家計調査によると、二人以上世帯における教養娯楽サービスの支出は都市によって大きな差があり、広島市や福井市では急増する一方、那覇市や岐阜市では大幅に減少しています。高支出都市では文化イベントや施設の充実が影響し、低支出都市では高齢化やアクセスの課題が背景にあります。今後はデジタル化や地域文化政策の強化により支出の傾向が再構築される可能性があります。
教養娯楽サービスの家計調査結果
教養娯楽サービスの多い都市
教養娯楽サービスの少ない都市
これまでの教養娯楽サービスの推移


詳細なデータとグラフ
教養娯楽サービスの教養娯楽現状と今後
2008年から2025年3月までの家計調査データに基づくと、教養娯楽サービス支出は経済の回復や外出制限の緩和に伴い、近年再び増加傾向にあります。全国平均では1.747万円と、コロナ禍からの回復を裏付ける数字となっています。特に2023年以降の増加は、文化活動・レジャー・教育系サービスへの需要が戻ってきたことを示しています。
都市間の支出格差とその要因
都市別に見ると、広島市(3.476万円、+118.9%)や福井市(3.197万円、+197.3%)が高い水準を示しています。これは、文化施設やイベントの再開、地元行政による文化政策の効果、または「体験型娯楽」への価値再認識が背景にあると考えられます。
1方で、那覇市(1.006万円、-35.59%)や岐阜市(1.036万円、-29.14%)などは低水準にとどまり、大幅な減少も見られます。地方では交通アクセスの課題や、地域における文化・娯楽産業の脆弱さ、また高齢化によるニーズ変化も支出抑制の要因です。
世代別の教養娯楽サービスの利用傾向
若年~中年世代は、スポーツ観戦、ライブ、旅行といった“動的”な体験型サービスに支出する傾向があります。1方、高齢層ではカルチャー教室、観劇、美術館といった“静的”な教養活動に支出する傾向が強く、都市によってはこうした層向けのサービスが充実しているか否かで支出額に大きな差が生じます。
問題点──地域格差とサービスの不均衡
問題として挙げられるのは、教養娯楽サービスの地域間格差です。高支出都市では施設やイベントが充実しアクセスも良い1方、低支出地域ではサービスの選択肢が乏しく、結果的に支出が抑えられてしまいます。また、デジタル対応が進んでいない地方では、オンラインサービスの恩恵も受けにくいという課題があります。
今後の推移と対策の方向性
今後は次のような変化が予測されます。
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オンライン教養サービスの拡大:都市間の差を縮める鍵として、地方でも質の高い文化体験が可能に。
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文化インフラの再整備:地方自治体による文化施設の拡充、地域イベントの推進が求められます。
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高齢化対応サービスの台頭:健康教室や生涯学習系の娯楽サービスが増え、支出が維持・増加する可能性。
これにより、これまで支出が少なかった地域でも徐々に需要が高まる可能性があります。
結びに
教養娯楽サービスは、単なる“余暇消費”ではなく、地域の文化水準や人々の生活の質を映す鏡です。今後は、地域格差を是正する取り組みとともに、世代を問わず豊かな教養・娯楽体験を得られる社会環境の構築が重要となるでしょう。
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