履物支出の都市間格差とその背景──家計調査から見る消費傾向の変化

被服・履物



2008年から2025年3月までの家計調査によると、二人以上世帯の履物類支出は平均1736円。高知市や東京都区部では支出が高騰する一方、津市や相模原市などでは大幅な減少が見られる。背景には気候、地域文化、購買チャネルの多様性、世代別のライフスタイル変化がある。今後は機能性・価格重視のトレンドが広がり、履物支出は都市・世代によってさらに分化すると予測される。

履物類の家計調査結果

履物類の多い都市

2025年3月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 平均 高知市 東京都区部 富山市 川崎市 福岡市 水戸市 大阪市 宇都宮市 山形市 長野市
最新値[円] 1736 3804 3266 3154 2945 2605 2533 2531 2383 2235 2219
前年月同比[%] +0.951 +156.5 +39.99 +50.48 +19.18 +64.46 +128.2 +58.09 +22.08 -10.1 +1.789

履物類の少ない都市

2025年3月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 平均 津市 札幌市 相模原市 神戸市 和歌山市 宮崎市 奈良市 福井市 那覇市 青森市
最新値[円] 1736 678 785 854 932 986 999 1001 1107 1116 1154
前年月同比[%] +0.951 -46.06 -37.45 -53.76 +9.906 -5.283 -18.18 -50 -4.815 -18.06 -6.026

 

これまでの履物類の推移

履物類の推移
最新のデータ

 

詳細なデータとグラフ

 

履物類の被服費現状と今後

家計調査に基づく2008年から2025年3月までのデータによれば、2人以上世帯の履物類に対する月平均支出は全国平均で1736円となっている。この金額は被服費全体に占める割合としては大きくないが、個人のライフスタイルや季節要因、地域特性を反映しやすい支出項目である。とくに2024年以降、いくつかの都市で顕著な増加傾向が見られる1方、大幅な減少を示す都市も存在し、履物支出は非常に地域差の大きなカテゴリーとなっている。


履物支出が高い都市の特徴と要因分析

高知市:全国1位の履物支出

高知市では月あたり3,804円と、全国平均を大きく上回る支出が確認された。前年同期比では+156.5%という急増ぶりである。この背景には以下の要素が考えられる。

  • 地形と交通手段:高知は公共交通よりも徒歩・自転車移動の比重が高く、靴の消耗が早いため更新頻度が高い。

  • 地方百貨店や地場靴店の販売強化:販促イベントや機能性を重視した高価格帯商品の導入が、支出の押し上げ要因になった可能性がある。

東京都区部・富山市・川崎市

東京都区部(3,266円)、富山市(3,154円)、川崎市(2,945円)などの都市も全国平均を大きく上回る。これらは都市生活におけるファッション志向、通勤スタイルに起因する履物の複数保有文化、また「価格よりデザイン・機能性」を重視する消費傾向が支出を押し上げていると考えられる。


履物支出が低い都市の背景

1方、履物支出が顕著に少ない都市も存在する。最も低いのは津市(678円)で、相模原市(854円)、札幌市(785円)などが続く。

  • 津市・札幌市・相模原市の減少傾向(それぞれ-46.06%、-37.45%、-53.76%)は、以下の要因が絡んでいる可能性がある。

    • 通販利用の浸透:実店舗での購入が減少し、家計調査の反映対象とならないオンライン購入やセール品の活用が進んだ。

    • 節約志向:物価上昇の中で靴の購入は後回しにされやすく、実用本位で長期使用する家庭が増えた。

    • 天候や交通手段:車中心の生活圏では靴の消耗が少ない。


世代間の消費性向の違い

世代による履物支出の違いも顕著である。

  • 若年層(20〜40代)はファッション志向やスポーツ・アウトドア志向からスニーカーやブーツなど複数種類を所有し、購入頻度も高め。

  • 中高年層(50代以降)では、履きやすさや機能性(足腰への負担軽減、防水性、軽量化)を重視した商品を選ぶ傾向が強い。耐久性の高い靴を長く使う志向により、頻繁な買い替えを避ける傾向がある。

また、子育て世代では子どもの成長に伴う買い替え需要が1定あり、履物支出が1時的に高まるケースも見られる。


今後の予測と履物市場の変化

今後の履物類支出は以下のような動きが予測される。

  • 物価上昇の影響:単価は上昇するが、全体の支出は抑制傾向に。高価格品の購入頻度は減り、セールやアウトレット利用が増加。

  • 通販・中古市場の浸透:ECサイトやメルカリなどでの購入が支出統計に反映されにくくなり、家計調査との乖離が進む。

  • サステナビリティ志向:エシカル素材・リペア可能な靴など、長く使える商品への志向が強まり、結果的に世帯当たり支出は1時的に減少または横ばい化。

1方、若年層の「自己表現手段としてのファッション」の1環として靴に投資する傾向が強まれば、都市部を中心に履物支出が再び増加する可能性もある。


政策的示唆と消費データの読み方

家計調査から見える履物支出の都市差・世代差は、単なる購買行動だけでなく、交通インフラ、地域経済、消費者教育、地域の販路特性など、多様な社会経済的要因が反映されている。

政府や地方自治体がこの種のデータを活用することで、生活支援策(例えば「子育て家庭への学用品・靴の補助制度」など)や地域活性化策(地元靴産業支援など)を練ることも可能となる。


まとめ履物類は支出額としては小さな項目ながら、都市ごと・世代ごとの生活の違いや価値観を端的に映し出す鏡である。今後の動向は、物価変動・気候変化・オンライン消費の動きと密接に連動しながら、さらなる地域格差・消費多様化の傾向を示していくだろう。

 

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