役職別のスーツ支出では、会社役員と雇用者が高額だが減少傾向が顕著。役員層は前年比で半減し、リモートワークや服装の自由化が影響している。一方、自営業主は対外的信用や個人ブランディングの必要から支出が増加。無職層は最小限の支出で推移。今後は“必要な時だけ着る”方向へと移行し、レンタルやリユースなど新しい利用形態が中心となる可能性が高い。
役職別の背広服
1世帯当りの月間使用料
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | |
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名称 | 平均 | 会社などの役員 | 雇用されている人 | 自営業主・その他 | 無職 |
最新値[円] | 996.2 | 1449 | 1433 | 845 | 243 |
前年月同比[%] | -28.69 | -53.93 | -10.21 | 15.28 | -19.8 |
これまでの役職別の推移


詳細なデータとグラフ
役職別の現状と今後
背広(スーツ)は、単なる衣服を超えて「社会的な立場」を象徴するものです。とりわけ日本においては、役職や職業によってスーツ着用の意味合いが大きく異なります。本章では、2002年から2025年3月までのデータに基づき、役職別の背広支出の推移や背景、今後の方向性について掘り下げます。
支出額トップ ― 会社役員とその急落の背景
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支出:1,449円(前年比 -53.93%)
役員クラスはかつて、会社の顔としての役割を果たすため、スーツにお金をかけることが当然とされてきました。しかし今回のデータでは前年比で半減以上という急落が見られます。
主な要因:
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在宅勤務化の浸透:会議もオンラインとなり、スーツを着る機会が激減。
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カジュアル役員の増加:スタートアップ系企業を中心に、ノータイ・ノージャケットの役員が増えた。
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スーツの買い控えと長期使用:高品質なスーツを複数着持つことで、買い替えサイクルが延びた。
今後もこの傾向は続き、スーツ支出の「象徴的存在」だった役員層は、形式よりも効率やパーソナルブランディングを重視した服装に移行していくと予想されます。
会社勤め層 ― 安定した支出と緩やかな減少
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支出:1,433円(前年比 -10.21%)
雇用されている人々(会社員や公務員等)は、背広を日常的に着ることが多い層です。役員に次ぐ支出額を維持していますが、徐々に減少傾向にあります。
背景要因:
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ビジネスカジュアルの浸透:全社的にスーツの必要がない職場が増加。
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職種による二極化:営業職はスーツ継続、内勤職はカジュアル化。
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若年社員の「無難志向」:新入社員の初期支出はあるが、維持費は節約志向。
この層はスーツの「社会的必要性」と「職場の慣習」に強く左右されますが、将来的にはスーツ支出はさらに減少していく見込みです。ただし、一定のフォーマルさを求める業界では、着用文化が残る可能性もあります。
自営業主・その他 ― 増加傾向の背後にあるニーズの多様化
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支出:845円(前年比 +15.28%)
ここで唯一支出が増加している層が「自営業主・その他」です。これは一見意外ですが、以下のような変化によって説明できます。
主な要因:
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対顧客接触の機会が多い:信用を得るため、商談や契約時にはスーツが求められる。
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個人ブランディングへの投資:YouTuber、講師、コンサルタントなどが清潔感ある装いを意識。
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セレモニー・式典対応:仕事とプライベート両面でのフォーマル対応が増加。
自営業主は「必要なときに必要な1着を持つ」層が多く、定期的な買い替えやレンタル利用も活発です。今後は、パーソナルスーツ(身体に合ったオーダー型)へのニーズが一層進むと考えられます。
無職層 ― 最小限の支出と減少傾向の理由
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支出:243円(前年比 -19.8%)
無職層は圧倒的に支出が少なく、かつ年々減少しています。これは定年退職後の高齢者や、就業前の若年層が含まれる層です。
背景要因:
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スーツの使用頻度の激減:葬儀や冠婚葬祭以外ではほとんど使わない。
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既存のスーツを長期使用:過去の備えがあるため、新調の必要が少ない。
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セール・リサイクル・レンタル利用:費用を最小限に抑える志向が強い。
今後この層では、既存スーツの使い回しが主流となり、新規購入は冠婚葬祭や再就職などの「特別な局面」で限定的に発生するのみと予想されます。
役職別支出から見える今後のスーツ文化の行方
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スーツは“常時着用”から“必要時だけ”へ変化 職業や立場にかかわらず、スーツ支出は必要最低限へと縮小していくでしょう。
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一部での「見せるスーツ」需要の残存 経営者・自営業者・フリーランスなどの対外的PRが必要な層では、自己演出としてのスーツ着用が残り続けると見られます。
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レンタル・サブスク・リユース市場の活性化 特に無職・自営業層を中心に、必要なときだけ手軽にスーツを得られる手段への依存が進む可能性があります。
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“スーツの地位”そのものの変化 スーツは「服装の基本」から「役割に応じた戦略的な選択肢」へと変わりつつあり、それが支出の差異となって顕在化しています。
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