年齢別では〜34歳の支出が最多だが前年比で大幅減。一方、60〜64歳など親世代の支出が急増し、挙式費用の「支援型構造」への移行が顕著。中高年層や高齢層では支出は低水準で、今後は支出が世代間で分散・再編されていく可能性が高い。
年齢別の挙式・披露宴費用
1世帯当りの月間支出
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | ~34歳 | 60~64歳 | 55~64歳 | 30~39歳 | 60~69歳 | 60歳~ | 55~59歳 | 50~59歳 | 80~84歳 | 45~49歳 |
最新値[円] | 527.7 | 2794 | 2506 | 1514 | 1243 | 1197 | 545 | 446 | 259 | 147 | 130 |
前年月同比[%] | -64.38 | -37.37 | +1401 | +237.2 | +1473 | +287.4 | +270.7 | -42.08 | -29.23 |
これまでの年齢別の推移


詳細なデータとグラフ
年齢別の現状と今後
挙式・披露宴という儀式において、費用を「誰がどれだけ負担するか」は時代とともに変化してきました。従来は当事者(新郎新婦)が主に支出していましたが、近年では親世代・祖父母世代の支援が増える一方で、若年層の金銭的余裕は減少し、年齢別の支出傾向は複雑化しています。2025年3月までの家計データは、年齢による支出の違いと、そこに表れる社会的背景を如実に映しています。
20代・30代前半(〜34歳)の支出 ― 主役世代の「減退」と背景
年齢別で最も支出が高いのは〜34歳(2794円)ですが、前年比-37.37%と大幅減少しています。この層は結婚の主役世代である一方で、物価高騰・非正規雇用・奨学金返済などの現実に直面しており、結婚式の費用を抑える、あるいは行わないという選択が増加しています。
コロナ禍以降、「少人数婚」や「フォトウェディング」「家族婚」が定着し、支出を抑えつつ満足感を得る方向にシフトしています。この世代にとって挙式は「豪華さより合理性」が問われる儀式となりつつあるのです。
親世代(55~64歳・60~64歳・60~69歳)の異例の増加
注目すべきは、60〜64歳(2506円、前年比+1401%)や55〜64歳(1514円、+237.2%)といった親世代の支出が急増している点です。これらの層はちょうど子どもが結婚適齢期を迎えているケースが多く、結婚式費用の援助役としての出費が増加していると考えられます。
また、退職金や年金受給開始前の「最も余裕のある老年層」に位置しており、「親としての最後の大きな支出」として結婚祝いに積極的になっていると見ることもできます。とりわけ還暦直前〜直後の世代であることが、祝儀文化に対する関心の高さと一致している可能性も高いです。
中高年層の複雑な傾向 ― 支援と自分たちの「再婚婚」
55〜59歳(446円、前年比-42.08%)や50〜59歳(259円、-29.23%)では、支出の減少が目立ちます。これは上記の「60歳前後」の層よりも子どもの年齢がやや若く、まだ結婚に至っていない、あるいはコロナ禍で式を保留にしているケースが多いためと推察されます。
また、中高年層の再婚が増えている背景もありますが、この年齢層では再婚時に盛大な式を挙げるケースは稀であり、費用は極めて抑制的です。結婚式の支出は「祝う側」か「主催する側」かによって性質が異なるため、この層の支出低下は世帯構成の変化も反映しています。
高齢層(80代〜)と祝儀文化の終焉
80〜84歳(147円)やそれ以上の年齢層では支出は微々たるものになっており、これは身体的制約や判断力の問題も関係している一方、祝儀文化への距離感の広がりも無視できません。
この層では「孫の結婚祝い」はしても、式そのものへの参加が困難な場合も多く、支出としての金額も限定的です。また、結婚式を「華やかに祝う」文化が生活の一部であった昭和世代でも、物理的参加の限界が影響しているといえるでしょう。
今後の展望 ― 支出の再編と「誰が祝うのか」の構造変化
今後の傾向としては、若年層の支出がますます抑制され、中高年層による支援型支出が定着する見通しです。一方で、親世代の財力にも限りがあり、住宅資金や老後資金とのバランスに悩む家庭も増えるでしょう。加えて、結婚式自体が「盛大にやるもの」から「ライフスタイルに応じて選ぶもの」に変化する中で、儀式的支出の分散化が起きる可能性が高まっています。
将来的には「クラウドファンディング型結婚式」や「自治体補助型フォト婚」など、第三者的な資金調達モデルの登場も予想され、挙式文化はよりパーソナルかつ分散的に再編されることになるでしょう。
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