家計調査にみる月謝支出の地域差と今後の動向:都市別・世代別に分析

教育・医療



2025年3月時点で、二人以上世帯における月謝類の平均支出は月2,599円。仙台市や堺市、横浜市など都市部を中心に高水準の支出が目立つ一方、青森市や札幌市などでは低水準にとどまる。支出額には教育熱、所得、地域文化、施設の充実度が強く影響しており、今後は物価上昇や少子化、オンライン教育の普及などによって構造的変化が進むと見られる。

月謝類の家計調査結果

月謝類の多い都市

2025年3月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 平均 仙台市 堺市 横浜市 さいたま市 熊本市 東京都区部 鹿児島市 津市 川崎市 松江市
最新値[円] 2599 5161 5120 4782 4471 4367 4258 4211 3883 3640 3493
前年月同比[%] -7.169 +165.2 +73.85 +10.26 +30.27 +62.34 +11.41 -19.07 +63.91 -34.63 +59.13

月謝類の少ない都市

2025年3月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 平均 青森市 札幌市 山口市 那覇市 長野市 高松市 福井市 和歌山市 大分市 甲府市
最新値[円] 2599 808 1097 1164 1188 1296 1316 1356 1488 1521 1662
前年月同比[%] -7.169 -25.19 +53.43 -42.83 -27.25 -34.18 -27.89 +30.76 -19.7 +5.919 -62.68

 

これまでの月謝類の推移

月謝類の推移
最新のデータ

 

詳細なデータとグラフ

 

月謝類の趣味現状と今後

「月謝類」は、学習塾、習い事、文化教室、音楽・スポーツスクールなど、子どもから大人までの“教養・技能取得”に関する継続的な受講費用を指します。家計調査においては「教養娯楽」費目に分類され、教育的な性格を帯びつつも、個人の嗜好性にも左右される複雑な支出項目です。


全国平均と上位・下位都市の実態

2025年3月時点の全国平均は月2,599円。この金額はコロナ禍前の水準を若干下回るか、あるいは回復しつつある状況にあると考えられます。

高水準都市

上位都市は以下の通り:

  • 仙台市:5,161円(+165.2%)

  • 堺市:5,120円(+73.85%)

  • 横浜市:4,782円(+10.26%)

これらの都市に共通する特徴は、都市圏としての人口集中、高所得層の存在、そして教育に対する関心の高さです。また、コロナ禍以降の反動需要や子育て支援政策の影響も無視できません。

低水準都市

下位都市は以下の通り:

  • 青森市:808円(-25.19%)

  • 札幌市:1,097円(+53.43%)

  • 山口市:1,164円(-42.83%)

地方中核都市や地方圏では、所得水準の低さや施設数の不足、少子高齢化の進行が影響し、月謝支出が低く抑えられていると見られます。


世代構成・家族形態による違い

月謝類の支出は主に次の層に支えられています:

  • 子育て世代(30〜50代):学習塾、スポーツ、音楽など子どもの教育投資が中心。

  • 定年後世代(60代以上):書道、英会話、体操教室など、趣味と健康増進目的。

2人以上世帯では、子どもの教育支出が前提となっているため、世帯に子どもがいるか否かが大きく左右します。また、共働き家庭では、保育代わりに“習い事”を活用するケースも見られます。


月謝支出のこれまでの変化とコロナ禍の影響

月謝類の支出は2008年から徐々に増加傾向を見せていましたが、2020年のコロナ禍を機に1時的に急減しました。教室の閉鎖、外出自粛、家庭収入の不安定化が原因です。しかし、2023年以降はオンライン教育や柔軟な教室運営の普及により、徐々に回復し、2025年には各都市で顕著な増加が見られるようになりました。


都市間格差の背景

月謝支出の都市間格差は、以下の複合要因に起因します:

  • 所得格差:可処分所得が高い都市ほど教育投資に積極的。

  • 文化的価値観:関東や関西の都市圏では「教育熱」が高く、早期教育への支出が根強い。

  • インフラ整備状況:学習塾や教室の数が多い都市ほど、競争が生まれ、魅力的なサービスが増える。

  • 行政の支援制度:自治体による補助金や子育て支援の内容も、支出行動に影響を与えている。


今後の予測と課題

月謝類支出は今後、大きな転換点を迎える可能性があります。

プラスの要因:

  • オンライン学習の定着:時間や場所に縛られず、通塾を前提としない新たな支出形態が拡大。

  • 教育志向の高まり:AI時代に備えたSTEAM教育、英語教育などのニーズが継続。

  • 地方創生との連動:文化的な習い事によるコミュニティ形成や高齢者向け学びの場が新たな需要に。

マイナスの要因:

  • 少子化:習い事をする子ども自体が減り、市場縮小が進む。

  • 物価高:月謝自体の値上がりにより、家計に占める割合が重くなり、削減対象になる可能性。

  • 都市間格差の固定化:習い事の“ある都市”と“ない都市”の2極化が進み、地方はさらに低水準に。


まとめ

月謝類の支出は、教育文化の現れであると同時に、地域の経済力や行政支援のバロメーターでもあります。2025年時点でのデータは、都市部と地方、若年層と高齢層、物理教室とオンライン教育といった多様な軸での変化を浮き彫りにしています。今後は「習い事」の意味そのものが進化し、多様な学びの形が生活に根づいていくことが期待されます。

 

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