家賃支払い世帯の都市別格差と今後の賃貸住宅動向分析

世帯・住宅



家計調査によると、全国で家賃・地代を支払う世帯は16.2%で、那覇市や札幌市では高く、松山市や横浜市では低い傾向がある。都市ごとの住宅供給・移住ニーズ・世代構成が影響しており、今後も都市部で賃貸需要は継続する見込み。地方政策や世代別の支援が課題となる。

家賃・地代を支払う世帯の家計調査結果

家賃・地代を支払う世帯の多い都市

2025年3月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 全国 那覇市 札幌市 宮崎市 仙台市 盛岡市 甲府市 高知市 徳島市 熊本市 松江市
最新値[%] 16.2 69.8 37.5 37 34.6 33.9 31.7 31.2 29.7 28.1 26.2
前年月同比[%] -2.41 +28.55 -26.18 +105.6 +47.86 +2.417 +437.3 -5.74 +14.23 +3.309 -10.27

家賃・地代を支払う世帯の少ない都市

2025年3月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 全国 松山市 横浜市 津市 相模原市 金沢市 福井市 新潟市 浜松市 鳥取市 青森市
最新値[%] 16.2 3.8 4.3 4.6 4.9 5.1 6.2 9.1 9.1 9.5 10.7
前年月同比[%] -2.41 -40.63 -67.18 -76.04 -76.33 -71.82 -33.33 -27.78 -45.18 -28.57 -5.31

 

これまでの家賃・地代を支払う世帯の推移

家賃・地代を支払う世帯の推移
最新のデータ

 

詳細なデータとグラフ

 

家賃・地代を支払う世帯の現状と今後

家計調査によると、2000年から2025年3月までのデータにおいて、住宅支出(勤労世帯)のうち家賃・地代を支払っている世帯の全国平均は16.2%である。この数値は、住宅の所有形態(持ち家か借家か)の全体的な傾向を示す指標であり、日本社会における不動産事情、就業構造、人口動態の変化を反映している。


都市別の大きな開き――高水準の那覇市と低水準の松山市

高い割合を示す那覇市(69.8%)は、他都市と比べても飛び抜けた数値であり、特に+28.55%という大幅な前年増加も注目される。これは、沖縄における移住者の増加や持ち家比率の低さ、賃貸住宅への依存度の高さが背景にあると考えられる。

一方、松山市(3.8%)や横浜市(4.3%)などの都市では、家賃・地代を支払う世帯の割合が極めて低く、前年からの減少幅も著しい。特に横浜や相模原といった首都圏の都市が低水準であるのは意外に映るが、これは持ち家率の高さや持ち家での親との同居など、都市圏特有の住環境の要素が影響していると見られる。


地方都市における変動――宮崎市や甲府市の急増

宮崎市(+105.6%)や甲府市(+437.3%)といった都市で急激に家賃・地代を支払う世帯が増加しているのは、地元企業の雇用形態変化や、地方でも単身世帯・若年層の増加により賃貸需要が急拡大している可能性を示している。

また、甲府市の増加率は異常値に近く、調査方法やサンプル数の変化による統計的な歪みの可能性も排除できないが、地域における賃貸住宅市場の変化が反映されていると見ることもできる。


家賃支出に影響する都市特性とライフスタイル

都市によって家賃・地代支出に大きな違いがある理由には、次のような要因がある。

  • 移住促進・観光都市(例:那覇・札幌):短期滞在者や転勤族が多く、賃貸需要が高い。

  • 地価の安定と空き家率の高さ(例:松山・津):持ち家が安く手に入りやすいため、家賃支出の必要がない。

  • 高齢化の進行と地域定着型生活:地方では高齢者の持ち家比率が高く、若年層の賃貸需要が限られている。

  • 都市開発と再開発(例:仙台・熊本):震災後の再開発や人口流入によって賃貸ニーズが増す。


世代別の住居傾向と家賃負担

若年層(20~40代)は転職や結婚などライフイベントに応じて柔軟に住居を変える傾向が強く、都市部での家賃支出率が高い。一方で、高齢者層(60代以上)は、持ち家に長期間住み続ける傾向が強いため、家賃支出をほとんど行っていない。これは、結果的に都市部での世代間の家賃負担格差を拡大させている。


今後の予測と住宅政策への示唆

日本全体としては、今後も都市部を中心に賃貸住宅需要は続くと予想される。ただし、以下の要因がその動向に影響を与える。

  • 出生率低下と単身世帯の増加:若年層の独立志向と世帯人数の縮小により、コンパクトな賃貸物件の需要が高まる。

  • 地方創生とテレワークの定着:地方移住が進めば、那覇のような“移住人気都市”における賃貸需要はさらに増加する。

  • 住宅取得の難易度上昇:物価高や建設コスト上昇により持ち家の取得が困難になり、賃貸住宅への依存が高まる。

政府や自治体はこれを受け、地方における適切な住宅供給の調整、若者向け賃貸支援、高齢者の住み替え支援など、より多角的な住宅政策が求められるだろう。

 

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