最新データでは、29歳以下の国内パック旅行支出が前年比で約10倍に急増し、全世代中でも突出した伸びを示しました。背景には旅行解禁後の反動需要やSNS映え志向があり、中高年層は安定的な支出傾向。一方、高齢層では支出鈍化が進み、体力や医療費との兼ね合いも影響。今後は若年層と40代の旅行支出が市場をけん引しつつ、シニア層の需要減少と差別化された商品設計が観光業に問われるでしょう。
年齢別のパック旅行費(国内)
1世帯当りの月間使用料
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | ~29歳 | 40~44歳 | 70~74歳 | 40~49歳 | 65~74歳 | 65~69歳 | 35~44歳 | 70~79歳 | 65歳~ | 45~49歳 |
最新値[円] | 2192 | 5365 | 3676 | 3056 | 2894 | 2840 | 2616 | 2583 | 2582 | 2341 | 2300 |
前年月同比[%] | 7.259 | 968.7 | 37.52 | 12.98 | 21.39 | 7.535 | 1.79 | 31.92 | 4.619 | -3.424 | 5.893 |
これまでの年齢別の推移


詳細なデータとグラフ
年齢別の現状と今後
2025年3月時点における国内パック旅行の月間平均支出は、1世帯あたり2192円です。これを年齢別に見ると、特に注目されるのが29歳以下(〜29歳)の5365円で、他世代と比べて突出した数値を記録しました。前年比+968.7%という驚異的な伸びは、コロナ禍以降の反動需要、娯楽志向、SNS映えなどが大きな要因と考えられます。
一方で、中年〜高齢層においては比較的安定した支出傾向が見られ、40代(40〜44歳、40〜49歳)は全体支出をけん引する形に。70歳以上の層でも一定水準を維持していますが、全体的には緩やかな鈍化傾向も見受けられます。
若年層(〜29歳)の支出急増の背景と特徴
29歳以下のパック旅行費支出が前年比で9倍以上に膨れ上がった背景には、以下のような要因が複合しています:
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コロナ収束後の反動需要:外出制限が解除され、旅行熱が一気に高まった。
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SNSと体験重視の旅行志向:旅行を「記録」から「発信」へと位置づける若年層は、映える宿泊地や観光地への関心が強い。
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手頃なパック商品の普及:学割や若者向けパックツアーが増加し、アクセスが容易に。
この層の特徴は、「金額よりも体験価値」を重視する点にあります。今後の観光産業にとっては、若年層が旅行市場の主力層の一角を占める可能性が高いと見られます。
中年層(40代前後)の安定支出と成長性
40〜44歳(3676円)、40〜49歳(2894円)の層は、全体の中でも支出額が高く、かつ前年からも20〜30%の伸びを示しています。この世代は家庭持ちが多く、子育ての一環としての旅行、または働き盛りのストレス解消としてのレジャー利用が考えられます。
また、40代は時間的・経済的にある程度の余裕を持つ層でもあり、「親孝行旅行」や「家族パック」へのニーズも高い点が特徴です。観光業界にとっては、質と価格のバランスが求められる層であり、堅実かつ継続的な収益が期待できるターゲットでもあります。
高齢層(65歳以上)の支出傾向と今後の課題
65〜74歳(2840円)、70〜74歳(3056円)、全体として65歳以上(2341円)は依然として一定の支出を保っていますが、前年比の増加率はいずれも低く、場合によってはマイナスに転じています(例:65歳以上全体は-3.424%)。
この背景には以下のような現実があります:
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体力的制約や医療不安により、旅行頻度が抑制される傾向。
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円安や物価上昇による購買意欲の低下。
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移動手段や宿泊施設のバリアフリー未整備への不満も影響。
一方で、引退後の時間的余裕を活かした「ゆったり旅行」や、「温泉・健康志向の旅行」は一定の支持を得ており、商品設計次第では再活性化も期待できます。
今後の市場展望と旅行業界への提言
年齢別支出の傾向を踏まえると、今後のパック旅行市場は以下のような方向性が見込まれます:
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若年層をターゲットとした短期・体験重視型商品の強化 価格帯は抑えめにしつつも、SNS映えやアクティビティを含む旅行商品に需要が集中。
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40代を中心とした「家族旅行型」パックの再設計 祖父母・子供を含む三世代旅行など、ニーズが多様化している層を狙った柔軟なプランが求められる。
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シニア層向けには健康配慮と利便性を重視した商品開発 バリアフリー、医療支援、同行サービスなどを組み込むことで、潜在的需要を掘り起こす。
おわりに
年齢別のパック旅行費の動向からは、世代ごとの価値観や生活環境の違いが如実に現れています。特に若年層の急激な支出増は、観光産業にとって大きなチャンスであり、それに続く40代世代も堅実な市場として存在感を示しています。
一方、高齢層の需要が今後減少傾向にある中で、持続可能な旅行市場の形成には「世代に応じた商品設計」と「価格帯の多様化」がカギとなるでしょう。
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