2008年から2025年3月までの家計調査に基づくと、二人以上世帯の理美容サービス支出は平均3805円となっており、都市ごとに大きなばらつきがあります。広島市やさいたま市などでは大幅増加が見られる一方、秋田市や青森市などでは大幅減少が続いています。都市の経済状況、世代構成、生活様式、理美容業界の価格改定や人手不足の影響が背景にあり、今後は都市部での支出増と地方での二極化が進行する可能性があります。
理美容サービスの家計調査結果
理美容サービスの多い都市
理美容サービスの少ない都市
これまでの理美容サービスの推移


詳細なデータとグラフ
理美容サービスの諸雑費現状と今後
家計調査における2008年から2025年3月までのデータをみると、2人以上世帯での理美容サービスへの支出額は、景気の影響や生活様式の変化を反映しながら徐々に変化しています。リーマンショック直後やコロナ禍では1時的に支出が減少したものの、直近では回復傾向にあり、2025年3月時点での全国平均は3805円となっています。これは2000年代後半と比べると緩やかな上昇傾向にあると評価できます。
都市ごとの支出の格差
理美容サービスへの支出は都市間で大きく異なります。広島市(6435円)、さいたま市(6348円)、宇都宮市(5808円)などでは高水準を記録しており、前年同期比でも大幅な増加が見られます。とくに広島市では約2倍(+96.97%)という突出した伸びを示しています。これは都市部での美容・理容の高価格化、複合サービス(ヘッドスパやシェービングなど)の浸透、店舗の高付加価値化が影響していると考えられます。
1方、那覇市(2354円)、秋田市(2509円)、青森市(2684円)などでは支出額が著しく低く、さらに減少傾向(秋田市-76.64%、青森市-33.07%)も顕著です。これには人口減少、高齢化、若年層の都市流出などが大きく影響しています。
世代別の利用傾向と影響
高齢世代にとって理美容サービスは生活の1部であり定期的な支出項目といえますが、高齢化の進む地域では安価な理容サービスの利用が主流で、単価は抑えられがちです。1方で、若年~中年層が多い都市部では、美容意識の高まりやサブスクリプション型美容サービスの登場により、支出額が増加傾向にあります。
また、共働き世帯や子育て世代では、育児と仕事の合間に効率的なサービスを選ぶ傾向があり、価格よりも利便性・時短性を重視する消費行動が見られます。
理美容業界の構造変化と価格改定
理美容業界では、慢性的な人手不足と最低賃金の上昇により、施術料金の引き上げが続いています。特に都市部では技術者確保のための待遇改善や設備投資が価格転嫁につながり、支出額の上昇を招いています。
地方では低価格競争が続いてきましたが、人口減少により顧客数が減少し、低価格の維持が困難となりつつあります。その結果、撤退や廃業が増え、供給自体が細るリスクも見え始めています。
今後の展望と地域別格差の行方
今後の理美容サービス支出は、以下のような2極化が進むと予測されます。
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都市部:インフレとサービスの高付加価値化により、支出は増加傾向を維持。特に働く女性や高所得層を中心とした需要の伸びが見込まれます。
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地方都市:人口減少と所得停滞により支出が減少、または停滞。必要最低限の利用に絞る動きが顕著化。
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オンライン予約・訪問型サービスの普及:効率的な利用スタイルが支出の最適化を促進。高齢者層に向けた訪問美容などの需要は拡大が見込まれます。
政策的支援の必要性
地域による理美容サービスの受けられやすさの差は、QOL(生活の質)にも影響を及ぼします。特に高齢者や障がい者にとって、定期的な理美容ケアは衛生や健康にも関わるため、行政の訪問美容サービス支援などが求められます。さらに、地域の美容人材育成への助成や、サロン経営の持続可能性確保への支援も必要です。
このように、理美容サービスの支出は、経済的要因と社会構造の変化を鋭敏に反映する家計項目の1つであり、今後も都市ごと・世代ごとに異なる動向を示すでしょう。政策や産業の支援体制によっては、地域間の格差を是正する可能性もあります。
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