日本の世帯支出における「旅費(ネット決済)」は、2025年4月時点で月間平均6.124万円と堅調な伸びを見せ、北海道や大都市で特に高水準となっています。利用世帯割合も6.234%に達し、地方での広がりも見えます。コロナ禍以降のオンライン決済旅行ニーズの高まりが背景にあり、今後は中都市や九州など出遅れている地域の伸びが期待されます。
家計調査結果
旅費(ネット決済)の相場
旅費(ネット決済)支出の世帯割合
旅費(ネット決済)の推移


詳細なデータとグラフ
旅費(ネット決済)の旅行関係費現状と今後
「旅費(ネット決済)」は、旅行関連費の中でも急速に拡大しているカテゴリの1つです。従来、旅行予約は対面や電話での申し込みが主流でしたが、スマートフォンの普及やオンライン予約サービスの進化により、ネット決済による旅費の支出はここ数年で急増しています。本稿では、2020年11月から2025年4月までのデータを基に、その傾向や地域差、今後の見通しについて解説します。
旅費(ネット決済)の支出動向
2025年4月時点における全国平均の月間支出は6.124万円。2020年代前半はコロナ禍で旅行自体が激減した時期もありましたが、社会経済活動の再開とともにこの支出項目は再び拡大しています。特に注目すべきは、前年同月比で+9.13%の増加が見られる点で、これは物価上昇だけでなく、旅行への意欲が回復してきたことを示唆します。
地域ごとの支出差異と傾向
地域別の月間支出では、以下のような特徴が見られます。
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北海道(7.992万円):観光資源が豊富なため、道外・海外からのアクセスも含めて旅行支出が高額に。
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大都市(7.325万円)・4国(7.17万円)・近畿(6.921万円):所得水準が比較的高く、オンラインサービスへの親和性も高いため、ネット決済が浸透。
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東海(5.922万円)、中都市(5.857万円)、9州・沖縄(5.707万円):1部でマイナス成長も見られ、まだ回復基調に乗り切れていない様子。
特に4国の+105.6%という増加率は、ネット旅行予約サービスの普及と地域キャンペーンの効果が出た可能性を示します。1方、9州・沖縄の-22.8%や中都市の-5.592%は、旅行頻度や所得の地域差、あるいはネット決済の浸透度の違いが要因と考えられます。
支出世帯割合の変化と利用者層の広がり
ネット決済による旅費を支出した世帯割合は6.234%と比較的高く、5世帯に1世帯以上がこの手段を利用している計算です。以下にその詳細を見ていきます:
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最も高い地域は全国(6.7%)と中都市(6.38%)
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最も低い地域は小都市B(4.75%)
注目すべきは、前年同月比での全国+8.943%という堅実な増加。これは、年齢層の高い世帯でもネット旅行予約が徐々に浸透してきたことや、地域振興によるデジタル割引キャンペーンの影響も大きいでしょう。
また、小都市Bや4国、中国地方での伸び率(+30.14%、+26.4%、+21.48%)が大きく、今後の利用拡大が期待される地域です。
ネット決済旅費支出における課題
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地域間格差 北海道や大都市と比べ、地方ではインターネット環境やデジタルリテラシーの問題もあり、利用が伸び悩んでいます。
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高齢者層の取り込み 旅行意欲はあるがネット操作が苦手な高齢者層への支援体制が今後の課題です。
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価格変動の影響 航空運賃や宿泊費の変動が大きいため、ネット決済支出額がその月の社会情勢に強く影響されやすい傾向にあります。
今後の展望と政策的含意
旅費(ネット決済)は、今後さらに増加することが見込まれます。理由は以下の通りです:
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観光業界のDX化(デジタル・トランスフォーメーション)進行
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自治体のデジタル地域振興策
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旅行会社によるアプリ・ポイント施策
1方、未開拓地域(9州・沖縄や中都市など)では、地方自治体や観光協会によるプロモーションやネット決済支援がさらなる利用促進の鍵を握ります。
おわりに
旅費(ネット決済)は、旅行関係費の中でも時代の変化を最も色濃く反映する項目です。支出の増加とともに、利用者層の広がりも確認でき、今後は「地方のデジタル対応」「高齢者向けサポート」が焦点となるでしょう。ネット決済の利便性と、旅の体験の価値向上が両立すれば、国内観光経済の大きな推進力となるはずです。
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