年収別に見ると、自動車教習料への支出は1000〜1250万円世帯で最も高く、逆に2000万円以上では減少傾向にあります。中間層も支出を増やしている一方で、低所得層では経済的制約により免許取得が難化しつつあります。今後は年収階層による「免許取得格差」が拡大する可能性があります。
年収別の自動車教習料
1世帯当りの月間使用料
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 1000~1250万 | 800~900万 | 400~500万 | 1250~1500万 | 2000万~ | 700~800万 | 1500~2000万 | 600~700万 | 500~600万 | 300~400万 |
最新値[円] | 754.9 | 1833 | 1445 | 1252 | 1118 | 754 | 696 | 538 | 523 | 456 | 421 |
前年月同比[%] | 5.522 | 88.39 | 124.4 | 95.32 | -8.958 | -47.49 | -21.97 | 128 | -31.54 | -35.96 | -4.751 |
これまでの年収別の推移


詳細なデータとグラフ
年収別の現状と今後
自動車教習所への支出は、運転免許の取得という目的のもとに行われる「先行的生活投資」です。しかしこの投資行動には、世帯の年収という経済的基盤が強く影響しています。2025年3月の最新データでは、月間の平均支出額が754.9円であるのに対し、1000万円〜1250万円世帯では1833円と2倍以上の水準を示すなど、所得によって支出の格差が顕著です。本稿では2002年からの年収別動向を踏まえつつ、現代の経済格差が免許取得にもたらす影響、そして今後の展望を考察します。
年収別支出の実態──高所得層と中間層が「主役」
2025年3月時点の月間自動車教習料支出は以下の通り(円):
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1000~1250万円:1833円
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800~900万円:1445円
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400~500万円:1252円
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1250~1500万円:1118円
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2000万円~:754円
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700~800万円:696円
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1500~2000万円:538円
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600~700万円:523円
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500~600万円:456円
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300~400万円:421円
興味深いのは、最も支出が多いのは中〜高所得層(1000~1250万)であるのに対し、さらに高い1500万円超や2000万円以上の層では支出が逆に下がる傾向です。このことから、必ずしも収入が高ければ教習料に多くを投じるわけではなく、世帯のライフステージや価値観、子の年齢層などが影響していることがわかります。
前年同期比の変動──急増する中所得層、減少する高額層
増減率を見ていくと以下のようになります:
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1500~2000万円:+128.0%(最も増加)
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800~900万円:+124.4%
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400~500万円:+95.32%
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1000~1250万円:+88.39%
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300~400万円:-4.751%
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1250~1500万円:-8.958%
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500~600万円:-35.96%
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600~700万円:-31.54%
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700~800万円:-21.97%
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2000万円~:-47.49%(最も減少)
この変動から見えるのは、1000万円前後の“生活の質を重視する中高所得層”での免許取得支出が急増している一方、富裕層(2000万円以上)では免許取得の優先度が相対的に下がっている可能性が高いという点です。また、中間層(400~500万円)でも90%を超える増加率となっており、教育費や就職支援としての免許取得を再評価する動きが見えます。
階層別の支出構造とその背景
① 高所得層(1000万円〜1500万円)
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子どもが大学生・高校生の年齢にあたる世帯が多く、進学・就職準備として免許を取らせる傾向。
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教習所の「合宿型」や「優良プラン」など高価格帯コースの利用も多い。
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生活に余裕があるため、必要なら支出を惜しまない。
② 超高所得層(1500万円〜2000万円以上)
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生活の中心が都市部で、運転を必要としない(専属運転手・タクシー・カーシェアの活用)。
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子どもがすでに社会人、あるいは海外留学などで教習が不要なケースも。
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「車を持たない主義」など価値観の変化も影響。
③ 中間層(400~900万円)
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地方在住率が比較的高く、日常生活で車が必須。
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教育投資としての免許取得を重要視。
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一度に複数人(兄弟姉妹)で取得させる世帯も多く、支出が集中する傾向。
④ 低所得層(300〜500万円)
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経済的余力の少なさから、免許取得のタイミングを後ろ倒しに。
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支出を最小限に抑える必要があり、割引キャンペーンなどを活用する傾向。
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若年単身世帯やフリーター層では、そもそも免許の必要性を感じていないことも。
2002年以降の長期的な傾向
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2000年代前半:全体的に高水準で推移。特に団塊ジュニア世代の子どもが高校生〜大学生となり、免許取得ラッシュ。
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2010年代:都市部では免許離れが進む一方、地方では維持。
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2020年代:教育費・物価高の中で、世帯ごとに「優先する出費」が分かれ、年収による差が顕在化。
今後の展望──免許取得は「教育」か「贅沢」か
将来的な教習料支出の傾向は、次のように二極化する可能性が高いです。
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高年収層(1000〜1500万円)は、今後も支出を継続・増加教育とライフスタイルの一環としての免許取得が定着。教習の高度化(VR、個別指導)にも対応可能。
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超高額所得層(2000万以上)は免許取得を省略化・不要化へ運転手付き生活、都市交通への完全依存、あるいは自動運転車活用への移行が想定される。
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中所得層(400~800万円)は家計とのバランスで取得判断公的支援(教習費補助、奨学金制度)があれば取得者は増える。地方での重要性が高いため支出維持傾向。
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低所得層では今後さらに支出が圧縮される可能性格差の固定化が進むと、免許取得が「一部の階層の権利」となるリスクも。
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