家計調査に基づき、2008年から2025年までの教科書・学習参考教材への支出動向を都市別・世代別に分析。最新平均額は896.7円だが、新潟市や山形市など一部地域では3000円近い支出も確認される一方、福井市などでは100円未満にとどまる。支出の増減には地域ごとの教育意識や物価、学校制度の違いが影響。今後はICT教材の普及や少子化の進展が需要構造を変える可能性が高い。
教科書・学習参考教材の家計調査結果
教科書・学習参考教材の多い都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
名称 | 平均 | 新潟市 | 山形市 | 松江市 | 仙台市 | 岐阜市 | 松山市 | 静岡市 | 北九州市 | 高松市 | 千葉市 |
最新値[円] | 896.7 | 3129 | 2881 | 2011 | 1852 | 1678 | 1640 | 1627 | 1562 | 1539 | 1519 |
前年月同比[%] | +8.96 | +475.2 | -20.06 | +48.3 | +98.07 | +297.6 | +429 | -36.64 | +97.72 | +63.55 | +532.9 |
教科書・学習参考教材の少ない都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
名称 | 平均 | 福井市 | 長野市 | 岡山市 | 大分市 | 名古屋市 | 和歌山市 | 青森市 | 宮崎市 | 京都市 | 東京都区部 |
最新値[円] | 896.7 | 34 | 43 | 90 | 92 | 105 | 151 | 193 | 199 | 304 | 308 |
前年月同比[%] | +8.96 | -96.61 | +152.9 | -84.04 | -88.41 | -91.25 | -50.65 | -79.38 | -65.39 | -31.99 | -51.72 |
これまでの教科書・学習参考教材の推移


詳細なデータとグラフ
教科書・学習参考教材の教育現状と今後
2008年から2025年3月までの家計調査によると、2人以上世帯における教科書・学習3考教材への平均支出は896.7円となっている。この金額は長期的に見ても比較的小規模で、家庭の教育費の中でも補習教育や学習塾、通信教育に比べて存在感は控えめである。しかし、2025年のデータに見るように、1部の都市では1世帯あたり3000円を超える高水準の支出が報告されており、地域間格差が顕著に表れている。
支出が高い都市の特徴と背景
新潟市(3129円、前年比+475.2%)
突出した支出額と急激な伸びが見られる。背景として考えられるのは、自治体主導の教育強化策、あるいは中高1貫校や進学志向の高い学校の集中。教科書に加えて副教材やドリル等が家庭で自主的に購入されている可能性がある。
山形市(2881円、前年比-20.06%)
高水準ではあるが、前年からはやや減少。1定の支出が続いてきた地域であるが、年度によって学校指定教材の購入有無やタイミングにより変動がある。
千葉市(1519円、前年比+532.9%)
大幅な増加率が見られ、教育投資への意識の高まりや、小中学校の教材購入を家庭に委ねる動きが強まっていることが推察される。
これらの都市に共通するのは、比較的人口が集中しており、教育機関の選択肢も多いこと。家庭が教育競争を意識し、学校外の補助教材を積極的に購入する文化が存在する。
支出が少ない都市の特徴と背景
福井市(34円、前年比-96.61%)、長野市(43円)、岡山市(90円)
いずれも支出が極端に少なく、かつ前年比で大幅に減少している。背景として、学校支給の教材が充実している可能性や、家庭での教材購入が少ないことが挙げられる。地方都市では公立学校による教科書・補助教材の無償提供が比較的徹底されているケースも多い。
また、家庭でのICT教材への移行や、オンライン学習の無料リソース活用が進んでいる地域では、紙の教材購入が抑えられる傾向がある。
世代間の特徴と支出構造
教科書や学習3考教材への支出は、世帯主の年齢層によっても差がある。40代~50代の世帯主を持つ家庭は教育投資のピークに当たり、特に中学生や高校生を持つ家庭では副教材の支出が多くなる。1方で、20代~30代の若年世帯では、乳幼児期~小学校低学年までの子どもを対象としており、教材の必要性が限定的で支出も控えめである。
また、デジタルネイティブ世代の親は、書籍よりもアプリやWeb教材に価値を見出す傾向があり、支出項目として「学習3考教材」に反映されないケースも存在する。
今後の推移と課題
今後の支出動向を予測する上で、以下のポイントが重要である。
-
デジタル教材の普及:GIGAスクール構想などにより、教育現場でのデジタル教科書や端末利用が進展。家庭での紙教材の購入頻度は今後減少する可能性がある。
-
少子化による構造変化:子ども1人当たりの教育投資は増える1方、教材全体の市場規模は縮小傾向に入る。
-
家庭教育格差の拡大:都市部と地方、経済力による差は拡大し、特に自主教材購入に依存する地域ほど支出格差が広がる。
-
地域政策との連動性:自治体による教育支援制度(補助教材購入助成など)が支出額に大きく影響するため、地域政策の差が表れやすい分野といえる。
まとめ
教科書・学習3考教材への支出は、家庭の教育方針、学校制度、地域経済、自治体施策の複合的な影響を受けており、非常にばらつきが大きい項目である。今後も都市部と地方の差、世代間の教育観の違いが支出構造に反映されると考えられる1方で、教育のICT化によって紙の教材支出は1定程度減少に向かうと見られる。教育格差の是正とデジタル教材の利活用バランスが鍵となるだろう。
コメント