2021年から2025年にかけての腕時計支出は、年収によって大きく差が見られる。年収2000万円以上の世帯は2205円と突出しており、富裕層の間では高級時計への投資傾向が顕著である。一方、400~500万円の中間層では支出がわずか89円であり、大幅な減少が見られる。中堅層以下での腕時計の購買はスマートフォンの普及や価格高騰の影響で後退し、今後も二極化が進む可能性がある。
年収別の腕時計
1世帯当りの月間使用料
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 2000万~ | 1250~1500万 | 1000~1250万 | 900~1000万 | 800~900万 | 600~700万 | 500~600万 | 700~800万 | 1500~2000万 | 400~500万 |
最新値[円] | 448.5 | 2205 | 1251 | 755 | 496 | 297 | 286 | 189 | 173 | 131 | 89 |
前年月同比[%] | -6.395 | 660.3 | 439.2 | 26.04 | -49.59 | -69.03 | 10.42 | -56.75 | -27 | -88.61 | -88.85 |
これまでの年収別の推移


詳細なデータとグラフ
年収別の現状と今後
この層は高級腕時計の購入やコレクションを目的とした消費が多く見られる。2025年時点では2000万円以上の層が前年比660.3%増と爆発的な伸びを見せており、株価上昇や資産価値としての時計の再評価が要因と考えられる。加えて、インバウンド需要や海外転売市場も影響している可能性がある。
中間層(年収600万~1000万円)
ここでは支出が平均水準に近く、600~700万円で286円、900~1000万円で496円というように漸減傾向が見える。この層では日常使いの時計は既に所有済みであることが多く、買い替えサイクルが長いため継続的な支出が少ない。スマートウォッチが一時的に消費を押し上げたものの、価格帯が定まったことで横ばいに転じている。
低~準中間層(年収400万~500万円)
この層では支出が極端に落ち込み、89円(前年比-88.85%)とほぼ腕時計に対する購買行動が見られない水準となった。生活必需品やエネルギーコストの上昇で可処分所得が削られており、ファッション・嗜好品としての腕時計が優先されにくくなっている。
支出の急減・急増の解釈と問題点
年収1500~2000万円層では-88.61%の減少が見られる点は興味深い。これは一部の層が資産防衛に転じて高額品を控え始めたか、あるいは高年収帯の内部でも支出に対する価値観の多様化が進んでいることを示唆している。一方、1000万円超の層では全体的に増加傾向が続いており、資産の分配や投資的な意味での「ブランド時計」が選ばれている。
スマートウォッチの影響と若年層の時計離れ
腕時計市場全体には、スマートフォンの普及およびスマートウォッチの台頭が影響を及ぼしている。特に中間層以下では、時間確認機能がスマホで代替され、腕時計そのものへの関心が薄れている。若年世代では機能性重視が主流となっており、高額なブランド時計よりも安価なスマートウォッチやファッション時計にシフトしている。
今後の動向と予測
今後も以下のような傾向が予測される。
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富裕層の投資・コレクション需要の拡大:高級時計の資産価値が認知され、ラグジュアリー市場での購買はさらに増加。
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中間層の実用重視・購買停滞:既存の時計やスマートウォッチで満足し、新規購入は限定的。
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低所得層での実質ゼロ支出化:生活防衛意識の高まりから嗜好品に回す余裕がなくなり、支出がゼロに近づく。
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スマートウォッチの裾野拡大:健康管理機能を重視する層への普及が続き、時計産業の構造を変える可能性。
まとめ
年収別の腕時計支出は、単なる消費行動ではなく、階層化された価値観の反映である。富裕層の購買行動はラグジュアリーマーケットの活況を裏付ける一方で、一般消費者の間では実用性・価格・生活防衛の観点から支出が大きく減少している。この傾向は今後も加速し、「持つ人はより多く持ち、持たざる者は必要性を感じなくなる」という二極構造が固定化していくだろう。
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