年収によって挙式・披露宴への支出は大きく異なり、上位層は6千円超と高額な一方、年収200万円以下では58円と低迷。中間層では費用対効果を重視する傾向が強く、低所得層では非実施が一般化。今後は価値観の多様化と格差による二極化が進むと予測される。
年収別の挙式・披露宴費用
1世帯当りの月間支出
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 2000万~ | 1500~2000万 | 1250~1500万 | 900~1000万 | 700~800万 | 600~700万 | 400~500万 | 1000~1250万 | 300~400万 | ~200万 |
最新値[円] | 1066 | 6348 | 2185 | 1782 | 1366 | 674 | 480 | 155 | 150 | 98 | 58 |
前年月同比[%] | +82.14 | -17.45 | +658.3 | +1338 | -86.06 | +40 | -34.83 |
これまでの年収別の推移


詳細なデータとグラフ
年収別の現状と今後
挙式・披露宴は人生の節目として重要なイベントですが、その費用負担の大きさゆえに、近年では“やる・やらない”の選択自体が年収階層によって二極化しつつあります。2025年3月までの家計調査によると、挙式・披露宴の支出は年収帯によって極端な差があり、生活格差が儀式的消費にも色濃く影響していることがわかります。
支出の頂点 ― 超高所得層(年収2000万円以上)の傾向
最新の月間支出で最も高いのは年収2000万円以上(6348円)の層で、全体平均(1066円)を大きく上回っています。この層はハウスウェディングやホテル婚など、高額でも「体験価値」や「ブランド力」に重きを置く傾向があり、家族や社会へのアピールとしての結婚式に積極的です。資産形成が進んでおり、結婚を自己表現の場ととらえる傾向も強いといえます。
中上位層の細かな差 ― なぜ1000〜1250万層が支出低下?
注目すべきは、年収1500〜2000万円層(2185円)と1250〜1500万円層(1782円)。前者は前年比-17.45%と減少している一方、後者は+658.3%と急増しています。
1500万円台以上では、投資や子どもの教育などより長期的な資金計画へのシフトが進んでおり、式の簡素化も一部に見られます。一方で、1250〜1500万円層ではようやく家計にゆとりが出て「一度はきちんと祝いたい」層が回帰している印象です。
また、意外にも年収1000〜1250万円層の支出(150円)は低水準です。これは、支出の一部が別の名目(旅行・贈答など)に計上されている可能性もありますが、住宅ローンや教育費に追われる“中間富裕層”の余裕のなさが出ていると見ることもできます。
中間層の選択 ― 儀式の価値を見直す700〜900万円台
年収900〜1000万円層(1366円)は前年比+1338%と驚異的な伸びを示しました。この層は「これまで節約してきたが、そろそろ祝いたい」との心理や、景気回復を前提とした前向きな支出意欲が背景にあると考えられます。
700〜800万円(674円)・600〜700万円(480円)層も比較的安定した支出を維持しています。この層では地域婚や家族婚、地元式場とのタイアップ割引など、実利的な選択が目立ちます。
中間層は「やらない」か「慎ましくやる」かの間で揺れており、費用対効果を強く意識した結婚式のあり方が定着しつつあります。
低所得層の選択的排除と将来的な課題
年収400〜500万円(155円)は前年比-86.06%と大幅減、300〜400万円(98円)や200万円以下(58円)の層も水準は極めて低く、結婚式が「経済的に手の届かないもの」となっている現実を突きつけています。
低所得層では「写真だけ」「入籍だけ」という選択肢が一般化しつつあり、式そのものの文化的意味や必要性が再定義されています。このままでは、結婚式文化が特定階層の特権化につながる懸念もあり、ブライダル業界全体が新しい価値提供の形を模索する時期にきているといえるでしょう。
今後の展望 ― 格差と価値観のすれ違い
挙式・披露宴の支出は今後も年収に強く比例する形で二極化が進行すると見られます。上位層は「体験」や「自己表現」としての投資を増やし、下位層は「必要最小限」もしくは「非実施」へ向かうでしょう。
一方で、自治体主導の「結婚支援」「地元婚応援事業」などが進めば、下位層へのブライダル支出の刺激になる可能性もあります。また、サブスクリプション型のウェディングプランなど、予算に応じた多様な選択肢が今後のカギとなるでしょう。
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