宿泊・飲食業の時給動向|パート・男女格差と賃上げの展望

各産業

宿泊・飲食サービス業の時給は1550円で前年比+4.8%と大幅上昇。正社員や女性の時給改善が進む一方、パート層の待遇や男女格差は依然大きい。人手不足と最低賃金引き上げを背景に、今後も賃上げと労働環境改善の流れは続く見通し。

男女別の時給の推移

最近の時給データ

合計 一般労働者 男性計 女性計 パートタイム労働者
最新 2025年4月 2025年4月 2025年4月 2025年4月 2025年4月
最大期 2024年12月 2024年12月 2024年12月 2024年12月 2024年12月
最新値[円/時間] 1516 1869 1692 1374 1248
最大値[円/時間] 2015 2965 2426 1666 1309
前年同月比[%] +1.337 +0.9179 -0.2946 +3.542 +3.055

宿泊・飲食サービス業の時給の推移

時給の推移
最新のデータ

詳細なデータとグラフ

日本の全産業の労働者数の特徴

宿泊・飲食サービス業は、日本の観光立国政策やインバウンド需要を支える重要な産業ですが、慢性的な人手不足低賃金構造が長年の課題とされてきました。近年は物価上昇や働き方改革の影響もあり、時給に変化が見られます。本稿では最新データに基づき、構造的な課題や今後の展望を考察します。


宿泊・飲食サービス業の平均時給とその推移

  • 全体平均時給:1550円/時間(前年比 +4.801%)

これまで同業種は最低水準の時給が続いてきたものの、2025年1月には前年同月比で+4.8%の大幅上昇を記録。これは人手不足対策や最低賃金の引き上げ、インバウンド回復に伴う需給逼迫が要因です。


雇用形態別の時給と課題

1般労働者(正社員等)

  • 1938円(前年比 +6.718%)

賃金上昇率は全体の中でも最も高く、店舗責任者や調理職など高度な技能や責任を伴う業務に対する評価が進んでいると考えられます。ただし、労働時間の長さや休日の取りにくさなど、賃金以外の待遇課題は依然として大きいです。

パートタイム労働者

  • 1262円(前年比 +3.358%)

主にホールスタッフや清掃業務、配膳などを担う層であり、正社員との賃金格差は676円と依然として大きいです。上昇率も控えめで、人手不足が深刻な1方で待遇改善が追いついていない実態があります。


男女別の時給と賃金格差

男性労働者

  • 1739円(前年比 +4.57%)

男性は1般職や料理人、管理職に就く傾向があり、比較的高い時給水準にあります。上昇率も全体平均とほぼ同等で、技能系職種の需要回復が背景にあると考えられます。

女性労働者

  • 1393円(前年比 +5.771%)

女性の時給は男性より346円低いものの、上昇率は男性より高く、待遇改善の動きが見え始めている点が注目されます。ホールや調理補助、清掃といったパートタイム中心の職域に依存する構造が賃金格差を生んでいます。


業界特有の構造的問題

慢性的な人手不足

長年、低賃金・長時間労働のイメージが強く、若年層や主婦層の確保が難しい状況が続いています。外国人労働者に頼る傾向も強まっており、言語・文化対応の人材育成費用も増加中です。

不安定な労働環境

シフト制で収入が安定しにくく、繁閑差による労働時間のバラつきも大きな課題です。特にパート層では、生活費を支えるには不十分な給与水準となっており、離職率が高い傾向にあります。


今後の推移と期待

賃上げ圧力の継続

今後も最低賃金の引き上げやインフレ圧力が続く中で、パート・アルバイトの時給上昇は避けられないと見られます。サービス品質の維持にも直結するため、賃金改善は経営課題として優先されるでしょう。

女性労働力の再評価

女性が担う業務の重要性や多能工化の進展により、時給格差の是正や職域の広がりが進む可能性があります。働きやすい時間帯や福利厚生の整備が進めば、さらなる3加促進が期待されます。

デジタル活用による業務効率化

モバイルオーダーや自動配膳ロボット、予約システムの導入により、人件費の最適化と業務負担軽減が進めば、その分のリソースを賃金に振り向ける余地も生まれます。


まとめ

宿泊・飲食サービス業では、時給が過去に比べ大きく上昇し始めており、とくに正社員や女性労働者で顕著な改善傾向が見られます。しかしながら、依然としてパートタイム層の待遇や男女格差、労働の不安定さといった課題は残っています。今後は、人材定着のための構造改革と報酬体系の見直しが求められるでしょう。

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