年収別に見ると、食卓セット支出は必ずしも高年収=高支出ではない。特に700~800万円層や~200万円層で急増が目立ち、ライフイベントや安価市場の影響が大きい。富裕層では消費抑制傾向があり、中間層や再建層の消費動向が今後の市場の鍵を握る。
年収別の食卓セット
1世帯当りの月間支出
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 1250~1500万 | 2000万~ | 700~800万 | 900~1000万 | 600~700万 | 500~600万 | 1000~1250万 | 400~500万 | 800~900万 | ~200万 |
最新値[円] | 144.2 | 507 | 319 | 302 | 131 | 122 | 111 | 93 | 84 | 82 | 63 |
前年月同比[%] | -57.61 | +66.23 | -73.53 | +843.8 | -58.01 | -56.98 | -37.58 | -51.16 | -73.46 | +472.7 |
これまでの年収別の推移


詳細なデータとグラフ
年収別の現状と今後
食卓セットは生活の中心を形づくる家具であり、世帯の経済力と生活スタイルを如実に反映するアイテムです。本稿では、2017年1月~2025年3月のデータを基に、年収別の食卓セット支出額とその変動から、各階層の生活変化、消費志向、今後の動向について丁寧に分析します。
データの概観 ― 支出額とその増減率
年収階層 | 月間支出額(円) | 前年同期比(%) |
---|---|---|
1250~1500万 | 507 | +66.23 |
2000万~ | 319 | -73.53 |
700~800万 | 302 | +843.8 |
900~1000万 | 131 | -58.01 |
600~700万 | 122 | ―(不明) |
500~600万 | 111 | -56.98 |
1000~1250万 | 93 | -37.58 |
400~500万 | 84 | -51.16 |
800~900万 | 82 | -73.46 |
~200万 | 63 | +472.7 |
年収別支出データは一見すると「高年収層ほど支出が高い」という印象を与えますが、実態はより複雑です。むしろ中間層や一部高所得層で支出の大幅増減がみられ、階層ごとの生活観の変化が顕著に表れています。
年収階層ごとの消費傾向と動向分析
年収1250~1500万円層(507円/+66.23%)
この層は経済的余裕があり、かつ高級志向と実用性のバランスを取ることが多い。インテリアへのこだわりが強く、ダイニングセットにも高品質・高デザイン性を求める傾向がある。近年では「住宅再整備・リフォーム需要」との連動も見られ、支出増加の背景になっている。
年収2000万円以上(319円/-73.53%)
高所得層の中でも支出減が顕著。消費に対する慎重姿勢の強まり、あるいは家具を既に揃えており「買い替え不要」な段階にある可能性が高い。また、富裕層の中には家具購入そのものをオーダーメイドや資産運用の一環として扱う層もおり、消費統計に出にくい。
年収700~800万円層(302円/+843.8%)
最も顕著な増加を見せた層。子育て世帯・住宅購入世帯が多く存在するゾーンであり、家具の一斉購入・更新が支出増の背景にある。また、コロナ禍以降の「おうち時間」充実ニーズが継続しており、食卓周辺の家具購入が盛んと考えられる。
年収900~1000万円層(131円/-58.01%)
年収の割に支出が抑えられており、近年の減少率も大きい。教育費や住宅ローン、老後資金準備など他の支出項目が増えている可能性があり、可処分所得の中で家具の優先度が下がっている層と推察される。
年収600~700万円層(122円)
支出額は平均に近い中庸的な値。堅実で実用的な買い物志向が強く、価格と耐久性のバランスを取った家具購入が目立つ。目立った増減はなく、一定の安定感がある層といえる。
年収500~600万円層(111円/-56.98%)
可処分所得の制約があり、支出減少が進行。「壊れるまでは買い替えない」という選択が定着してきた世帯層であり、家具は最低限に抑える傾向が見られる。
年収1000~1250万円層(93円/-37.58%)
意外と支出が低くなっており、減少傾向。教育や資産形成への支出が増しており、家具よりも未来志向の消費が優先されている可能性がある。
年収400~500万円層(84円/-51.16%)
生活防衛意識が強く、支出を抑制。中古家具市場や格安家具店の活用が増えており、統計上の支出額が落ち込んでいる。大型家具の購入は長期サイクル。
年収800~900万円層(82円/-73.46%)
ミドルアッパー層にしては支出が低く、明らかな消費抑制がある。「買いたいけど買わない」慎重な消費スタイルが顕著。将来不安や資産形成への志向が強いと考えられる。
年収~200万円層(63円/+472.7%)
最下層にも関わらず支出が大きく増加。リサイクル家具、アウトレット品など安価な市場の活発化が影響しており、家具購入の裾野が広がった結果と見られる。新生活・生活再建層による一時的な支出増も考えられる。
年収別家具支出の背景にある社会的・経済的変化
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消費の二極化:高所得層でも消費を抑える層と、こだわり消費を行う層に分かれている。
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住宅事情の影響:持ち家か賃貸か、リフォーム需要があるかないかで家具の更新頻度に差。
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インフレと物価高:家具価格の上昇もあり、「今買うか、もっと先延ばすか」で世帯ごとに明暗が分かれている。
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ライフイベント依存:結婚・出産・子育て・転居などの時期が重なった世帯での家具支出は大幅に増える傾向。
今後の推移予測と市場への示唆
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中間層(600~800万円台)が今後の消費のカギ。ライフステージによって消費の波が大きいため、家具業界はタイミングを狙った提案が重要。
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低所得層の回復的需要が続けば、リユース市場や格安家具市場の拡大が見込まれる。
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富裕層市場の分化が進み、「見える消費」と「見えない投資」による家具消費の減少が続く。
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サブスク型・モジュール型家具の普及により、支出額の統計的把握が難しくなる可能性。
まとめ ― 年収ごとの家具消費には「生活哲学」がにじむ
年収は単なる購買力の指標ではなく、支出の優先順位を大きく左右します。家具、特に食卓セットのような生活の中核をなすアイテムは、その世帯の価値観やライフステージを強く反映します。経済格差の中で見えてくるのは、「お金を持っているから買う」「余裕があるからこそ買わない」という複雑な消費心理です。今後、家具市場は金額だけでなく「使い方」「買い方」の多様化への対応が鍵となるでしょう。
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