間1~3%の範囲で緩やかに上昇し続けると見込まれます。
-
価格2極化の進行 家庭用の安価な輸入品と、高級国産ブランドとの価格差がますます広がる見込み。贈答用・通販用の高価格帯商品が伸びる1方、ディスカウント品も1定の市場を維持。
-
ブランド力と産地の再編 和歌山・紀州など従来のブランド以外に、新たな産地ブランド(福島や熊本など)が台頭し、市場構造に変化が生じる可能性。
-
輸出やインバウンド需要の期待 梅干しが健康食品として海外でも注目されており、今後の輸出拡大や訪日観光客向けの需要も価格押上要因となる可能性があります。
コメント