宿泊料の支出動向と地域差:日本の旅行支出の今とこれから

住宅・医療



宿泊料の月間支出は4.393万円に達し、近畿や都市部では高水準にある。四国や小都市Aでは前年比で大幅増だが、世帯の利用割合は全国的に減少傾向。物価高や旅行スタイルの変化が影響しており、今後は価格と満足度のバランス、地域格差の是正が鍵となる。

家計調査結果

宿泊料の相場

2025年4月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 平均 近畿 大都市 関東 東海 小都市A 全国 四国 中都市 九州・沖縄 小都市B
最新値[万円] 4.393 5.468 5.069 4.897 4.72 4.665 4.646 4.435 4.37 4.104 4.054
前年同月比[%] +3.313 +27.12 +3.51 +4.461 +0.751 +17.83 +4.968 +45.22 +3.122 -0.214 -6.909

宿泊料支出の世帯割合

2025年4月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 平均 大都市 北海道 関東 北陸 中都市 東海 全国 中国 東北 近畿
最新値[%] 7.349 8.8 8.8 8.34 8.23 7.63 7.62 7.51 7.48 6.76 6.64
前年同月比[%] -1.324 +3.286 +8.642 -2.113 -18.6 -4.025 +8.857 -1.573 +14.55 -4.385 -12.29

 

宿泊料の推移

宿泊料の支出額
支出世帯の割合

 

詳細なデータとグラフ

 

宿泊料の旅行関係費現状と今後

宿泊料は旅行関係費の中でも最も大きな割合を占める重要な支出項目であり、国内旅行や帰省、出張など多様な用途に関連している。ホテル、旅館、民宿などの利用料金が含まれ、サービス料や施設利用料も1部含まれる。これは観光経済の健康状態や世帯の可処分所得を映す指標とも言える。


2010年以降の長期的な動向

2010年以降、日本の宿泊料支出は徐々に増加傾向にあったが、2020年のコロナ禍によって急減。その後、2022年以降は全国旅行支援策や経済再開に伴って反発的に増加した。2025年4月の最新データでは月間平均4.393万円となっており、回復基調は続いているが、インフレの影響もあり単純な「宿泊数増加」とは言い切れない。


地域別の宿泊料支出―「高い地域」には何があるのか

最新の宿泊料支出で最も高かったのは近畿(5.468万円)で、これは関西圏の都市部からの旅行や、観光都市・京都の影響が考えられる。また大都市(5.069万円)・関東(4.897万円)・東海(4.72万円)など、都市部では所得が高く、旅行頻度や滞在先のグレードが高い傾向がある。1方で、小都市B(4.054万円)・9州沖縄(4.104万円)など地方では宿泊料は控えめとなっている。


前年比から見る宿泊料の変動と価格上昇圧力

全国平均で前年比+3.313%と微増傾向ではあるが、4国(+45.22%)・近畿(+27.12%)・小都市A(+17.83%)など急増している地域も目立つ。これは、

  • 物価・人件費の上昇による宿泊施設側の値上げ

  • 高価格帯宿泊施設の選択傾向の強まり

  • 宿泊数の増加などの複合的要因が考えられる。1方、9州・沖縄(-0.214%)・小都市B(-6.909%)では逆に支出が減少しており、観光需要の回復が限定的であるか、割安施設の利用が進んでいる可能性がある。


宿泊料を支出した世帯の割合の地域差と傾向

宿泊料を支出した世帯割合の全国平均は7.349%で、これは全体の1割未満であり、宿泊を伴う旅行が1部層に限られていることを示している。地域別にみると、東海(7.62%)・中都市(7.63%)・全国(7.51%)がやや高い1方、9州・沖縄(5.86%)・小都市B(6.3%)では6%前後と低めとなっている。

注目すべきは、割合が増えている地域でも宿泊料そのものは下がっている地域(例:9州・沖縄)や、宿泊料は増えても利用割合が減っている地域(例:近畿、小都市A)など、支出単価と利用者層が乖離している現象である。これは高価格帯宿泊施設の選択集中が進み、中・低価格層の旅行離れが起きていることを暗示している。


今後の宿泊料の推移予測と課題

期待される動き

  • インバウンド復活と観光地再活性:外国人観光客の流入が地域経済を後押しし、宿泊料も上昇が続く可能性がある。

  • プレミアム化の進展:消費者ニーズの多様化により、「高価格でも高満足度」な施設選びが増える。

  • 観光地の新展開:地方におけるグランピングや古民家ホテルなど、新しい宿泊スタイルの普及。

懸念される課題

  • 価格高騰と利用者減少の2極化:価格が上がる1方で、宿泊を伴う旅行が「ぜいたく品」化し、利用者層が限定される。

  • 施設の淘汰と地域格差拡大:小規模宿泊施設が維持困難となり、地方と都市の宿泊環境に格差が広がる。

  • 人手不足とサービス品質の維持問題:宿泊施設のサービス力が追いつかず、価格に見合わないと感じるケースが増える可能性。


まとめ

宿泊料の支出は、単なる旅行支出の1部ではなく、生活の豊かさや社会経済の健全性を反映する重要なバロメーターである。回復は進んでいるが、価格上昇と利用率の停滞という2重構造が表面化しつつある。今後は、価格に見合った体験の提供、層別ニーズへの対応、そして地域間格差の是正が重要課題となろう。

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました