2025年の専門学校・私立入学金の平均は19.77万円で、佐賀や京都、福岡などで高額傾向にあります。一方で和歌山や新潟などでは大幅な減額が見られ、地域間格差が拡大中です。値上げは物価上昇や設備投資が主因で、逆に低額地域は生徒確保策と見られます。今後は奨学金制度など支援の充実が重要です。
短大・専門学校の教育費
専門学校・私立入学金の高い都市
2025年4月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 佐賀 | 京都 | 那覇 | 福岡 | 盛岡 | 神戸 | 奈良 | 仙台 | 大分 | 福島 |
最新値[万円] | 19.77 | 32.5 | 31.5 | 30 | 30 | 29 | 27.5 | 27.5 | 27.5 | 25.5 | 25 |
平均比[%] | 100 | 164.4 | 159.3 | 151.8 | 151.8 | 146.7 | 139.1 | 139.1 | 139.1 | 129 | 126.5 |
前年月同比[%] | -1.043 | +0.279 | +0.0445 | +30.52 | -0.0854 | -8.333 | +0.148 | -5.284 | -1.923 | +25 |
専門学校・私立入学金の低い都市
2025年4月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 和歌山 | 新潟 | 千葉 | 高知 | 鳥取 | 名古屋 | 宇都宮 | 松山 | 長野 | 東京都区部 |
最新値[万円] | 19.77 | 6.1 | 8.5 | 10 | 10 | 10 | 12.5 | 12.5 | 12.5 | 12.5 | 14 |
平均比[%] | 100 | 30.86 | 43 | 50.59 | 50.59 | 50.59 | 63.23 | 63.23 | 63.23 | 63.23 | 70.82 |
前年月同比[%] | -1.043 | -79.67 | +1.882 | -17.65 | +25 | +17.43 | +7.143 | +7.366 | +11.18 |
これまでの専門学校・私立入学金の推移


詳細なデータとグラフ
専門学校・私立入学金の現状と今後
2025年4月の時点で、専門学校・私立の入学金全国平均は19.77万円となっています。これは2016年の統計開始以降、おおむね緩やかに推移してきました。大学と異なり、専門学校は業種・業界との密接な連携が求められるため、教育設備や実習環境にかかる初期費用が入学金に反映されやすい構造にあります。
また、入学金は基本的に入学初年度のみに発生する1時金であるため、授業料と比べて1括の経済負担として意識されやすく、金額の上下が進学動機に直結する傾向があります。
高額地域の特徴と背景
2025年時点で入学金が特に高額な地域は以下の通りです:
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佐賀:32.5万円(+0.279%)
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京都:31.5万円(+0.0445%)
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那覇・福岡:30万円(福岡は+30.52%)
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盛岡:29万円(-0.0854%)
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神戸・奈良・仙台:27.5万円
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大分:25.5万円(-1.923%)
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福島:25万円(+25%)
特筆すべきは福岡の+30.52%や福島の+25%という大幅な上昇です。背景には、以下の要因が考えられます:
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施設更新や教育設備の充実
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人材確保のための費用増
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インバウンドや外国人留学生への対応拡充
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物価上昇と電気代・土地賃料の高騰
福岡・京都・那覇など観光や人口流入がある地域では教育投資の需要が高く、入学金に反映されやすい傾向があります。
低額地域の構造と戦略
1方で、入学金が低額な地域は以下の通りです:
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和歌山:6.1万円(-79.67%)
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新潟:8.5万円(+1.882%)
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千葉・高知・鳥取:10万円
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名古屋・宇都宮・松山・長野:12.5万円
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東京都区部:14万円(+11.18%)
和歌山の-79.67%という劇的な減額は、進学希望者の減少や学校間競争激化への対抗手段と見られます。入学のハードルを下げる戦略として、あえて入学金を大幅に引き下げているケースが考えられます。
また、東京都区部でも+11.18%の上昇が見られますが、それでも金額は14万円にとどまっており、都市部では授業料や諸経費で回収し、入学金は抑える傾向もあるといえるでしょう。
都市別の戦略と地域格差
都市別の差は、専門学校の運営母体や地域経済に起因しています。
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地方中核都市(盛岡、仙台、福島)では、進学者数の維持のために入学金に柔軟性をもたせるケースがあります。
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大都市圏(東京、名古屋、大阪)では、授業料や他費用とのバランスをとりつつ競争力を保つ設計。
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地方都市(佐賀、和歌山、鳥取など)では、生徒獲得のために「入学金無料キャンペーン」や減免制度を導入しやすい1方、教育の質維持が難しくなるリスクもあります。
このように、地域ごとの入学金設定は「集客」と「経営」の狭間での戦略的判断となっており、価格差が地域間格差の1端を担っているといえます。
今後の見通しと課題
物価上昇が続く中で、専門学校の初期費用である入学金の動向は、今後も教育機関の体力と地域戦略を測る重要な指標になります。
主な課題:
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地域格差の固定化
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高額入学金による進学機会の制限
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値下げ競争による教育の質の低下
■ 対応の方向性:
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公的奨学金や補助制度の拡充
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入学金免除制度の標準化
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オンライン化による初期設備投資の削減
また、家庭側も「進学後のリターン(就職率、資格取得など)」を加味して入学金の価値を判断する時代になりつつあります。入学金は単なる金額でなく、「教育投資としての意味」を再評価すべき時期に来ています。
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