2025年3月時点の役職別の新車支出では、平均が20,010円で、会社役員が最も多く37,570円(前年比+34.94%)と突出している。一方、自営業主は13,780円で前年比-29.91%と急減。雇用者は19,170円(-2.681%)、無職は12,030円(+10.74%)で、生活環境や経済的余裕の違いが支出に大きく影響している。今後も社会構造や景気変動により、役職別に支出傾向が大きく分かれることが予想される。
役職別の新車
1世帯当りの月間支出
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | |
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名称 | 平均 | 会社などの役員 | 雇用されている人 | 自営業主・その他 | 無職 |
最新値[円] | 20010 | 37570 | 19170 | 13780 | 12030 |
前年月同比[%] | +4.663 | +34.94 | -2.681 | -29.91 | +10.74 |
これまでの役職別の推移


詳細なデータとグラフ
役職別の現状と今後
新車購入は世帯の経済的体力やライフスタイルを反映する支出であり、とりわけ「役職別」に見ると、経済的な余裕・将来見通し・移動ニーズの違いが顕著に表れる。今回のデータ(2002年~2025年3月)によれば、最新の役職別の新車支出平均は20,010円。しかし、この平均を大きく上回るのが会社役員(37,570円)であり、逆に最も少ないのは無職(12,030円)という対照的な結果が出ている。
会社役員の支出傾向 ― 高級車需要と投資的性格
■支出額トップ:37,570円/月(前年比+34.94%)
役員層は、他の役職と比べて2倍以上の支出を記録している。その背景には以下の要因が考えられる:
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経済的余裕と経費処理の活用企業経営者や取締役などは法人名義や経費計上により高価格帯の車両を選びやすい。
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ブランド価値と社会的立場の可視化車は「移動手段」以上に「自己のステータス」の象徴として扱われる。
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EVや外車への先行投資的な購買時代の流れに敏感な層であり、テスラ、BMWのEVなどの導入に積極的。
前年比+34.94%という急増も、コロナ禍後の回復や企業業績の一部好転による買い替えタイミングにあるとみられる。
雇用されている人 ― 安定層だが伸び悩み
■支出額:19,170円/月(前年比-2.681%)
「雇用されている人」はサラリーマン、公務員を含む層であり、支出は役員に次ぐものの、前年よりやや減少。特徴としては以下が挙げられる:
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毎月の可処分所得が制約される賞与やローンに依存しがちで、新車購入は長期的な家計判断に基づく。
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通勤ニーズが強く、実用性重視ハイブリッド・コンパクトカーなど、コスパを重視する傾向。
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住宅ローンや教育費と並ぶ大きな支出インフレや物価高が響き、2024年度は買い替えの先送りが目立った。
今後もこの層は安定しているが緩やかな下降傾向が続くと予想される。
自営業主・その他 ― 不安定性が露呈
■支出額:13,780円/月(前年比-29.91%)
この層の支出減は非常に急であり、ほぼ3割の減少という深刻な動き。背景には以下の要素がある:
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インボイス制度・物価高の影響小規模自営業者がコスト増に直面し、資金繰りを優先。
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設備投資と車の優先度の逆転売上の回復が見込めない中で、車の買い替えが後回しになるケースが多い。
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燃料費・維持費負担の増大特に軽貨物などを使う事業者には痛手。
コロナ禍で一時的に見られた「車移動の復権」も薄れ、自営業者にとって車はコストに戻りつつある。
無職層 ― 高齢者の支出が主
■支出額:12,030円/月(前年比+10.74%)
この層の主な構成は高齢者・年金生活者である。前年から支出が1割以上増加しており、以下のような背景がある:
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地方在住者の“生活の足”としての需要公共交通の乏しい地域では車が必需品である。
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事故後の安全性能の高い車への買い替え自動ブレーキ・運転支援機能付きの軽自動車へのシフト。
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高齢者向けの新型車登場による刺激各メーカーが高齢者市場を重視し始めた結果、関心が高まっている。
とはいえ、支出額自体は低く、生活費への占める比率は高いと見られ、将来的には車離れも進む可能性が高い。
今後の展望と役職別対応の必要性
役職別にみた新車支出は、収入の安定性と支出の自由度に左右されており、今後も以下のような展開が見込まれる。
■会社役員層:依然として支出を牽引
高価格帯・EV市場での動きが注目され、ラグジュアリー市場の中心。
■雇用者層:支出は横ばい〜微減傾向
節約志向と実用性重視の中で、メーカーは中価格帯での勝負が必要。
■自営業層:支出減少が常態化の恐れ
事業用車を含む総コストの見直しと、リース・中古車需要への移行が加速。
■無職層:地域格差と高齢化が焦点
地方行政と連携したモビリティ政策が今後重要になる。
まとめ ― 支出構造と社会の写し鏡としての新車
新車支出は、単なる個人の買い物ではなく、社会の階層構造、制度、ライフスタイルの移り変わりを如実に映し出している。とくに「役職別」という視点は、経済格差の可視化としても有効であり、メーカー・政策立案者ともに注視すべき指標である。
今後は、車の価値をどう定義するか(移動手段か、資産か、趣味か)によって、役職ごとの支出傾向も分岐していくことが予想される。その意味で、車は社会の“鏡”であり続けている。
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